ナタリー PowerPush - THEラブ人間

青春期を終え第二期へ メンバー証言で迫る新展開

1stフルアルバム「恋に似ている」のレコ発ツアーファイナル(2012年7月の東京・LIQUIDROOM ebisu公演)をもって“青春期(第一期)”の終焉を宣言したTHEラブ人間。彼らが“第二期”の始まりを告げるニューシングル「アンカーソング」を12月19日にリリースする。今回ナタリーは金田康平(歌手)、ツネ・モリサワ(Key)に取材を行い、第一期の終焉から「アンカーソング」に至る経緯、この先のバンドのビジョンなどをたっぷり訊いた。

さらに彼らは12月23日に、70組以上のバンドが参加する自主企画イベント「THEラブ人間決起集会サーキット型イベント『下北沢にて'12』」を開催する。今回で3回目を迎えるこのイベントのコンセプトについても2人に語ってもらった。

取材・文 / 森朋之 インタビュー撮影 / 大参久人

第二期は“たたずまい”を突き詰める

──1stアルバム「恋に似ている」のレコ発ツアーファイナルをもって、THEラブ人間・青春期が終了。バンドにとっては大きな区切りとなったわけですが、以前から「いつかこのバンドの青春期は終わるだろう」という予感はあったんですか?

ツネ・モリサワ(Key)と金田康平(歌手)。

金田康平(歌手) 俺は思ってなかったですけどね。青春期の終焉を自分の肌で感じたのは「恋に似ている」ツアーの長崎でのライブだったんですよ。そのときに自分の中で想像していた「こういうバンドで、こういう歌で、こういうライブがやりたい」という完成形が見えてしまったんですよね。その次のライブが高崎Club FLEEZだったんですけど、長崎の感覚が残っていたせいか、自分がしゃべっている言葉を台本のように感じてしまって。そのときに何かが終わった気がしたんです。それは恐らく初期衝動だったと思うんですけど。それを完全に終わらせたのが、LIQUIDROOMのライブですね。

──長崎でのライブが分岐点だったんですね。

ツネ・モリサワ(Key) 長崎のライブは印象が強いですね、確かに。ライブもそうですけど、1日がすごく長く感じて。

金田 うん。うまく説明できないんですけど、言葉というものを最大の武器にするバンドだったんですよね、THEラブ人間は。ライブが終わったときに、歌詞以外にも持って帰れる言葉があれば無敵だなっていう。

──金田さんのMCだったり、そこで発する言葉もバンドの大きな魅力ですからね。

金田 それがTHEラブ人間の様式美でもあったと思うんです。自分としては言葉がワンワン出てくるからしゃべってたんですけど、長崎のライブ以降はそれがちょっと変わってきて。なんて言うか「MCでしゃべってることを曲にしたい」と思うようになったんですよね。MCじゃなくて、歌で言えればいいというか……。その後、意識的にMCをやらなかったライブがあるんですけど、それがすごく気持ち良かったんですよ。5分のMCの代わりに1曲多くやれたし、「ちゃんと言えたな」っていう感覚もあって。しゃべるよりもスタジオで悩み苦しんで作った曲を歌うほうがいいんですよね、今は。前よりも“5人で演奏してる”という感じも強まってるし。

──音楽そのものに意識が向いてる?

金田 そうですね。要は言葉を武器にしないっていうことなんだけど、「じゃあ次はどうするか?」って言ったら、たたずまいだと思うんです。バンドにとってのたたずまいとは、曲と歌詞、演奏。できるだけ言葉で説明しないで、全て音楽に凝縮するっていうことですよね。それが「第二期」って言ってる理由でもあるんです。

ダンスミュージックをやりたいんですよ

──今回のシングル「アンカーソング」にはこれまでのライブ映像などを収めたDVD(「青春期終焉 GIG映像集」)も付いてますが、これもすごく意味がありますよね。THEラブ人間の第一期がどういうものであったかが、リスナーにもリアルにわかってもらえると思う。

金田 そうですね。(ツネに向かって)通して観た?

ツネ 観たよ。

金田 俺も3回くらい観た。

ツネ LIQUIDROOM、固かったよな。

金田 うん。なんでもないような顔をしてるんだけど、かなり緊張してたね。

ツネ そうそう(笑)。DVDを編集するときに今までの映像を全て観返したんですけど、今のライブとは全然違うなって思いました。さっきも金田が言ってたけど、THEラブ人間って初期衝動みたいなものでずっとやってきたし、「このままじゃいけない」っていうのは「恋に似ている」ツアーのときからなんとなく感じてて。今までやってきたことも大事なんだけど、今は「じゃあ、何をやったら気持ちいい?」だったり「何をやったら伝わる?」ということを模索して、違うカタチを求めてるんじゃないかな、と。

──なるほど。金田さんはメンバーに対しても、「THEラブ人間、次はこうなります」みたいな話をするんですか?

金田康平(歌手)

金田 はい。LIQUIDROOMの次のライブが新宿red clothだったんですけど、そのときにダンスミュージックの話をしたよな?

ツネ うん。

金田 ダンスミュージックをやりたいんですよ。それは4つ打ちとかエレクトロってことではなくて、“いつ止まるかわからない、でも、今は確実に動いている心臓の音”なんですけどね。実際にお客さんが体を動かしても動かさなくてもいいんだけど、メンバー5人が共通して持っている楽器が心臓の音で、それを元にしたダンスミュージックをやりたいっていう。

──すごいですね、その話。いきなりめちゃくちゃ本質的な話からスタートするんですねえ。

ツネ ハハハハハ!(笑)

金田 (笑)でも、ホントにそうですね。いつかは本質がわかるんだから、最初に話しておいたほうがいいと思うし。さっき言ったみたいに、オーディエンスに対して言葉による意味付けをしたくないんですよ。でもこの5人に関しては、“5人が同じ人間”という感じでやらないとダメだと思うので。だからこそ説明もするし、ケンカもするんですけどね(笑)。

ニューシングル「アンカーソング」 / [CD+DVD] / 2012年12月19日発売 / 1890円 / SPEEDSTAR RECORDS VIZL-513
ニューシングル「アンカーソング」
CD収録曲
  1. アンカーソング
  2. 黒いドロドロ
DVD収録内容
  • 青春期終焉GIG映像集【恋に似ていた】
THEラブ人間(らぶにんげん)

金田康平(歌手)、谷崎航大(Violin)、おかもとえみ(B)、服部ケンジ(Dr)、ツネ・モリサワ(Key)によるロックバンド。2009年1月、金田を中心に結成され、同年4月に自主制作音源「恋街のすたるじい」を発売。2010年8月には、都市型フェスティバル「SUMMER SONIC」への出演権を賭けたオーディション企画「出れんの!?サマソニ!?」を勝ち抜き、「SUMMER SONIC 2010」幕張公演に出演を果たした。また同年9月にツアーファイナルとして下北沢のライブハウス3会場を貸し切り「THEラブ人間決起集会『下北沢にて』」を実施し、成功を収める。2011年5月にインディーズ1stシングル「砂男・東京」をリリース。さらに7月15日に東京・渋谷CLUB QUATTROで初のワンマンライブを開催し、650人の動員を記録した。8月にはビクターエンタテインメントからミニアルバム「これはもう青春じゃないか」でメジャーデビュー。翌2012年5月にメジャー1stアルバム「恋に似ている」、12月にDVD付きシングル「アンカーソング」をリリースする。12月23日に3度目となる自主企画イベント「下北沢にて'12」を、下北沢のライブハウス9カ所を舞台に開催。