LEOが思う「メガロボクス」は“「ロッキー4」ミーツ「AKIRA」”
──LEOさんは「メガロボクス」をご覧になっていかがでしたか?
今井 すごく面白かったです。アニメを観るのは20年ぶりぐらいだったんですけど、子供のときに観た感じを思い出して、ノスタルジックな気分で観れました。こういう例えはもう散々聞いているかもしれないですけど、“「ロッキー4」ミーツ「AKIRA」”みたいな感じがして。
森山 昔のアニメの雰囲気を狙って制作してるので、そう言ってもらえるとうれしいですね。今放送してるアニメではありますけど、昔のアニメの再放送を観るような雰囲気で楽しんでもらえたらと思ってたんです。
今井 取り上げられるテーマにもすごく共感できますね。「生身で勝負する」とはどういうことかが描かれてて、自分も「ジョーみたいになりてえ」と少年心がくすぐられますから(笑)。あと「サソリとカエルの話」(※第10話で引用される有名な寓話)が出てくるのがすごくよくて。私が学生のときに初めてその話を聞いたときは「サソリとクマ」の組み合わせだったんですけど、今でもよく思い起こすんですよ。このお話は自然体でいることの無念さと必然性みたいなものを考えさせられますけど、それを具体的に挙げて題材にした作品を今まで観たことがなかったから、そこもすごく共感できました。
──個人的にLEOさんの作品と「メガロボクス」は、時代の流行とは関係ないところで“自分自身の作りたいものを作る”という美学を貫いてるところが共通してるんじゃないかと思いまして。
今井 確かに今回のアルバムに関しては見事に“今の時代”みたいなものは意識しなかったですね(笑)。
──「メガロボクス」も今のアニメの主流とは異なる、いわゆる手描き時代の作画に通じる作風ですし。
森山 やっぱり僕は昔観ていたビデオの映像とか古いアニメーションが好きなので。純粋に好きなものを作りたいだけではあるんですけどね。
今井 それはすごく共感できます。自分の趣味嗜好に従っただけという感じですよね。
目指したのは馬力アップ
──今回のニューアルバム「VLP」はどんなコンセプトのもと作られたのですか?
今井 前作の「Made From Nothing」(2013年リリース)は曲の7、8割をバンドで作りつつ打ち込みもあったんですけど、今回は電子音を削ぎ落として、より馬力がアップしたもの、今のバンドの一体感やライブの空気感と演奏を活かした表現をしたいという目標はありましたね。コンセプト的には、私が1993年から96年ぐらいまでにインスパイアされた音楽の要素をもっと取り入れるという感じです。
──そのインスパイアされた音楽というのは?
今井 主にアメリカのハードロックやメタルと、主にヨーロッパのデスメタル……きっかけはシアトル発信のSoundgardenとかAlice in Chains、Pearl Jamから始まってます。Temple of the Dogも大きかったですね。
森山 自分も聴いてましたね。そのへんに聴いていた音楽はご自身の中で大きいんですか?
今井 大きいですね。“中二病”って言うんですか?
森山 それは中二病ではないと思います(笑)。
今井 中二病の定義がよくわからないんですけど、中二の頃にそういう音楽を聴いてたのは確かですね。でも、そういう人はけっこう多いんじゃないですかね。1回味覚ができあがったあとにパキーンと出会った初期衝動みたいな音楽が一番心に残ると言うか。
森山 僕も中学、高校生ぐらいに聴いていた曲が、LEOさんと似てるんですよ。僕はそこにプラスしてヒップホップとかも聴いてて。
今井 そのときからヒップホップも好きだったんですね。
森山 そういうのもあってかはわからないですけど、今回のアルバムではメタルの要素がすごく好きだし、1曲目の「Wino」は映画のオープニングみたいな印象を受けたんですよ。僕は初めて聴いたときに「ストリート・オブ・ファイヤー」(1984年公開)という昔の映画を思い出したんですよ。ウォルター・ヒル監督の作品で、少し不思議な世界観の映画なんですけど。
今井 (スマホで調べながら)「レポマン」と同じ年なんですね。ウィレム・デフォーが出演してる。これは観たことないですね。
森山 そのサウンドトラックがすごくカッコよくて、ちょうどLEOさんのニューアルバムみたいな雰囲気なんですよね。聴きながらそれがフワッと頭に浮かんで。
今井 それも「レポマン」のサントラみたいにいろんなアーティストが参加してるんですか?
森山 そうです。ライ・クーダーとか、けっこうメジャーな人ばかりですよ。ちょっとロカビリー的なところも入ってきたりして。
今井 なるほど。「VLP」にそういうところがあるのは、私が幼い頃にカントリーをいっぱい聴いていたからなんです。父親がそういう音楽のカセットテープを持ってたんですね。アコースティックで弾き語りを始めたときに、「Lost Highway」(ハンク・ウィリアムズの歌唱で有名なカントリーソング。オリジナルはレオン・ペインの1948年作)をカバーするようになったんですよ。そこから、「そういえば昔はこんな音楽をたくさん聴いてたな」と思って、最近はそういう部分をどんどん出していこうと思ってます。
──先ほどの「メガロボクス」の話に紐付けると、今回のアルバムには荒野をイメージさせるような曲が多くありますね。
今井 そうですね。
森山 ちょうど「メガロボクス」を作ってる最中にもそういう映画をよく観てたんですよ。それもあったからか、音楽性のイメージが近く感じられて、自分のカッコいいと思うものが詰まっている感覚がありました。
いろんな音楽を呼び起こさせる「VLP」
──森山監督が今作の中で聴いて刺激を受けた曲は?
森山 やっぱり「Wino」はここからアルバムの世界観が広がるオープニングの曲なので、街の風景とか映像的に思い浮かぶものが多くて。「Car Alarm」もちょっとノスタルジックな感じがして好きだなあ。
今井 この曲はおまけのボーナストラックみたいなつもりで作ったんですよ。でもこういうポップなメロディのものが1つぐらいアルバムにあってもいいんじゃないかと思って。
──この曲はフォーキーで風通しのいい感じもあって、個人的にはニール・ヤングを思い出しました。
今井 そういう部分もちょっとあるかもしれませんね。
森山 アルバムを聴いているといろいろな音楽が思い浮かぶんですよね。トラックごとに曲調が全然違いますし。思い入れということであればやっぱり「Bite」が一番強いですけど、「Wino」とか「On Videotape」はずっと聴いていられる感じがあって、すごく好きですね。
今井 どっちもミッドテンポでブルーズ感がある曲ですね。
森山 なんかいかがわしい感じがするじゃないですか(笑)。それも本当に暗いいかがわしさではなくて、田舎町のいかがわしさと言うか。そういうところがすごく好きなんです。
今井 わかります。私もブルーズはそれほど通ってないんですけど、今回はそういう雰囲気は出したいなと思って。カントリーと1990年代のロックを合わせたイメージなんでしょうね。
──アメリカンゴシック感も今作に通底する要素ですね。
今井 ダンジグにもそういう要素がすごくあるし、私が最初にハマったAlice in Chainsもメタルとカントリーを融合させてますし、独特のネバネバしたボーカルハーモニーと歌い方で。ビジュアルもグロいし、そういう部分は影響を受けてますね。
──これは今作に限らずLEOさんの作品全体に思うことなんですが、ほかの方にはない独特のミクスチャー感覚やオルタナティブな美意識を常に感じるんですよ。
今井 それはうれしいですね。例えばRage Against the Machineを初めて聴いたときにも思いましたけど、ああいうジャンルを混ぜたクロスオーバーなものは強いんじゃないかと思います。そういった人たちの中で私が一番好きなのはFaith No Moreなんですよ。そういう音楽のパイオニアじゃないですか。私のアイドルみたいなもので、私がいろんなジャンルに行くのはそういうところからきてる気はしますね。
森山 アルバムごとに音楽性は違いますけど、ジャンルレスなところは最初から変わってないですよね。いろんなジャンルのものをLEOさんのカラーでうまくまとめてらっしゃってて。
今井 でもiTunesとかでジャンルが「Unknown」に分類されてたらなんか寂しい感じがする(笑)。それなら「Alternative」とかがいいかなって。
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自分に合ったデス声を発見
- LEO今井「VLP」
- 2018年7月11日発売 / 日本コロムビア
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[CD]
3240円 / COCP-40400
- 収録曲
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- Wino
- Bite
- Fresh Horses
- Tiffany
- Sarigenai
- New Roses
- On Videotape
- Real
- Car Alarm
- Need To Leave
- アニメ「メガロボクス」Blu-ray BOX
- 株式会社バンダイナムコアーツ
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2018年7月27日発売
Blu-ray BOX 1 特装限定版
14040円 / BCXA-1372- 収録内容
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- ROUND1~ROUND4(4話収録)
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2018年9月26日発売
Blu-ray BOX 2 特装限定版
14040円 / BCXA-1373- 収録内容
-
- ROUND5~ROUND9(5話収録)
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2018年11月22日発売
Blu-ray BOX 3 特装限定版
14040円 / BCXA-1374- 収録内容
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- ROUND10~ROUND FINAL(4話収録)
- 公演情報
LEO今井「VLParty(a release party)」 -
- 2018年7月16日(月・祝)大阪府 CONPASS
- 2018年7月19日(木)東京都 新代田FEVER
- メガロボクス presents
「メガロニア in SHIBUYA WWW」 -
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2018年8月6日(月)東京都 WWW出演者 LEO IMAI(LEO今井、岡村夏彦、シゲクニ、白根賢一) / NakamuraEmi
(NakamuraEmi、カワムラヒロシ、朝光介[カサリンチュ]) / mabanua
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2018年8月6日(月)東京都 WWW出演者 LEO IMAI(LEO今井、岡村夏彦、シゲクニ、白根賢一) / NakamuraEmi
- LEO今井(レオイマイ)
- 1981年に東京にて、日本人の父親とスウェーデン人の母親との間に生まれる。日本語、英語が堪能なほか、スウェーデン語、フランス語も話すことができるマルチリンガルアーティスト。幼少期をロンドンで過ごし、高校生の頃に一時帰国した後、再び大学進学のためにロンドンに戻る。オックスフォード大学大学院在籍中に、日本でアーティスト活動を行うため来日。2006年9月にデビューアルバム「CITY FOLK」をインディーズレーベルから発表した。洋楽とも邦楽とも区別の付かない独特のポップサウンド、英語と日本語を絶妙に組み合わせたユニークな詞世界が特徴。2007年11月にシングル「Blue Technique」でメジャーデビューし、2008年1月には向井秀徳(ZAZEN BOYS)と吉田一郎(ex. ZAZEN BOYS)を迎えた2ndシングル「Metro」を発表。2010年に向井とのユニットKIMONOSを結成。アルバム「KIMONOS」を発売し話題を呼んだ。2013年6月、前作から約4年ぶりとなるアルバム「Made From Nothing」をリリースした。2018年1月に初のアナログ7inchシングル「On Videotape / Stumbling」を発表。7月にテレビアニメ「メガロボクス」のオープニングテーマ「Bite」を含むオリジナルアルバム「VLP」をリリースした。
- 森山洋(モリヤマヨウ)
- 「進撃の巨人」ビジュアルコンセプトや映画「ルパン三世」シリーズのプロップデザインなどを経て、2018年にテレビアニメ「メガロボクス」で初の監督を務める。