ナタリー PowerPush - LiSA”

感動も、悔しさも、発見もすべてを飲み込む武道館ライブ

みんなのあの日に点数は付けられない

──そういう状態だったからブログには「悔しかった」と書いていたし、あと武道館が終わったその日から最新シングルの「Rising Hope」の作詞を始めたんですよね?

 LiSA

そうです(笑)。とにかく次のステップを踏み出さなきゃ、動き出さなきゃって。

──でも今回、その武道館公演の模様を収めたライブBlu-ray / DVDをリリースすることにした。しかも当日のライブと映像を観比べる限り、ボーカルをオーバーダビングしたりはしていない。これってカッコいいなと思う一方で、けっこう勇気のいることだよなとも思ったんです。

もちろん悔しい思いもたくさん残った“デート”だったんだけど、でもあの日をなかったことにはしたくなかったんです。確かに私は悔しい思いをしたかもしれないけど、みんなのあの日を「悔しかった」の一言で否定するのはやっぱり違うので。

──それこそ“デート”、相手のあることですからね。デートの相手はすごく楽しかったかもしれないわけだし、実際楽しかったし。

だからみんなのあの日に私が勝手に点数を付けることはどうしてもできなかった。私の体調はすごく悪かったんだけど、それでも私にとってもみんなにとっても特別な1日であるのは間違いなかったわけですから。

──あのライブって本当に“特別”というか、ライブ当日もそうだし、DVDを観ていてもそうだったんですけど「“いいライブ”ってなんだろう?」ってすごく不思議な気持ちにさせられたんですよ。LiSAさんは悔しかったかもしれないけど、大失敗だったんですか?って聞かれればそうではない。むしろ感動的なライブだったから。

ありがとうございます。

武道館で至ったセーラームーン的心境

──「その答えは自分で出せよ」って話なのかもしれないんだけど、LiSAさんにとっては悔しいこともあったライブが、観客にはなぜ感動的なものでありえたんだと思います?

うーん……。あとからあのライブ映像を客観的に観ていたら、あの日の武道館には人間と人間が作るドラマがあったなあっていう気がしていて。

 LiSA

──「人間と人間が作るドラマ」?

なんて言えばいいんだろう。私はセーラームーンなんだなって改めて気付かされたというか。

──最近別のインタビューでも言ってましたよね。自分は自分の力だけではなく、マーキュリーやマーズといった仲間たちと力を合わせて1つのことを成し遂げるセーラームーンタイプだって。

うん。セーラームーンって1人だとすごく弱い存在だと思うんです。でも仲間がいるからがんばれる。例えば(アニメ「美少女戦士セーラームーン」のヒロイン・月野)うさぎちゃんは最終回、仲間たちがみんな死んじゃったから「私がこの地球を守らなくちゃ」って最後の敵に向かっていくんですけど、そうすると死んだはずの仲間たちの幻影みたいなものが「私たちもいるよ」って手を差し伸べてくれるんです。私、そのシーンを観るたび、ワーワー泣いちゃうんですよ(笑)。「私、誰かが誰かを思って力を貸したりとか、誰かのために一生懸命になったりとか、大勢の人の思いが重なったりっていうことにすごく心を動かされるんだなあ」って。

──武道館では、そのセーラームーンの心境を実感できたということ?

そうですね。本番、特に前半は「どうしようどうしよう」って不安な気持ちしかなかった上に、3曲目が終わったあたりでみんなに体調が悪いのがバレちゃったんです。MCを始めたら、みんな「あっ、コイツやっちまった!」って顔をしていて(笑)。それを見たとき、すごく申し訳なくなったし、マイクを置いて「ごめんなさい!」って逃げ出したかったんですけど、みんな「あっ、やっちまった」っていう顔をしたあと、(両手を胸の前で合わせて)「がんばれ」ってやってくれていて。あと「いつかの手紙」をみんなと一緒に大合唱しているとき、泣いている子たちがいてくれたり、武道館のあとにもらった手紙やメールには「あの日声が出ないLiSAを観ていて私もすごい悔しかったけど、一番悔しかったのはLiSAだよね」ってたくさん書いてあったりもして……。

──武道館明けのLiSAさんのブログの記事に寄せられたコメントもほぼほぼそういうものでしたよね。

「いつかの手紙」のときのみんなの涙って、たぶんそういう思いもあっての涙なんだと思うし、3曲目が終わったとき、みんなが手を合わせて心配してくれた理由もきっとそうで。正直な話、私「やっちまった」っていうみんなの顔を見た瞬間「この人たち、みんな帰っちゃうんじゃないか」って気がしてましたから(笑)。

──ところがみんなLiSAさんのことを心配したし、エールも寄せていた、と。

みんな一緒に戦ってくれた。それってすごいことだなって思うんです。直接言葉を交わしたわけでもないのに、私の気持ちを理解してくれただけじゃなくて、寄り添ってくれたわけですから。だから「いいライブだ」って思ってもらえたのかなっていう気がします。あと、それがライブ映像をきちんとパッケージしておきたかった理由でもあるんです。ヘナチョコな部分もいっぱいあった私をみんなが支えてくれたこと、みんなが一緒にライブを作り上げてくれたことをきちんと形にしておきたかった。それがみんなへの感謝の言葉の代わりになると思ったし、私にとっても「あのとき、あのライブをやってよかったな」って思えるものになると思いましたから。その映像を観ることでまた未来に進んでいけるんじゃないかって。

ライブBlu-ray Disc / DVD「LiVE is Smile Always ~今日もいい日だっ~ in 日本武道館」/ 2014年6月18日発売 / アニプレックス
「LiVE is Smile Always ~今日もいい日だっ~ in 日本武道館」
Blu-ray Disc / 6264円 / ANSX-10001
DVD / 5184円 / ANSB-10001
収録内容
  1. コズミックジェットコースター
  2. traumerei
  3. Canvas boy × Palette girl
  4. EGOiSTiC SHOOTER
  5. DOCTOR
  6. oath sign
  7. いつかの手紙
  8. 一番の宝物
  9. Little Braver
  10. I'm a Rock star
  11. say my nameの片想い
  12. 妄想コントローラー
  13. ROCK-mode
  14. crossing field
  15. 逆光オーケストラ
  16. WiLD CANDY
  17. ジェットロケット
  18. シロイトイキ
  19. Believe in myself
  20. best day, best way
  21. モモコと魔法のラーメン
LiSA(リサ)

6月24日生まれ、岐阜県出身。学生時代よりバンド活動を始め、2008年に活動の拠点を東京に移す。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビューを果たす。以降、アニメ「Fate/Zero」のオープニングテーマ「oath sign」や、アニメ「ソードアート・オンライン」のオープニング曲「crossing field」などスマッシュヒットを連発。また2013年にはシングル「best day, best way」がオリコン週間シングルランキング6位を記録し、アニソンシーン内外で高い人気を誇る存在に。そして2014年1月3日には初の東京・日本武道館公演を開催し、同5月リリースのシングル「Rising Hope」はオリコン週間シングルランキングで4位をマーク。そして6月、武道館公演の模様を収めたライブBlu-ray / DVD「LiVE is Smile Always~今日もいい日だっ~in日本武道館」を発表した。