MOP of HEAD|“あるようでない”音楽シーンに放つ衝動的な音

MOP of HEADがコドモメンタルへのレーベル移籍を経て、新作「Health」を発表した。前作と前々作にはボーカルトラックを収録していたが、今回はひさびさに全編インストゥルメンタルのみ。ハードコアテクノのいちジャンルであるガバをモチーフとしたリードトラック「Gabber Juice」をはじめとした衝動的な作風は、バンドの新たな季節の始まりを確かに感じさせる。

また、各メンバーはバンド外の活動に対しても非常に精力的。George(Machine)とSatoshi(Dr)が共に向井太一のライブに参加しているのをはじめ、Georgeはiriやsumikaらをサポート、Satoshiは脇田もなりらをサポートし、Alaska JamやSiraphの一員としても活動している。なぜMOP of HEADはこんなにも多くのアーティストから求められ、愛されているのだろうか? 本特集ではメンバー4人のインタビューと共に、向井太一やLEO今井ら関係性の深いアーティスト9組からのコメントによって、バンドの実像に迫った。

取材・文 / 金子厚武 撮影 / 山崎玲士

すげえバカなの作っても「いいじゃん!」って面白がってくれるコドモメンタル

──新作「Health」はコドモメンタルに移籍して、最初の作品になりますね。

MOP of HEAD

George(Machine) もともと所属していたレーベルとは親戚と言うか、同じ会社なので、スタッフの人たちもみんな知ってるし、今でも前のマネージャーが現場に来たりするんです。なので、特別何かが変わったってことはないっちゃないんですよね。

──コドモメンタルの所属アーティストである幽世テロルArchitectにGeorgeくんが楽曲提供をしていたのも、もともと接点があったからだと。

George そうなんです。まあ、環境が変わったのは事実なので、1回気を引き締めるって感じはあったかもしれないけど……好き勝手やらせてもらってます(笑)。もうバンドを10年以上やってますけど、今回は1stアルバムのテンションでモノを作れたので、それはよかったですね。インストだと特に難しい方向に行っちゃいがちなので、ストイックになり過ぎないように気を付けてはいたんですけど、レーベルが変わって1枚目っていうことで1stの感じが出せたなって。

Kikuchi(G) 「好き勝手やったろう」っていう気持ちと、移籍のタイミングが重なったっていうのはあるかな。これまでも好き勝手にやってきてはいるんですけど、コドモメンタルの人はすげえバカなの作っても「いいじゃん!」って面白がってくれて、その勢いのまま今回の盤になったような感じがあるなって。

──Hitomiさんは移籍についてどう感じていますか?

Hitomi(B) 私も以前にコドモメンタルのアーティストのミュージックビデオに参加したことがあるので、知らない人はあんまりいないし、そんなに心境の変化はないですね。自分たちのことをすごく後押ししてくれるので、好きなことができる場所を提供してもらえてるような感じがあります。

Satoshi(Dr) 僕がモップに入ったのが2012年の頭なんですけど、その頃の衝動がまた来たって言うか、今は入ったばっかりの頃のテンション感とか勢いがあるなって思います。小難しいことをやりたくなることもあるけど……できないんですよ(笑)。オシャレっぽく、ちょっとレイドバックしたりとか、そういうのはできないので、いい意味であきらめもあって、それよりも衝動で……ワー!っていう。擬音でしか表現できないんですけど(笑)、そういう作品になったんじゃないかなって。

──GeorgeくんやSatoshiくんは、向井太一くんやiriさんのサポートをしてたりもするから、今のトレンドを理解してると思うし、プレイヤーとしては「できない」こともないと思うんですよね。ただ、バンドとしては「できない」し「やりたくない」ということでもあるのかなって。

George(Machine)

George もちろん、今流行ってる音楽を聴くのは好きだし、そこに携わることも好きなんですけど、このバンドとしては「MOP of HEADとして何を世の中に出すか」が重要で、今流行ってる音楽に寄り添った作品を出すよりも、そういうことは何も気にしないで作ったほうが、結果的に面白いものができるんじゃないかって気がしてます。ただ、今はいろいろ吹っ切れたと言うか、前は「あれをやるのは嫌だ」とか、つまらないこだわりが強かったと思うんですけど、今は面白そうだと思ったらなんでも一歩踏み出せるようになって。それは年齢的に30歳を過ぎたっていうのもあると思うんです。

──以前はよくも悪くもこだわりが強かったけど、なんでも1回受け止めた上で判断できるようになった?

George アーティストイメージみたいなのって、自分で守っていかなきゃいけないじゃないですか? なので、サポートでの参加も含めて「ほかのジャンルに行ったら、どう思われるんだろう?」って20代の頃はすごく気にしてたんです。でも今は「わけわかんないな、この人たち」って思われることに喜びを感じちゃってて、今回も「今さらガバキックかよ」みたいな(笑)。その感じって、自分たちとしてはすごくいい状態な気がしますね。

音楽で生活するからには、ちゃんと音楽ができる人間にならないと

──各メンバーがいろんなアーティストのサポートをしながらバンドを続けている現状に関しては、それぞれどのように感じているのでしょうか?

George 各々がいちミュージシャンだという意識は、結成当初からわりと強くありました。当たり前ですけど、飲食店のコックさんは料理がうまくないとダメじゃないですか? 僕たちも音楽で生活するからには、ちゃんと音楽ができる人間にならないとっていう意識はすごくあって、それが自分のバンドの中だけで完結するカッコよさもあるとは思うんですけど、僕は「人に必要とされる」ってけっこう大事なことだと思っていて。「こういうミュージシャンになりたい」っていうのは各々違うと思うんですけど、それぞれが外で活動して、成長してバンドに帰ってくるっていうのが一番いいなって。

──SatoshiくんはAlaska JamやSiraphのメンバーでもあるわけですが、もともといろんな活動をしたいという思いがあったわけですか?

Satoshi(Dr)

Satoshi ありましたね。ただ、最初はとにかくドラムが好きだから、もっとうまくなりたくて「とにかく練習」みたいな感じだったんですけど、そういうストイックさはなくなってきたと言うか。現場で実際にやらせてもらって、そこで感じることのほうがデカいなって思うようになって。モップとはまったく違うことをやることも多いので、それを吸収することで自分のキャパを広げさせてもらって、それをモップでもやってみたり。

Hitomi 私も、外の活動の経験をモップに持って帰ってこれたらっていう思いは同じですね。あと私の場合は、1人でも多くの人にMOP of HEADっていう存在を知ってもらえたらなって気持ちを常々持ってます。ライブをやっててモップが一番楽しいなって思うんですけど、まだまだ知られてないなと思うこともあるので、どんどん言っていきたいなって。

──逆に、Kikuchiくんはサポートはほぼやってないですよね?

Kikuchi 正直、自分は外で何かをやるってことに興味がないんです。そもそも、ギターにもあんまり興味がなくて「この音どうやってできてるんだろう?」とか、そういうことに興味がある。なので、いろいろ研究してることが多くて、あんまり自分のことを「プレイヤー」とも思ってないですし、この先もサポートが増えるとかはないんじゃないかなって。

──でも、以前取材をしたときに好きなギタリストを聞いたら「スティーヴィー・レイ・ボーンとかラリー・カールトン」って、いかにもなギタリストの名前を挙げてて、不思議だなって思ったんですよね。

Kikuchi あんなのできないし、自分でやろうとも思わない人って感じなんですよね。僕「誰かみたいになりたい」とか、そういうのがまったくないんです。多くの人は「あの人みたいになりたい」という気持ちがあると思うんですけど、僕はそれまったくなくて、それよりも「もっとバカなの作りたい」とか思っちゃうんですよね。五角形のパラメーターのうち、1個だけ尖ってればそれでいいかなって。

MOP of HEAD「Health」
2018年11月7日発売 / コドモメンタルINC.
MOP of HEAD「Health」

[CD] 1500円
CMI-0044

Amazon.co.jp

収録曲
  1. super yeah
  2. Gabber Juice
  3. mental
  4. Hooligan
  5. Aurora246
MOP of HEAD(モップオブヘッド)
MOP of HEAD
2006年に結成された、George(Machine)、Kikuchi(G)、Satoshi(Dr)、Hitomi(B)からなる4人組インストバンド。2011年7月に1stアルバム「RETRONIX」、2013年5月に2ndアルバム「BREAKING OUT BASIS」、2015年7月に3rdアルバム「Vitalize」を発表した。2016年7月にはUCARY & THE VALENTINE、小林要司(Large House Satisfaction)、LEO今井、YOCO ORGAN、渋谷龍太(SUPER BEAVER)とタッグを組んだ「and Touch You」、2017年7月にはUCARY、向井太一をゲストに迎えた「Aspiration」と、ボーカルトラックを収録したミニアルバムを発売。2018年にコドモメンタルINC.に移籍し、インストに立ち返った3rdミニアルバム「Health」をリリースした。