残酷な運命こそがその人を変える力になるんじゃないか

──ゴシックメタルやシンフォニックメタルが好きという意味では、ヘビーな題材を扱った「リアル鬼ごっこ」のテーマソングに黒崎さんを起用するっていうのは、絶妙なキャスティングですね。

そう思っていただけるとうれしいですね。シングルの「HELL:ium」っていうタイトルにもすごくこだわったつもりですし。

──そのタイトルですが、「HELL」はもちろんわかるんですけど、「ium」ってどういう意味なんですか？

「ium」は「importance」（重要性、大切なもの）、「urge」（衝動）、「mine」（自分の）の頭文字を取った造語なんです。ある日突然世界の仕組みが変わって得体の知れない鬼と戦わなきゃいけなくなる。それってまさに「HELL」、地獄だと思うんですけど、そういう状況だからこそ自分自身、初めて出会う自分の姿っていうのもあると思っていて。実際「リアル鬼ごっこ3」から「同5」までの主要な登場人物たちって途中で過去を振り返るんですよ。「あのとき、俺はこうだったけど、もう逃げたりはしない」って。地獄を経験することでやり直そうという「衝動」に駆られたり、「自分の」本当に「大切なもの」に気付いたりする。実は残酷な運命こそがその人を変える力になるんじゃないかと思って、このタイトルにしました。

──単に主人公がヒドい目に遭う残酷なオチが大好きというわけではなく、バッドエンドの中に教訓や光明を見つけたい、と。

絶望的な状況であっても、考え方や行動次第では全てを失うわけではないかもしれない。そういうポジティブさや、人間が本質的に持つ生命力がこの映画のテーマやメッセージだと思うし、私自身そうありたいと思ってます。

乙女ゲームはもはや生活の一部

──これから新曲発売というタイミングなのでちょっと気の早い話なんですけど、今後のご予定は？

今年の夏放送の「薄桜鬼 黎明録」というアニメのオープニングテーマと、7月発売のPSP用ゲームソフト「十鬼の絆 関ヶ原奇譚」の主題歌を歌わせていただくことになってます。「薄桜鬼」は乙女ゲームが原作だし、「十鬼の絆」はまさに乙女ゲームなんですけど、私、乙女ゲームが大好きなので、すごくうれしいんですよ（笑）。

──乙女ゲームをプレイなさるんですね。

もはや生活の一部です！ 最初にハマったのが「ときめきメモリアル Girl's Side」っていうゲームだったんですけど、プレイする前は「まさか、ハマるわけないだろう」と思ってたんです。ところが、いざ始めてみたらまんまとハマってしまい（笑）。「あのキャラクターがいなきゃ生きていけない！」「この世に彼がいないなんて信じられない！」とまで思っちゃいまして。その男の子がガソリンスタンドで……。

──働いている設定だったんですか？

そういう設定で、私は働いていると信じたかったので「どこかのガソリンスタンドには絶対いるはずだ！」ってタウンページやネットで（そのキャラクターの勤める）「スタリオン石油」ってガソリンスタンドを探しまくりましたから！

──ゲームで実在のガソリンスタンドの名前は、権利の問題で使わないですよ（笑）。

今考えればそうなんですけど（笑）、それでも私、一時期は似た感じの名前のガソリンスタンドでアルバイトしてましたから。「いつか彼が現れるかもしれない！」って。

──あははは（笑）。そこまで思い入れると、ゲームがバッドエンドを迎えようものなら目も当てられませんね。一緒にバイトしようとまで思っていた男の子に振られちゃうんだから。

そうなんですよっ！ あの絶望感はホンットすごいですから。「どこで選択肢を間違えたんだろう？」と思って、直前のセーブポイントからやり直してみても、そのタイミングでは既に時遅し。乙女ゲームには素直な心で臨みたいから攻略本や攻略サイトを見ないでプレイするんですけど、どうも男心がわかってないみたいです（笑）。

──ただ、黒崎さんはバッドエンドがお好きですよね？

あれっ!? 映画やマンガのラブストーリーがバッドエンドになるのは別に大丈夫なんですけどねえ。自分視点のことだからイヤなのかなあ……あっ、わかった！ 私、自分勝手なんです（笑）。