音楽ナタリー Power Push - lovefilm
Instagramから始まった青春バンド
3月に「現在活動休止中のthe telephonesの石毛輝(Vo, G, Programming)と岡本伸明(B, Syn)が新バンド・lovefilmを結成」(参照:the telephones石毛&ノブ新バンドはlovefilm、メトロックにも出演)というニュースが流れてから早5カ月。バンド名を冠した1stフルアルバム「lovefilm」が完成した。
石毛と岡本がモデルで女優の江夏詩織(Vo, G, Syn)、The PatやPINK POLITICSにも所属する高橋昌志(Dr)を迎えて結成したlovefilmは、3月に東京・新代田FEVERで開催したお披露目ライブ以降、「TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2016」や「VIVA LA ROCK 2016」といったロックフェスに出演。1990年代USインディーのオルタナティブバンドを彷彿させるローファイでポップなサウンドをフレッシュな面々で鳴らしてきた。音楽ナタリーでは彼らの1stアルバムのリリースを記念して石毛と江夏によるインタビューを実施。石毛がなぜlovefilmを結成したのか、なぜこのメンバーが集まったのかなどを聞いた。
取材・文 / 清本千尋 撮影 / 上山陽介
ノブより弾ける
──石毛さんとノブ(岡本)さんはthe telephonesが活動休止してからもよく一緒にいる写真をSNSに載せていたので、新しいバンドを一緒に組むことは予想できたんです。でも女優を連れてくるのは予想の斜め上でした。
石毛輝(Vo, G, Programming) 予想外のことをやりたかったんだよね。
──なぜ今回女性ボーカルのバンドを?
石毛 女の子ボーカルの曲を作りたいっていうのが、ソロの次作のアイデアとしてあったんです。でも俺にとってソロはバンドありきのものなので、the telephonesが活動休止してしまった時点でソロの次作は先延ばしになって。だったらそのアイデアを新しいバンドに持って行こうと思ったんです。
──そうだったんですね。石毛さんは江夏(詩織)さんをInstagramで見つけたと聞いたんですが、バンドメンバーをInstagramで探すってすごい話だなと思って(笑)。ボーカルを探すならニコニコ動画で「歌ってみた」動画を上げている人を探すほうがまだ現実的というか。
石毛 うん。でも、歌はスタジオで合わせればわかるでしょ。それより雰囲気やセンスを重要視したかったんですよ。俺はいろいろあるSNSの中で、Instagramが一番感性がわかるSNSだと思っていて。で、しっし(江夏)のInstagramをたまたま見つけたときに、この感性を持っている人だったら俺と合いそうだなって。
──それは音楽的なもの?
石毛 音楽はもちろんなんだけど、それ以外でも俺と考え方とかが合いそうだなって直感的に思ったんです。それで共通の知人を通じて声をかけて。
──決め手になったポストはあったんですか?
石毛 とにかく載ってる写真がすごくよかった。あと、ピアノでドビュッシーを弾いてる動画があったんです。それを観たときにちゃんとピアノを習っている人の運指だったから、これは音楽的素養があるなとさらに期待が高まりました。ノブより弾けるぞって(笑)。
ずっとバンドをやりたかった
──江夏さんはthe telephonesの存在を知ってましたか?
江夏詩織(Vo, G, Syn) もちろん! 私は日本のバンドの音楽が好きで、なんならthe telephonesの活動休止前ラストライブも行く予定だったんです。結局仕事で行けなかったんですけどね……。石毛さんが共通の知り合いを見つけて、その共通の知り合いから私に「石毛さんからお仕事のお話があるって言われてるから石毛さんの連絡先教えるね」って連絡が来たときは唖然としました。
──モデルや女優として活動していた江夏さんからしたら、ミュージックビデオやCDジャケットに起用したいとかそういう話だと思いそうです。
江夏 まさにそうでした! だからバンドへの誘いだなんて1mmも思ってなくて。ああ、私、石毛さんのやってる音楽のMVに出るんだなと思って、the telephonesのMVを調べて「これに? 私が?」と(笑)。で、3日後にこちらから連絡をしたら「女の子ボーカルの新しいプロジェクトを始めるけど興味ありますか?」って返信が来て。「これはバンドの誘いっていうことなのかな? なぜ石毛さんが私に?」という疑問はありつつ、すごくうれしかったです。
石毛 3日も寝かせてさ。早く連絡しろよなあ(笑)。
江夏 うふふ(笑)。そんなやりとりをしていて、早いうちに会おうっていう話になったので、その日の夜に会いました。バンドが好きだっていうのはInstagramでずっとアピールしていたし、やりたい気持ちも実はあったんです。だから会うところまでトントン拍子で進んで。
──早い(笑)。バンドを好きな女の子はたくさんいると思うんですけど、やる側になる女の子はそんなにいないと思うんですよ。そんな中、すでにプロのミュージシャンから声がかかるなんて江夏さんにとってはすごくラッキーですよね。
江夏 実はTwitterで1年に1回くらいの周期で、夜中にこっそり「バンドをやりたい」ってつぶやいてたんです。
石毛 それを俺は見てなかったからさ。だからその気持ちがあったと知って、この出会いに必然性を感じたんだよね。それに初めてしゃべった感触がすごくよかったんだよ。技術は後回しにしても、フィーリングでこれは決まりだなって思った。音楽の話だけじゃなくて、カルチャーの話でもすごく共感するところが多くて。
──石毛さんが求めている女の子像はあったんですか?
石毛 これっていうのは特になくて。いい意味でなんでもよかったんですよ。バンドメンバー全員でSISEの服を着るというのは決めていたので、SISEが似合う女の子がいいなというのはありましたね。あとは凛とした佇まいだったらいいなぐらい。だから理想を押し付けるというよりも、その人が持ってるものをどう俺が料理するのかとか、そんなことを考えていましたね。
──人ありきだったんですね。
石毛 そうですね。それがデカい。
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- 1stアルバム「lovefilm」/ 2016年8月3日発売 / DAIZAWA RECORDS / UK.PROJECT
- 「lovefilm」
- 初回生産限定特別価格 [CD] / 2160円 / UKDZ-0175
- 通常価格 [CD] / 2808円 / UKDZ-0176
収録曲
- Alien
- Don't Cry
- Kiss
- Vomit
- BIG LOVE
- Holy Wonder
- Honey Bee
- Goodbye,Goodnight
- Our Dawn
- Hours
lovefilm 1st tour "livefilm"
- 2016年11月18日(金)愛知県 ell. SIZE
- 2016年11月19日(土)大阪府 Shangri-La
- 2016年11月23日(水・祝)東京都 UNIT
lovefilm(ラブフィルム)
現在活動休止中のthe telephonesの石毛輝(Vo, G, Programming)と岡本伸明(B, Syn)、モデルで女優の江夏詩織(Vo, G, Syn)、The PatやPINK POLITICSにも所属する高橋昌志(Dr)による4人組バンド。2016年3月に東京・新代田FEVERでお披露目ライブを行い、バンド名を発表した。8月に1stアルバム「lovefilm」をリリース。11月にワンマンツアー「livefilm」を東名阪で開催する。Dinosaur Jr.やPavementなど、1990年代USインディーのオルタナティブバンドを彷彿させるサウンドが特徴の1つで、メンバーは石毛と岡本の友人である松井征心によるブランドSISEのアイテムをコスチュームとしている。