音楽ナタリー Power Push - lovefilm
Instagramから始まった青春バンド
この4人から生まれるケミストリーに興味があった
──高橋昌志さんが働いているライブハウスに石毛さんはよく足を運んでましたよね。一緒にいるところもよく見かけましたが、まさか一緒にバンドを組むとは思ってもみませんでした。
石毛 彼がTeen RunningsやThe Patでドラムを叩いているのを観たことがあったから、勢いで1回スタジオに入ってみようって誘ってみたの。で、俺がギターボーカル、昌志がドラム、っていうことは残ってるのはベースだよねって、それでノブがベースを弾くことになって(笑)。
──ノブさんはthe telephonesを始める前はベーシストだったんですよね。とは言えかなりブランクがあったんじゃないかと思うんですが……。
石毛 うん。でもシンセよりベースのほうがとてもうまかったんだよね(笑)。
──10年も鍵盤を弾いていたのに(笑)。
石毛 そこがノブの愛しいところね。で、3人でスタジオで音を鳴らした感触は一言で言うとフレッシュ。これはいいぞと思いました。
──今回の人選って、そういうメンバーとの関係性みたいなところを重視してのものなんですか?
石毛 音楽でオーバーグラウンドのシーンまで到達した人間、ライブハウスの店員、そして女優って単純に振り幅が広くていいなと思ったんですよね。そういう関係の4人が集まって、どういうケミストリーが生まれるのかということに、俺はすごく興味があった。最初はみんな考え方の違いもいろいろあったから、ディスカッションもたくさんありましたけどね。今はまとまってきたかなと思います。
好きな音楽をやれて最高にラッキー
──やりたかった音楽のジャンルはもとから決まってたんですか?
石毛 そうですね。90'sリバイバル的なもの……いわゆるオルタナティブ全盛期のものを、2016年っぽくやりたかった。the telephonesでも海外のムーブメントを日本で解釈したものをやっていたし、lovefilmもその感覚に近いというか……。海外で90'sリバイバルが5年くらい前から流行り始めてきて、日本ではそういうバンドがあまりいなかったからやってみようと思って。で、このメンバーだったら俺がやりたいことを表現することができると思ったの。
──それはなぜ?
石毛 メンバーみんながそういう音楽を好きだから。それぞれみんなちょっとずつ違うけど、共通するところにlovefilmの音楽があると思っていて。あと自分の中で、“バンドでやるダンスミュージック”は一度やめようと決めていたんですよ。これから先、バンドシーンではこういう生々しいバンドサウンドやものすごくエレクトロニックなものが流行ると感じていて、lovefilmはバンドサウンドのほうの先駆けになりたいっていうのも裏テーマとしてあって。
──ちなみに江夏さんがもともと聴いていたのはどんな音楽だったんですか?
江夏 スーパーカー、くるり、ゆらゆら帝国、andymoriなんかが好きですね。最近だとミツメもすごく好きで。
──江夏さん、今21歳ですよね? ゆら帝とかスーパーカーとか、世代的に言うともう少し上の人が聴いている音楽なんじゃないかなと思うんですが。
江夏 そうですね。いろいろ聴いてみたんですけど、スーパーカーとかくるりが出てきた1990年代頃の音楽がすごく好きなんです。今lovefilmでやってるような海外インディーの音楽を聴いては育ってないんですけど……。
石毛 でもスーパーカーもくるりも当時の海外インディー含む洋楽全般から影響を受けてるから、間接的にそういうものが好きっていうことなんだと思うよ。
江夏 だから最初に石毛さんがくれたデモを聴いて、グッと来たのかも。もしもらったデモが「え、これ、自分が歌うの……?」って感じだったらたぶんバンドには入ってなかったと思うし、心から「こういう音楽好きだからやりたい!」と思えたのは最高にラッキーだったと思います。
──始動するまでに、いろんな偶然が重なってるように思います。石毛さんと江夏さんはひと回り近く年齢も違うし、ミュージシャンと女優という関係で一緒にバンドを組むことはなかなかないですよね。Instagramがなかったら出会えなかったわけですし。本当にラッキーという言葉が似合うバンドだなと思います。
石毛 うん。だからこの4人が集まって、一緒にバンドをやれてるのは奇跡的なことだと思う。年齢がひと回り近く違うのは心配な要素だったんですけど、バンドの中でしっしが一番精神年齢が高いから大丈夫でした(笑)。俺らは俺らで子供っぽいところがあるし、バランスがちょうどよくて。
江夏 本当に付き合いやすいメンバーでよかったなと思っています。
石毛 結成してから半年でここまで居心地いいのはなかなかないかもね。
- 1stアルバム「lovefilm」/ 2016年8月3日発売 / DAIZAWA RECORDS / UK.PROJECT
- 「lovefilm」
- 初回生産限定特別価格 [CD] / 2160円 / UKDZ-0175
- 通常価格 [CD] / 2808円 / UKDZ-0176
収録曲
- Alien
- Don't Cry
- Kiss
- Vomit
- BIG LOVE
- Holy Wonder
- Honey Bee
- Goodbye,Goodnight
- Our Dawn
- Hours
lovefilm 1st tour "livefilm"
- 2016年11月18日(金)愛知県 ell. SIZE
- 2016年11月19日(土)大阪府 Shangri-La
- 2016年11月23日(水・祝)東京都 UNIT
lovefilm(ラブフィルム)
現在活動休止中のthe telephonesの石毛輝(Vo, G, Programming)と岡本伸明(B, Syn)、モデルで女優の江夏詩織(Vo, G, Syn)、The PatやPINK POLITICSにも所属する高橋昌志(Dr)による4人組バンド。2016年3月に東京・新代田FEVERでお披露目ライブを行い、バンド名を発表した。8月に1stアルバム「lovefilm」をリリース。11月にワンマンツアー「livefilm」を東名阪で開催する。Dinosaur Jr.やPavementなど、1990年代USインディーのオルタナティブバンドを彷彿させるサウンドが特徴の1つで、メンバーは石毛と岡本の友人である松井征心によるブランドSISEのアイテムをコスチュームとしている。