ナタリー PowerPush - 黒木メイサ
新たな扉を「UNLOCKED」自身を出し切った快作に迫る
昨年1月の1stアルバム「MAGAZINE」以降、3枚のシングルをコンスタントにリリースしてきた黒木メイサが、2ndアルバム「UNLOCKED」をリリースする。
アルバムには「One More Drama」「Wired Life」「Woman's Worth」「Breeze Out」というシングル曲を含めた全14曲を収録。これまで以上にカラフルでバラエティに富み、自身の秘めたる可能性に突っ込みまくったその内容は、アルバムタイトルが示すとおり、新たなる扉のキーが“解錠”されたことを明確に実感させる仕上がりとなっている。
「今あるすべてを出し切った」と言い切る黒木メイサに、アルバムのこと、3年間にわたる音楽活動のこと、そして今現在の心境について語ってもらった。
取材・文 / もりひでゆき インタビュー撮影 / 平沼久奈 スタイリスト / 松下麻耶
お客さんを意識したレコーディング
──2ndアルバムの制作はいつからスタートさせたんですか?
去年の10月に初めてツアーをさせていただいて、それが終わってからですね。アルバムのことはなんとなく頭の片隅にはあったものの、今しか考えられないタイプの人間なので(笑)。とりあえずツアー中はライブに集中してました。
──ライブを経てアルバム制作という流れは、前作「MAGAZINE」のときと一緒ですね。
そうそう。前回は初ワンマンが終わってからの制作でしたもんね。
──じゃ、今回もツアーの経験はいい形でアルバムに反映されたのでは?
うん。ツアーでまたお客さんの反応を見たことで、もっとお客さんと一緒に歌いたいなあって思ったんですよ。もっとお客さんと一緒に楽しめるものをやれたらって感覚が強くなったというか。そこは今回、すごく意識してレコーディングした感じですね。
──自分の信じたもの、好きなものを歌うという大前提はありながらも、その音の向こう側にいる、聴いてほしいと思う対象がより明確になったということなんでしょうね。
音楽活動を始めて3年ぐらいなんですけど、基本的に攻め姿勢であることはあんまり変わっていないんですよ。でもね、ちょっとツンツンしなくなったかも(笑)。
──どういうことですか?
音楽活動を始めるときって、舞台とかドラマとか役者業を先にやってたから、その片手間にやってるって思われたくない気持ちがすごくあったんです。だから、向こうから突かれる前にこっちから攻撃してたというか。突かれる前に倒しに行くみたいな感じで(笑)。そういう意味でツンツンしてたところがあったと思うんです。それがライブでお客さんの顔を見ていくうちに変わったんですよね。みんなにこういう曲を聴いてもらいたいとか、こういう曲ならもっと喜んでくれるかなとか。今回はそういうことを思いながら初めてレコーディングできたから、自分なりの挑戦もよりできるようになったところもあるし。
「黒木、もう全部出しました」みたいな気持ち
──そういうお話を聞くと、「UNLOCKED」というタイトルにも、よりカラフルになった内容にもすごく納得できます。
実は今回、アルバムのタイトルを先に決めてたんですよ。で、“UNLOCKED”な曲を選んでレコーディングしていったんです。キーワードはこれしかないねっていう感じで。
──じゃメイサさんの中にも、心の中のカギが解錠されたという実感が強くあったんですね。
そうですね。気づいたら解錠されていたというか。ただ、“UNLOCKED”っていうキーワードの中で、自分が好きな曲とか、自分にとって挑戦になる曲とか、そういうのを1曲ずつ作っていったんですけど、それがひとつになったときにちゃんとまとまるのかなっていう不安もあったんですよ。
──その不安は杞憂でしたね。
はい。とにかくもう1曲1曲を信じてやっていくことで、ちゃんと“UNLOCKED”なものが完成しましたね。そうは言いつつ、「LAST CODE」っていう曲では解錠するための最後のコードが見つからない、まだ押せないみたいなことを歌ってたりもする。そんな天邪鬼的な部分も残しているんですけど(笑)。
──アハハハ(笑)。そういうところがメイサさんぽくもある。
私って、音楽はもちろん、ドラマや映画なんかをやっていても、作品が完成したことで気持ちが満たされたり、達成感が湧いてきたりみたいなことって今まであんまりなかったんですよ。それよりも「よし次! 次!」っていう前に進む勢いのほうが強かったから。でも、今回はレコーディングが終わった段階で、「黒木、もう全部出しました」みたいな気持ちになったんですよね。
──おお、それはすごい。すべてを出しつくして抜けがら、みたいな。
そういう感覚が初めてだったので、一瞬自分で自分が不安になったりもしたんです。「次どうするんだろう」っていう。でも、それぐらいに自分の中では満足してる作品になったんですよね。この解放された扉の先に何があるのか、何が起こるのかっていうのは、今はまだわからないですけど、とにかく初めて満たされたっていう。
CD収録曲
- Hit the Road
- Shake it Off
- Wired Life
- One More Drama
- Take Me Away
- Flash Light
- Woman's Worth
- Breeze Out
- LAST CODE
- Happy to be Me
- PARADE
- S.O.S-ワタシサガサナイデクダサイ-
- UPGRADE U!
- 曖昧で贅沢な欲望
初回限定生産盤A DVD収録内容
- One More Drama(Music Video)
- SPECIAL MAKING OF “One More Drama”
- Wired Life(Music Video)
初回限定生産盤B DVD収録内容
- LOVEHOLIC
- SWITCH⇔
- TOUR DOCUMENTARY OSAKA
黒木メイサ(くろきめいさ)
1988年生まれ、沖縄県出身の女性シンガー。2004年に女優デビュー。2009年4月にアルバム「hellcat」で歌手デビューを果たす。2010年10月には東京・恵比寿ガーデンホールで初のワンマンライブ2DAYSを敢行。ファッションイベントなどでも精力的にライブを行い、パワフルな歌声とクールでセクシーなダンスで幅広い層を魅了している。2011年1月に初のオリジナルフルアルバムとなる「MAGAZIINE」をリリース。同年秋には初の全国ツアー「Meisa Kuroki Presents "THE MAGAZINE SHOW"」を行い、アルバムの世界を全国のファンに披露した。2012年2月、2枚目のフルアルバム「UNLOCKED」をリリースする。