KREVAが12月18日に兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール、24日に東京・東京文化会館 大ホールで開催される「billboard classics『KREVA Premium Orchestra Concert』~produced by 武部聡志」にてオーケストラとの共演に挑む。
本公演は武部聡志プロデュースによるオーケストラコンサートシリーズの第3弾。武部の音楽監修とピアノ演奏、岩城直也の指揮と編曲、50人規模のフルオーケストラ編成によってKREVAの楽曲群を再構築するという趣旨のプレミアムなコンサートで、武部からのオファーをKREVAが快諾したことで実現に至った。初の本格的なコラボレーションとなる武部との関係性、自身初の試みとなるフルオーケストラとの共演に臨む心境を探るべく音楽ナタリーではKREVAにインタビュー。デビュー21年目に入った現在のモードも含めて語ってもらった。
取材・文 / 内田正樹撮影 / 石阪大輔
ヘアメイク / Ryoスタイリスト / 藤本大輔
衣装 / ETHOSENS、ADIEU、SHINGOKUZUNO
公演情報
billboard classics「KREVA Premium Orchestra Concert」~produced by 武部聡志
- 2025年12月18日(木)兵庫県 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
OPEN 18:15 / START 19:00 - 2025年12月24日(水)東京都 東京文化会館 大ホール
OPEN 18:15 / START 19:00
KREVAは武部チルドレンだった
──今回のライブは武部聡志さんのプロデュースによるオーケストラコンサートシリーズの一環ですが、まずはKREVAさんと武部さんの関係性について教えていただけますか?
最初にご一緒したのは2023年の日比谷野音100周年記念事業というイベントのオープニングセレモニーでした。正直、俺、そのときはまだ武部さんがどんなキャリアの方かよく知らなくて。楽屋で亀田誠治さんが武部さんに対して敬語で話していたから、心の中で、「これはおそらく偉い人だぞ?」と(笑)。
──本当にご存知なかったんですね。
はい。そのセレモニーでは、中高生が合唱する一青窈さんの「ハナミズキ」に俺がラップを入れたんですが、そもそも「ハナミズキ」の編曲を手がけたのが武部さんだと知って、自分が知っている音楽と武部さんが初めてつながった。その後、テレビ番組で短い時間の共演がありつつ、今年の2月、武部さんがご自身のラジオ番組に俺をゲストで呼んでくださったんです。その出演にあたって自分なりに武部ワークスを調べて番組でちゃんとお話しをしてみたら、自分が知っている数々の楽曲のあれにもそれにも武部さんが関わられていたということが改めてわかって。
──何せこれまで作曲・編曲・プロデュースと数え切れないほどの楽曲に関わってこられた方ですからね。
中でも初期の久保田利伸さんは自分も夢中になって聴いていた時期があったから、「なんだ、俺、武部チルドレンだったんじゃん」と、ようやく気付かされた感じでしたね。先日、セットリストを決める会議の場で、ちょっとバカなフリをして「武部さんって、今まで何曲くらい関わってきたんですか?」と聞いてみたら「2000曲を超えたあたりからはさすがにもう数えなくなった」とおっしゃっていました(笑)。
──武部さんがKREVAさんにオファーした動機は主に2つあったと聞いています。1つは、KREVAというアーティストが、ある意味オーケストレーションとは縁遠い、ラップというジャンルに属する存在だったから。もう1つは、シンプルに武部さん自身がKREVAのファンだから、だそうです。
それを聞いて、とてもうれしくて「やります」と即決でお返事をしました。武部さんとがっつりご一緒できて、しかもフルオーケストラと一緒にラップするなんてこれまで一度もなかったし、おそらくこの先もなかなかないでしょうから。
──先ほど「セットリストを決める会議」というお話がありましたが、どんな内容に?
みんなで話し合って決めました。もちろん自分の曲は自分が一番わかっていると思うので、「この場面にはこういう曲が必要かな」とか、「この場面ならこの曲では?」という提案はしましたけど。武部さんから「こういうのやろうよ」みたいなアイデアも出てきたし、武部さんが手がけた曲と俺の曲を合わせるにはどうしたらいいのか、ということもみんなで話し合って。
──ということは、KREVAナンバー以外に、武部さんが関わってきた他アーティストの楽曲も聴けるかもしれない?
かもしれないですね(笑)。武部さんからは“プロデュースします”という堅苦しさではなく、率先して「楽しもう」とされているのが伝わってくるのもうれしいですね。リハーサルを経て多少は変わるかもしれないけど、自分1人で考えるセトリではないというのも、いつもの自分のライブと大きく違うポイントだと思います。それでいて武部さんプロデュースだから、“クリスマスらしさ”の演出とか、俺1人だったら絶対やっていない感じもあって。俺のファンにとっては、間違いなく、あらゆる意味で普段のライブとは異なるステージだと感じてもらえるはずです。
KREVA、泣かないように気を付ける
──改めて、制作フローをご一緒された武部さんの印象は?
スムーズに進まないことは何ひとつとしてないんだけど、ご本人への印象というよりも、いつも近くにマネージャーさんがいらして、「それは何月何日の何時から何時、これは何月何日の何時から何時までだったらいけます!」という感じだったので、マジで年中お忙しいんだなと(笑)。でも、そんなふうに、常に誰かしらの曲、何かしらの曲を抱えている中で、何かを感じてKREVAの名前を共演者として挙げていただけたんですから、本当にありがたい限りですね。
──兵庫公演は岩城直也さん率いるNaoya Iwaki Pops Orchestra×大阪交響楽団、東京公演はNaoya Iwaki Pops Orchestraとの共演です。アレンジはどのように詰めていかれるのでしょうか?
ちょうど今さっき、編曲をしてくれる直也からデモが届いたので、それをベースにしてやりとりを重ねていこうかと。とにかく武部さんも直也もマジで激忙しそうなんだけど、リハーサルを何度か重ねながら詰めていく予定です。もちろんフルオーケストラだし、クラシック的な要素も多少は入ってくると思うけど、KREVAの楽曲がクラシックの中に取り込まれるということではなく、あくまでクラシックを1つの“素材”として扱わせてもらうことになると思います。まあ、武部さんだし直也だし、正直、何も心配はしていません。どんなアレンジが来ても、「俺はラップするだけ」と構えていたんですが……さっき直也からのデモを聴いたら、これ、下手すると俺自身がけっこう感動しちゃいそうだなって(笑)。
──おお。それは興味深い。
「マジで泣かないように気を付けなきゃな」って思いましたね。お客さんに届けるのが大前提ではありながらも、さっきの話の繰り返しになるけど、やっぱり俺が一番俺の曲を知っているからこそ、「こうなるのか」という変化も感動も、誰よりも俺が一番強く感じられるわけなので。
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生音を聴いてやりたいけど……

