今、台湾音楽が面白い!第2回:向井太一×THREE1989対談|台湾R&Bの魅力や現地アーティストとの交流語る

国を超えて広がりつつある台湾R&B

J・ショーン(写真提供:X Entertainment / 艾克斯娛樂)

台湾におけるインディ音楽の祭典「金音創作獎(Golden Indie Music Awards)」の2020年度において、ベストR&Bアルバム賞など3部門を受賞したJ・ショーン(J.Sheon)は授賞式でこう発言している。

「台湾でR&Bは特殊なジャンルだと思うんです。インディーズではメインストリームの音楽だと思われていて、メインストリームではインディーズの音楽だと思われている。この受賞をきっかけに、R&Bを好きな人たちが自分にチャンスがあることを知り、恐れずに好きなことをやっていける人が増えればいいなと思っています」(billboard JAPAN<イベントレポート>台湾インディーミュージックの祭典「第11回金音創作獎 Golden Indie Music Award」&「亞洲音樂大賞 Asia Rolling Music Festival」より)

9m88

J・ショーンが話すように、台湾の音楽界においてジャンルとしてのR&Bは、メインストリームとインディにまたがる形で1つの流れを生み出しつつある。ニューヨークに8年間住んだ経験を持つJ・ショーンやロサンゼルス生まれのØZI(オージー)のようにUSスタイルのR&Bを追求し、大きな成功を収めているアーティストもいれば、9m88や雷擎のようにオルタナティブな視点からネオソウル~現行R&Bにアプローチするシンガー / バンドもいる。ジョルジャ・スミスやジョーダン・ラカイをフェイバリットに挙げるYellow、ベッドルームポップの匂いも漂わせる鶴(The Crane / ザ・クレーン)、呂士軒(Trout Fresh / トラウト・フレッシュ)をフィーチャーした完全US仕様の「Keep Up」でデビューを飾ったばかりのジョセリン9.4.0(Jocelyn 9.4.0)など、今後日本でも注目を浴びそうなアーティストばかりだ。

言うまでもなく、「台湾」とひと言で言っても各アーティストのバックボーンは多様。向井太一とコラボレーションしたジュリア・ウーはオーストラリアで生まれ、バークリー音楽大学を卒業したのちに台湾で本格的な活動を始めているし、Shi Shiこと孫盛希(ソン・チェンシー)は韓国生まれの華僑、ØZIともコラボレーションするカレンシーシーは中華系アメリカ人だが、2人とも現在は台北を拠点にしている。ローファイヒップホップとボサノバを横断する?te(whyte / ホワイト)は中国語と英語のほか、フランス語やイタリア語も交えて都市の夜を歌う。

海をまたいだコラボレーションも多く(その最新曲が9m88とMitsu The Beatsの「Tell Me」)、R&Bにアプローチするアーティストのネットワークはもはやアジア全域に広がっているとも言えるだろう。そして、そうしたネットワークの中で台湾は中心地の1つになりつつあるのだ。

以下のプレイリストでは台湾R&Bをテーマに筆者が13曲を選曲し、そこで漏れたものをTaiwan Beats編集長のBRIENがセレクトした。ただし、こちらはあくまでも入り口。ここからさらに多くのアーティストに触れていただきたい。


2021年8月13日更新