ナタリー PowerPush - KREVA

脳にスペース 心にスペース 余裕とスキマの傑作誕生

KREVAがいないインストゥルメンタル盤

──アルバムのインスト盤「SPACE Instrumentals」も面白いですね。この発想はどこから?

アルバムのタイトルが「SPACE」っていうのは決まってたんで、自分がいなくてそのぶんスペースの空いた盤が出るっていうコンセプトは面白いかなって。あと普段うちのスタッフはまずトラックから聴くんですよ。

──ああ、ラップが乗る前のトラックを。

で、どんな歌詞付くのかなって想像したり。その感覚をファンのみんなにも擬似的だけど楽しんでもらえたらいいかなと思って。

──だから1週間前のリリースなんですね。

そう。さらに曲名とかはわかってるし、やろうと思えば、気合い入ってるやつは1週間あれば自分なりの「SPACE」を完成させることもできるんです。自分でラップしてYouTubeにアップするみたいな。あと写真家の人だったらタイトル見て音を聴いて、それに合う写真を15枚撮ってアップするとか、映像作る人はこれに15個短い映像つけるとかでもいいと思うし。なんかいろんな広がりが出るんじゃないかなって期待しています。もちろん聴いて楽しんでもらうだけでもいいし。

──価格設定も面白いですよね。

あれはスタッフ(の発案)ですよ。品番とか、全部908にしたっていうのを自慢げに言ってくるっていう(笑)。

──ラップが入ってる盤よりインストのほうが908円安いという。

KREVAがいなくてスペースが空いてるぶんね。でもまあそうやってスタッフも楽しんでやってくれてるのはありがたいです。今回はアートワークとかもすごくいい感じになったから早く届けたいですね。

ほかのアーティストとは競技が違う

──ところで今回のリリックはレペゼン感がだいぶ強いですよね。

そうですね(笑)。

──改めてここで決意表明をしようという気持ちもありました?

なんか自分にしかできないことをやろうって考えてたら、結果“俺のこと言う”っていう感じになってたんですよ。本当はむしろそういうこと言わないほうがいいかなって思うんですけど。自分がヒップホップでナンバーワンだとか、もうそういうことじゃないなって。

──そういうことじゃない?

いや、もう競技が違うのかなと思って。ここにある曲の面白さって、自分でトラック作って自分で歌詞書いて自分で録って、自分で声の位置だとか音の鳴り方とかまで決めてるからこそできてるものだと思うんです。そこまでコントロールできる人ってほかにいないし、それを同じものとして並べて語るのもね。全部やってるから偉いとかそういうことでもないんだけど、まあ俺は俺っていうか。

──ますます孤高の存在になりつつありますね。

若干寂しいんですけどね(笑)。でも例えば洋服作る人でも、ブランド自体をやってる人もいれば、パタンナーでナンバーワンの人。デザイナーでナンバーワンの人、縫製でナンバーワンの人がいて。でも俺は工場動かすとこまで全部やるから。だから同じフィールドで競い合うこと自体が違うのかなって気がしてるんですよね。

──じゃあ単なるナンバーワンじゃなくて……。

いや、もちろん俺がナンバーワンだろっていうのも思いますけどね(笑)。でもそれを「THE SHOW」みたいなトラックでカッコつけて言うんじゃなくて、「ういっす」みたいにちょっと笑いながら言ってく感じのほうが。

──「ういっす」感はありますね、今回確かに。

「みんなこういうのやりたがるけど、でもできないですよね?(笑)」っていう感じ。自信はあるから、そこを無理にアピールしなくてもいいかなって。聴けばわかると思うから、うん。

スキマと抜けを意識した

──このアルバムを聴いて改めて思ったんですが、KREVAさんって以前はもっとシリアスなリリックが多かったですよね。

そうそう、なんかちょっと攻撃的だったかも。

──今回は端々にユーモアを感じます。

まあね、今まで通りやればもっとカッコいい方向にもいけたと思うんですけど、それよりは、例えばちょっとなんか変なセリフ入れるとか変な声出すとか(笑)。抜けみたいなのは意識して作りました。まあ余裕っていうんですかね、うん。

──肩の力が抜けてるせいか何回でも繰り返し聴きたくなるんですよね、このアルバム。

それはあれじゃないですか。いわゆる傑作っていうやつじゃないですか(笑)。

──そう思います(笑)。

でもそこはすごく意識してたんですよ。インタールードも作ったし、歌の中にもいっぱいスキマを入れたつもり。

──余白が多いアルバムですよね。以前はみっちり詰め込むことがKREVAさんのサービス精神だったのに。

うん、昔はこんなの絶対できなかったですよ。やっぱりカッコいいと思われたかったんだと思うし。昔だったら「王将の休日」みたいのも絶対できなかったしね。「ニッ」て笑って餃子食べてるのとか。(参照:KREVA×餃子の王将が特別コラボ「王者セット」908円

──あれはなんなんですか? 「王将の休日」って。

俺が知りたいですよ!(笑)

──あはは(笑)。

予想以上に注目されてびっくりしてるんですけど。でもそういうこともできるようになったのはデカいですね。

ニューアルバム「SPACE」 / 2013年2月27日発売 / ポニーキャニオン
「初回限定盤」[CD+DVD] / 3300円 / PCCA-06909
「通常盤」[CD] / 2800円 / PCCA-06910
「完全限定生産盤」[CD+DVD+グッズ] / 6908円 / PCCA-06908
CD収録曲
  1. space4space 1
  2. SPACE
  3. Feel It In The Air
  4. ma cherie
  5. 王者の休日
  6. space4space 2
  7. 俺は Do It Like This
  8. 調理場
  9. 言ってなカッタカナ?
  10. OH YEAH
  11. space4space 3
  12. Space Dancer
  13. Link
  14. space4space 4
  15. Na Na Na
完全限定生産盤 / 初回限定盤DVD収録内容
  • ビデオクリップ「OH YEAH」「Na Na Na」「王者の休日」(color ver. / monochrome ver.)
  • メイキング映像「王者の休日」「SPACE」
  • トレーラー「908 FESTIVAL」
KREVA(くれば)

1976年、東京都江戸川区育ち。BY PHAR THE DOPEST、KICK THE CAN CREWでの活動を経て2004年にソロデビュー。2006年2月リリースの2ndアルバム「愛・自分博」はヒップホップソロアーティストとしては初のオリコンアルバム週間ランキング初登場1位を記録。同アルバムのリリースツアー最終日では初の東京・日本武道館公演も開催する。2011年にはヒップホップ音楽劇「最高はひとつじゃない」の音楽監督も担当。2012年9月には埼玉・さいたまスーパーアリーナで「908 FESTIVAL」と題した大型イベントを主催し大成功に収める。その確かな実力でアンダーグラウンドシーンからのリスペクトを集める一方、久保田利伸、草野マサムネ、布袋寅泰、古内東子、三浦大知、坂本美雨らメジャーなアーティストとのコラボも多数。ラッパーとしてのみならずビートメーカー、リミキサー、プロデューサーとしても内外から高い評価を受けている。2013年2月に6thフルアルバム「SPACE」をリリース。3月29日から全国ツアー20カ所22公演開催。