青春に憧れてる人に響いたら

──lovefilmはこのアルバムを経て、次はどうなっていくんでしょうか？

石毛　個人的には今まで自分がやって来なかったことをやりたいので、それこそアパレルと絡めた何かをやってみたいですね。ランウェイで生演奏したりとか。そういうのもやりつつ、バンドだからバンドらしい活動をしたいとも思いつつ。音楽的には今回は初期衝動を詰め込んだアルバム「lovefilm」が完成したけど、次の作品ですごく変わるかもしれない。フロントの2人の根っこが似てるから、この4人で作ればジャンルはどんなものになろうが、歌は絶対今回の温度感になるはずという自信が付いた。今も新しい曲を作っているけど、もう1stアルバムの収録曲とは全然違うものができてるし。だから自由にやりつつ、バンドを介して伝えたいことを伝えていけたらいいなと思っています。

──中でも一番大事にしていきたいことは？

石毛　衝動ですね。今、俺は純真無垢に戻ることはできないけど、限りなく近い状態に戻ることができているので。曲を作るときも理論とかあんまり考えないようにして、なるべくまっさらな曲を作ろうとしています。作ろうと思えばどんな曲でも作れるけど、心の奥の自分と対話して、そこから引っ張り出してきた気持ちを曲にすることを大事にしてます。初めて自分がロックを聴いたときのあの衝動はやっぱり忘れられない。ロックスターのあの姿を真似したくなって、部屋でエアギターを弾いたことを今でも覚えていて、そういう気持ちをもう1回取り戻したいと思ったんですよ。自分が今まで音楽をやってきた中で、忘れてしまった大事なものもあったような気がするから。これから先は自分で自分を感動させる音楽を作っていきたいですね。

──江夏さんは女優やモデルとバンドの両立が大変ですね。

江夏　今は音楽のほうが割合が多いですけど、どちらもがんばっていきたいです。女優とバンドの活動があることで、両方の活動のプラスになればいいなと思っています。

石毛　バンド活動をやることで、女優のしっしの演技とか絶対変わった部分があると思うんだよね。音楽をやることで向き合えた自分がいるはずだから。で、逆に言うと女優業で得た経験をバンドに持ち帰ってきてくれたら。その繰り返し。

江夏　それができたらいいなと思ってます。無理だろって言われても、意地でもどっちもやってやるっていう気持ちです。

石毛　たぶん、人って大人になるたびに子供だった頃の心に憧れてると思うんだよね。汚れを知らなかった頃というか。それをこのバンドから感じ取ってもらえたらいいなと思ってます。

──話を聞いてるとlovefilmは「青春」という言葉がしっくり来るような気がします。

江夏　私は中学生のときからずっと仕事をしていて文化祭や体育祭にも出てないし、修学旅行も行ってない。高校は途中で通信制に変わっちゃって……。本当に青春っていうものを経験してなくて。だから青春というものへの憧れが人一倍強いと思うんです。今になっても諦めきれてなかったんですけど、やっとバンドというものと出会って、ちょっとずつそれを叶えることができて。今が21年間の中で一番青春してると思います。

──その感じはすごく伝わってきます。

江夏　なんかバンドで音を鳴らしてるときよりも、lovefilmの曲を聴いてるときのほうが青春を感じるんです。自分が中に入っちゃうと気付けなくて。自分たちの音楽なのに聴いていて泣けてくるって思っちゃいますね。なんか懐かしい感じもするし。

石毛　憧れていた青春を大人になってから追いかけてるんじゃないかな。しっしはメンバーであり、ファンでいてくれてるのかも。lovefilmの音楽がたくさんの人にはもちろん、しっしのような青春に憧れている人にも響いたらいいなと思います。