ナタリー PowerPush - la la larks
清く正しく“部活ノリ” プロ集団の新境地
たまたま今回はアニメだっただけ
──la la larksにとって1発目のシングルをアニメソングのレーベルとして有名なFlyingDogから出すとなると、ある意味バンドの見られ方に色が付いてしまうと思うんです。そこに抵抗感はないですか?
江口 構わないというか喜ばしい、うれしいですよねむしろ。アニメ関係だからといって断ったり、否定したりする理由が全然なくて。例えば坂本真綾さんとバンアパのやつとかもそうだけど「バンアパがアニメなんてやってる!」って思う人は絶対にいるんです。でもそれを気にしていられないというか、それで活動が狭まることほど寂しいことはないし。僕はプロデュース業でもアニメのタイアップ曲のアレンジをさせてもらったりするんですけど、そこにいる人たちってやっぱりすごいムキになって作品と向き合ってる。だからちゃんと結果も出るわけです。見られ方を気にしたことは1回もないですね。
──では今後もアニメとのタイアップが続いたりするのでしょうか?
江口 今回はたまたま一緒に曲を作るコラボレーションの相手がアニメに携わる方だったというだけで、今後のことについてはまだなんの話もないんですよ。でも僕らは今の状況を前向きに捉えています。何が起こってもいいなって。
──いい具合に肩の力が抜けているということなんですね。
内村 School Food Punishmentの頃より、やるべきことも考えるべきこともある意味では増えているんです。でも以前よりも今は正しいフラストレーションが溜まっているというか……。
江口 「できない」「間に合わない」「眠たい」みたいな単純な悩みだよね。
内村 そういう感じ(笑)。とりあえずやることが終わらない、うまくできないとか。その都度メンバーに、これお願いできませんか?とか言ってます。
江口 またその話し方が悪かったりしてメンバーがイラッとしてたりするんですよ(笑)。「○○さん怒ってたけど、大丈夫?」みたいなことを僕が内村に連絡したりして。
──そういうメンバー間のやり取りの中にある“バンドらしさ”っていうのもla la larksの重要なポイントになっているのでしょうか?
江口 1人でなんでもできるわけじゃないですからね。
内村 ベテランのバンドマンが集まっているから、傍から見た人たちに「スペシャリスト」とか「プロ集団」ってよく言われるんですけど、プロ集団って感覚があんまりないんですよ。そう思うのはレコーディングやライブをやる、音楽しかやらない日くらい。こういうときの仕事の速さとか、クオリティの高さとかはプロだなって思うんです。ただそれ以外はどっちかっていうと高校生のバンドみたいな感じ。「やったことないけどやってみよう」みたいな。
江口 みんなで一生懸命CDを封入したりとか、宛先書いたりとか、物販手作りしたりとか。なんか部活っぽいよね。
バンド活動の新しい在り方を見せたい
──la la larksの最終到達点みたいなものは何かイメージしていますか?
江口 ゴール? 自力でどこまで埋めて、何枚くらいCD売りたいとか、そういうことなのかなあ。到達点はまだわからないけど、今どうしても必要としているのは人ですね。例えばWEBでちゃんとカッコいいものを作ってくれる人とか、衣装とか。今はいろんな人とたくさん知り合っていかなきゃいけない時間かなと思っていて。そろそろライブのブッキングを手伝ってくれる人が出てくれたらと思いますが、もうホントこの規模になったら手が回らないよっていうときになって初めてお願いしたいなと。自分でこんなにつらいんだってわかった上じゃないと、人に感謝できない。
──自分たちの地道な活動を土台にして初めて到達点も見えてくると。
江口 僕らは普通に当たり前のことをやってくだけなんだけどね。例えば内村はペーパードライバーなんだけど、今運転の練習をしている。今はツアーに行くときに僕とクボタさんとターキーしか運転できないから。ギターの三井も免許を取りに行ってて、5人ドライバーがいたら福岡まで普通に行けるっしょ、って思ってるんです。遠くに行くために運転の練習をするとか、普通の発想じゃないですか。これをマネージャーが運転してくれるのが当たり前とか思ってる人たちはいっぱいいるけれど、それじゃ続かない。
──これは長く続くバンドになりそうですか?
内村 はい。そうなるように運転も練習してます。
江口 誰かの力を借りたとき「ちょっと申し訳ないんだけど、パスタ1皿でお願い」なんて言ったりするけど(笑)。もしそれがパスタ1皿で済まないよって話になれば楽曲収入の何%を対価として払うことになるかもしれない。それって今あるビジネスのシステムと変わりませんよね。でも今当たり前のように存在しているそのビジネスのシステムはいろんな意味でたぶん無理があるから、うまくいってない。だから僕らのやることはそのうまくいく方法を洗い出すみたいな話なのかなと思っています。今はそれをちゃんと1個1個確かめてるんです。
内村 “清く正しく”的な感じだと思いますね。la la larksは。
江口 誰かにやってもらうんじゃなくて、自分たちが自ら実践する。この先にゴールが相変わらず1つだと面白くないと思うんです。「バンドやりてえ。よし、まず就職しよっか」とかでもよくて。「早く帰れるし、土日休みだし、やっぱバンドやるなら公務員っしょ」みたいな。実際辞めたメンバーが公務員になって思ったことなんです。公務員って忙しいけど、こんなにバンドやりやすい環境ってないかもって。まあ家族さえ許せば、ですが。そういうバンド活動の新しい在り方みたいのを若い子たちに見せてあげたいなと思ってます。
- 1stシングル「ego-izm」/ 2014年6月4日発売 / FlyingDog / VTCL-35183
- [CD] 1404円 / VTCL-35183
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収録曲
- ego-izm[作詞・作曲・編曲:la la larks / ストリングス編曲:江口亮、石塚徹]
- end of refrain[作詞・作曲・編曲:la la larks]
- earworm[作詞・作曲・編曲:la la larks]
- ego-izm(Instrumental)
- end of refrain(Instrumental)
la la larks(ラララークス)
内村友美(Vo / ex. School Food Punishment)、江口亮(Key / Stereo Fabrication of Youth、MIM)、三井律郎(G / THE YOUTH、LOST IN TIME)、クボタケイスケ(B / sads)、ターキー(Dr / ex. GO!GO!7188)からなる5人組バンド。2012年に結成。定期的なライブ活動を通じて着実に知名度を上げていく。2013年には栗山千明に楽曲「0」を提供。またAZUMA HITOMIの1stアルバム「フォトン」にはリミックスアーティストとして参加している。2014年1月、デモ音源でのオンエアにも関わらずJ-WAVE TOKIO HOT 100で「さよならワルツ」が22位にチャートイン。J-WAVEの番組「TOKYO REAL-EYES」では番組とのコラボ企画として新曲を制作し、2014年4月にはクラウドファンディングの出資者向けにCD「28時」をリリースした。同年6月、1stシングル「ego-izm」を発表する。