lego big morlが、ニューシングル「Flowers」をリリースした。フリーダウンロード（メールニュース会員限定）という形にはなっているものの、昨年9月にリリースされた2ndフルアルバム「Mother ship」以来の音源であるという意味でも、実際に聴いてみても、彼らにとって重みのある楽曲であることは間違いない。

以前の彼らは、4人の技巧が無邪気に絡み合って生まれるスリリングなアンサンブルが魅力だったが、「Mother ship」ではボーカル/ギターのカナタタケヒロの歌を際立たせ、バンドとしてまとまった楽曲を生みだすというネクストステージへと踏み出した。そこでつかんだものが「Flowers」では1曲に集約されて、大きな力を発揮している。

一言で言うと、歌を中心に据えた、6分を越える壮大なバラード。しかし、もちろん彼らのことだ。単調でありきたりな仕上がりにはせず、絶妙なアレンジで、楽曲の物語性を高めている。じわじわとフェードインしてくるギターの音色がビートと溶け合い、凛と伸びていく歌を支えるように繊細な起伏を繰り返し、彼方まで届きそうな雄大なサビへとつながっていく。これまで研ぎ澄まされた感覚を披露してきた彼らが、今度は並々ならぬ感情をさらけ出したという印象を受けた。この変化は単純に「Mother ship」以降だから、だけとは思えない。この曲が、この歌詞が、いつ書かれたものなのかはわからないが、3月11日の東日本大震災以降、彼らが音楽に向き合う気持ちに起きた変化が反映されているのではないだろうか。

特に悲しくも美しい、やり切れなくも強い、生々しい心情が描かれた歌詞を聴いていると、そう思えてならない。「向こうでは地が揺れ波が起ち、向こうでは日常 / 矛盾して美しいこの僕らの世界を嘆くことなく、憂うことなく / 生きるしか無いから / 生け、生け、生け」──未曾有の状況にぶつかったとき自分たちには何ができるんだ？ そう自問自答した結果、あらゆる柵を取っ払って、このメロディとメッセージが吹き出したのではないだろうか。だからこそ、楽曲として優れているというだけではなく、彼らの楽曲の中でもっとも強いエネルギーが感じられる作品になっていると思うのだ。

今のlego big morlの音楽への向き合い方は、尋常じゃなくまっすぐだ。この覚醒は、聴き手だけではなく、彼ら自身も救うだろう。あとは願うだけだ。傷ついた日常の中で、音楽を欲している人々に、届け、届け、届け、と。

文／高橋美穂