小柳ゆき全音源サブスク解禁記念 スタイルは違えど相性抜群!デーモン閣下と再びコラボレーション 小柳ゆきの歌の魅力を紐解くインタビュー

自他共に認める声の相性のよさ

──「SPHERE-feat.デーモン閣下-」は、お二方の声のぶつかり合いと融合が本当に素晴らしくて。キャリアも音楽的なルーツも違いますが、声の相性はよいですよね。

左からデーモン閣下、小柳ゆき。

デーモン閣下 うん、吾輩もそう思う。

小柳 閣下のおかげですね。いつも寄り沿いながら歌ってくださるので。

デーモン閣下 声質の相性もいいんだろうね。どんなに歌がうまい人でも、声が合わないときは合わないから(笑)。例えばビブラートのかけ方や平歌からサビに駆け上がっていくときのカーブの付け方だったり。グッとテンションを上げるときの歌い方も我らは似ている気がするぞ。

小柳 「SPHERE -feat.デーモン閣下-」でいうと、落ちサビの抑揚の付け方は似ているものがあったと思います。閣下が先に歌われたんですけど、それが素晴らしくて。

デーモン閣下 落ちサビから一気に高揚感が増していくところだな。あそこはゆきちゃんの歌もとても魅力的だった。すごくソフトな表情と、ガッとテンションを上げていく感じが共存していて、小柳ゆきのパブリックイメージにはない歌い方だなと。ロックシンガーとしても素晴らしいと思うぞ。

小柳 ありがとうございます!

デーモン閣下 そうだ思い出した! 一昨年吾輩がゲスト出演したゆきちゃんの20周年記念「YUKI KOYANAGI 20th Anniversary Live "DON$YOKU"」で、各ゲストがゆきちゃんにメッセージを贈ったのだが、そのとき吾輩は、「我々はテレビなどでいつもパワーのぶつかり合い『怪獣対決!』的に扱われるが、いつか貴女とソフトなデュエットをまたやってみたい」的な言葉を述べたのだ。この落ちサビ部分にはその言葉へのカタルシスを感じたな。

歌の表現の変化にファンは?

──今年4月28日に、小柳さんの全楽曲がストリーミング配信されました。「あなたのキスを数えましょう~You were mine~」をはじめ、初期のヒット曲にも再び話題が集まっています。

デーモン閣下 「あなたのキスを数えましょう」の再録Ver.(アルバム「SPHERE~球宇宙~」収録)も聴かせてもらったが、原曲とはどこが違うかな?

小柳 生楽器の音にこだわって録らせてもらいました。バンドサウンドやストリングスの音の中で歌うことで、引き出せるものがあるなと感じていたので、それを形にしたくて。

デーモン閣下 なるほど。原曲は打ち込みがメインだったのか。

小柳 そうなんです。ここ数年はオーケストラとご一緒する機会もあって、それによって歌い方も少しずつ変化してきて。20年経った今の表現で「あなたのキスを数えましょう」を歌いたかったんですよね。

──閣下ご自身も、初期の楽曲に対する歌のアプローチが変わることはありますか?

デーモン閣下 たくさんあるぞ。聖飢魔IIのデビュー(魔暦前14(1985)年)から数年のうちにリリースした楽曲にしても、本解散(魔暦元(1999)年)の段階ですでにかなり歌い方が変わっていたな。デビュー当時はディレクターに「もっとこんなふうに歌って」などと言われることもあって。吾輩としては「ちょっとイメージと違うな」と思う曲もあったので、解散前に何曲か歌い直したこともあった。ところがね、信者は長年聴いてきた音源に親しみがあるから、「前のほうがいい」などと言うんだ、あいつら(笑)。

小柳 (笑)。歌の表現、変わりますよね。

デーモン閣下

デーモン閣下 うむ。これまでに何度か再集結しているが、そのたびに「昔はここにフェイクを入れてなかったな」みたいなことがあって。ひさしぶりに歌うと何か新しいことをやりたくなるんだろうな。そういえば、最初に話した魔暦14(2012)年の吾輩のツアーのとき、ゆきちゃんの「愛情」もデュエットしたじゃない? あの曲もレコーディングした当時とは歌い方が変わってるのかな?

小柳 かなり違いますね。

デーモン閣下 あの曲を録ったときは、まだ10代でしょ? でも魔暦14(2012)年に一緒に歌ったときもゆきちゃんに10代っぽさを感じたんだよね。「あたしぃ、そんな真面目じゃないしぃ。大人たちのことなんて信じてないから」みたいな(笑)。

小柳 (笑)。それは逆に歌い続けてるうちに、そうなってきた気がしますね。

デーモン閣下 え、そうなの?

小柳 はい。最初に録ったときは、もうちょっとまろやかに歌ってたんですよ。でも歳を重ねるごとに歌い方が強くなってきて。最近はまた「カドを取ったほうがいいかな」と思ってます(笑)。

閣下驚きの「あなたのキスを数えましょう」制作秘話

──当然、「あなたのキスを数えましょう」の表現も変化してますよね?

小柳 そうですね。時期によって少しずつ違うと思います。

デーモン閣下 デビューしたときは17歳だよね?

小柳 はい。当時は当時なりに歌ってました。「あなたのキスを数えましょう」のレコーディングをしたときがちょうど失恋した直後だったんですよ。なので、そのときのリアルな感情をぶつけるように歌ってましたね。

デーモン閣下 あの曲って、失恋ソングなの?

小柳 え!? そうですよ。

デーモン閣下 「あなたのキスを数えましょう」というサビのフレーズが印象的だったから、すごくラブラブで、「今まで何回キスしたかしら」という歌かと思ってた(笑)。

小柳 初めて言われました(笑)。

デーモン閣下 それは失礼した(笑)。それにしても、失恋直後に失恋ソングのレコーディングとはすごい偶然だな。

小柳ゆき

小柳 そうなんですよ。結果的にいいテイクが録れたので、よかったですけどね。もし順調な時期にレコーディングしてたら、また違った歌になっていたと思うので。

デーモン閣下 確かに。ということは、あの曲を歌うときに想定している“あなた”は、その後、変わっていったということ?

小柳 失恋したときの感情だけを残して歌っている感じなので、“あなた”の対象は特になかったです。

デーモン閣下 なるほど。例えば演歌歌手の皆さんは、実生活とはまったく関係ない歌を涙を流しながら歌ったりするではないか。あの表現は本当にすごいし、「よくできるな」と思うんだよね。

──閣下も歌に込める感情が変化することはありますか?

デーモン閣下 その質問、初めて受けた気がするな。そうだな。あまり変わらないかもしれない。10年前、15年前に書いた歌詞も、感情表現という意味では大きく違わないというか。まあ、吾輩は恋愛ソングはほとんどないけどね(笑)。

小柳 そうですよね(笑)。

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2021年7月16日更新