文／飯倉啓太 (HIT THE GROOVE)

「女優が歌う」、というだけで、「あ、女優さんね」という偏見を持ってその音楽自体を聴かないでスルーしてしまう人は多いのではないだろうか？ 確かに、その多くは俳優業の片手間にテレビドラマの企画に乗ったり……と、真剣に音楽だけをやっているアーティストと比べると、やや芸能寄りに見えてしまう傾向は否めないし事実そのような作品も多い。“黒木メイサ”というアイコンもそのルックスがあまりにもキレイすぎるが故に、逆に「遠い存在」「アンドロイドっぽい」というイメージも、特に男性陣からすればあるだろう。しかしながらこの黒木メイサの新作「ATTITUDE」を聴けば、多くの人のその偏見はぶっとばされることになる。とにかく、「音楽」としてすごい!! 痛快である。そしてそのこと、それこそが彼女の生き方すべてに貫かれた“ATTITUDE”（態度）でもある。

最新鋭のエッジの効いたサウンド。斬新な譜割。エキセントリックな歌詞、独特の言い回し。そして何よりも黒木メイサが果敢に、挑戦的に新しい扉を叩いていることが大事だと思う。彼女の本気度、真摯な姿勢が周り中を巻き込みこのような作品になっていることが想像に難くない。

このクオリティは本人にその気がなければ簡単にできるものではない。 歌は完璧かと問われればそうではないかもしれない。が、「ちょっと舌ったらず」な声が癖になるほど気持ちいいし、何よりもこの歌詞をこれだけの説得力をもって伝えられるアーティストがはたして存在するのか？ このことがすべてだ。

「自分を甘やかすのは終わりにしよう」（Are Ya Ready?）

「調子乗ってそこらじゅうで愛想ばっかりふりまいてるようじゃカッコ悪いご自慢のトークすら意味がないかも」（Kind of Guy）

「どうせ一人じゃたりないんでしょ致命的に嫌な癖よ！」（#1）

「あと少しでいいとこ・もうすぐクライマックスシーン・一時停止してじらしてみたりしながら」（Late Show）

「空気は読まないで吸うもんでしょ！」（Stand Up!）

「明日が来るのが当然のことと思ってたあの頃よりだいぶ大人になった」（Awakening）

これは歌詞をほんの一部抜粋しただけだが、自分の気持ちをあけすけに言い放っているのがわかるだろう。この内容も、彼女だから説得力をもってリアルに響くのであって、おそらく他の人が歌ったら不愉快に聞こえて聴くに堪えないのではないか？ その説得力こそが彼女の人間力から発せられるものなのだ。