ナタリー PowerPush - LAMA

牛尾憲輔&中村弘二インタビュー

04. ほかの活動とLAMAの相違点

──LAMAを始動するときに、ナカコーさんの中に到達ポイントといいますか、グランドデザインはありました?

ううん。最初は何もなかった。何ができるんだろうなってリアルタイムで照合してる感じ。

──ナカコーさんのほかのプロジェクト、例えばNYANTORAは出したいときに出したいものをカジュアルに出せるようなもので、iLLは活動を非常にデザインしている……このスパンでこれだけのものを作っていくもの、と遠くまで見据えている印象があります。LAMAは、そういったナカコーさんのほかの活動スタイルとは全く違うんですね。

んー、僕が個人で勝手に思ってるのは、LAMAはそれぞれに持ってる範囲とかエリアとかをLAMAっていう場所で共有するバンドだということで。このバンドでは“共有”がコンセプチュアルなことになってるし、そこで何ができるのかは一緒にやってみないとわからないし。「何ができるんだろう」と思うこと自体が面白いこと、コンセプチュアルなことだとも思うし。

──“共有”というコンセプチュアルな芯があると言えば、制作活動の進め方もまさにそのとおりだそうですね。共有サーバを作って、そこに素材をみんなで投げ合って。

投げ合って、それに対して全員で組み立てていく。

──なんだろうな、ちょっとメディアアートっぽいですね。複数の人が集まってPC上で楽曲を制作するときの進め方としては、ポピュラーな手法の1つだと思うんですけれど、初めて会った4人が採る方法として考えると非常に面白いな、と。

うん。まあそういうやり方って、メディアアートだとか、電子音楽の世界とかで見る形だけども、LAMAはそれをポップスのフィールドにポンって持ってきてる。なんていうんだろうな……もう少しカジュアルなものだと思うし、別にそこが売りなんです!って打ち出してるわけではない。それは手段、ツールでしかないから。

──“共有”それ自体が目的ではない、と。なるほど。では、自分のほかの活動とLAMAが決定的に異なる点って、“共有”以外に何かありますか?

うーん……うーん……。共有以外はないかなあ。LAMAは自分だけで完結はしないから、全員の立ち位置があった上で判断していく作業が……。

──自分の中で、この曲はiLLでやろう、この曲はNYANTORAで出そう、この曲はLAMAでやりたいみたいな判断はどこでつけてますか?

いや、今はLAMAに関してはそういう考えはなくて。まあ厳密に言えばあるんだけど……。すごく簡単に言えば、ポップスができあがればそれはLAMAかな。簡単に分けると。

──じゃあナカコーさんがLAMAで作りたいのは端的に言うとポップな作品?

うん、まあでもシンプルに、ポップの意味合いはまたちょっと違ってくるんだろうけど……。やってく中で変わってきたから。最初、12月の段階ではこそっとやりたいと思ってたから。こそっとやってこそっと出ちゃいましたみたいな感じで。そこで思ってたポップスと、今こうやってバンドの存在が意外と知られちゃった状況でのポップスはちょっと違うから、そこでの修正はあるけど。でもポップスには違いないかな。

──なるほど。LAMAの進む方向がシングルだけでは判断できない中、ナカコーさんが「わかりやすく言えばポップスを」と言うのは、今後のLAMAを知る上で1つのヒントになるんでしょうか。

うん、まあ「これを鳴らすんです」っていう発想は、あるバンドにはあるだろうけど、こういう制作スタイルでやってるタイプの人たちからはそういう発想は出てこないと思う。何をやるんだろうあの人たち、っていう気持ちで作ってるし、結果できたものがそのまままた4人の一部の何かに変換されていくっていう作業だから。だから何も限定してないし、何も決めてない。すごく肉体的に作業して出た結果の答えを見る感じ。

──牛尾さんにも伺ったんですが、みんなが自分の中にある何かを持ち寄って、素材ファイルに対して音を重ねていく、弾いていくという制作スタイルだと、「これこういう感じになるね」とか「こういう曲になりそうだね」というジャッジはどこで生まれるんでしょう?

まあ、それも4人の共有するものから出てくるかな。自分も最初は「どうジャッジするんだろう」と思ってたけど、やってみると4人の共有する場所は重なってる部分があって、そこから見つかる答えがあるから。それはほかのバンドも一緒なんだけど、うん。ジャッジはわりと、お互いが言ってることの意味を理解して、自分の言いたいことと重なってる部分を見つけて、話し合いながら「落としどころは実はここだったりして」みたいにしてつけてるかな。

──そういう制作方法が、クレジットがバンド名義っていうのにつながってるのかなと思いました。ちなみに詞はどうやって作ってますか?

詞はバラバラかな。今現状である歌詞でも、2行は俺が書いてたり、後半の行はミキちゃんが書いてたりっていう曲もあるし、別の曲は丸々1人で書いてるのもあるし。そのときその曲に何が乗ったら気持ちいいだろうっていう感じで判断してるから。

──なるほど。今、LAMAは制作活動続行中ですよね。アルバム曲の完成型も見えてきているようですが、順調ですか?

うん、多分順調。

──このシングルの次に何が出てくるのかも、リスナーとしては期待しています。LAMAっていうバンドの形が見えてくるのか、見えてこないのかっていうのも含めて楽しみです。

でも、何かこれって決まった形にはなりにくいです。全員の個々の活動があった上で成り立ってるバンドだから、それは消えないと思う。で、それが面白いんだと思う。

──面白いですか? LAMAの活動は。

うん、面白いですね。どうなるんだろうと思いながらだし……それはあれに近いですよ、ナタリーで働いててCINRAの人と一緒にお食事するみたいな感じです。ふははは(笑)。

──あははは(笑)。その例えが来るとは思わなかったです。

職業は一緒だけど普段いる世界が異なるから、っていう楽しさに近いかもしれないですね。

05. ほかのメンバーの紹介

──自分以外のLAMAのメンバーを一言で紹介するとしたらどんな言葉が出てきますか?

うーん……。ミキちゃんはアイコン。田渕さんは職人。牛尾くんは、マスコット(笑)。ゆるキャラ? いい意味でね。

──はい(笑)。田渕さんが職人だっていうのは、ご本人も含めて4人が共通して言ってましたね。非常に職人的だ、と。

うん、職人的だと思いますね。やることを把握して、的確にやる人だなと。

──じゃあLAMAはアイコンがきちんと立ってて、職人がものを作っていて、進行役がいて、ゆるキャラがいる。

ゆるキャラがいる。マスコットがいる(笑)。牛尾くんは楽しい空気を作るのがうまい人です。

06. マイブーム

──突然ですがナカコーさん、今ハマってること、マイブームはありますか?

うーん……ハマってるってほどでもないけど、みんなが使ってるPSPとかニンテンドー3DSとかは、ちょっといじってみようかなと思ってますけど。

──iPadはお持ちですよね。そうじゃなくて?

iPad買って、こうなってこうなってこういう未来があるんだろうなあと思って。それとは違う日本のメーカーの機械を触りながら、この人たちは何がしたいんだろうなあ、こういうことやりたいんだろうなって思うように。iPadだけ触ってるんじゃ、向こうの人がやりたい世界が見えるだけだから。それはそれでいいんだけど、それと日本のやり方って違うから。それは触ってるとわかるっていうか。

──それはソフトウェアとしてのゲームを楽しむんじゃなくて、触ってることでハードウェアの思想を楽しんでるような感じですね。

そうかな。触ると何がしたいかわかるから。この人カメラに金かけねえんだ、とか(笑)。

07. 今後の野望

インタビュー風景

──では最後に、今後LAMAで果たしたい野望を教えていただけますか。

うーん。うーん、野望……。こういうことが普通になってくれると面白いよねっていう気持ちはあるけど。ワクワクすることが普通になってほしいっていう感じかなあ。

──ワクワクする? それはLAMAみたいな形で活動することですか?

それもあるけど、これとこれが組み合わさったらどうなるんだろうっていう、コラボレーションのようなものが、ちょっと違う形で容易に起きるような感じにはなってほしいなと思いますね。

1stシングル「Spell」 / 2011年8月3日発売 / Ki/oon Records

  • 初回限定盤[CD+DVD] / 1500円(税込) / KSCL-1827~1828 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] / 1020円(税込) / KSCL-1829 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. Spell
  2. one day
  3. Spell(2 ANIMEny DJ's Remix)

アーティスト写真

LAMA(らま)

中村弘二(Vo, G)、フルカワミキ(Vo, B)、田渕ひさ子(G, Cho)、牛尾憲輔(Programming)の4人からなるロックバンド。2010年12月結成。2011年4月、東京・WWWでKIMONOSと対バンを実施。これがお披露目ライブとなる。この模様はライブストリーミングチャンネル・DOMMUNEにて生中継され、約8万人が視聴した。同年8月に1stシングル「Spell」をリリース。