音楽ナタリー Power Push - 小松未可子
みかこしはご機嫌ナナメ!? 苛立ちと闘争の「群青サバイバル」誕生の裏側
イントロのリードシンセ、たまらないですねえ
──「初回限定盤」と「通常盤」のカップリング曲「トウキョウ・ミッドスカイ」は一転。かなりスタイリッシュな仕上がりになっています。
こういうテイストの曲、大好きなんですよ。この曲のデモが届いたときは「うわー、この曲歌えるんだ。うれしいなあ」って思いました。「群青サバイバル」や「Trouble shooting」みたいに疾走感のあるロックではあるんだけど、サビに入る直前にすごくおしゃれなピアノが入ってきたり、すごく軽快で。私がリスナーだったらカラオケに行くたび歌うと思います(笑)。
──イントロのアナログライクな音色のリードシンセもしゃれてるし渋いですよね。
あれもたまらないですねえ(笑)。
──でもおっしゃる通り疾走感のあるギターロックではあるから、「群青サバイバル」とともに1枚のCDにパッケージされていると収まりがいい。詞の中の主人公があまり幸せそうじゃないところも似ているし(笑)。
あはははは(笑)。でも、作詞の國土(佳音)さんも、作曲の小山(寿)さんも、編曲の南田(健吾)さんも今回「はじめまして」の方々だったのに「もし私が書いていてもこのメロディとアレンジにはこの詞を乗せるな」っていうくらい共感できちゃって。まったく同じ言葉を使うなんて偶然はないかもしれないけど、私もサビでは「もう嫌になって そうやって 気付いて 溢れ出して」って韻を踏むだろうな、とか。自分が曲を書いたり、詞を書いたりしているときにもすごく使いたくなると思うメロディの展開や、ワードがたくさん散りばめられていたので、曲の持つ世界がスッと自分の中に入ってきたし、歌いやすかったです。
──ただ「本当に欲しかったものは…」「失うんだろうか、君さえも」というセリフがインサートされたり、ちょっと複雑でテクニカルな曲でもありますよね。
そういうドキッとするようなギミックが入っているのも楽しかったですし、今までの中でも一番なんじゃないか?っていうくらいレコーディングは早かったですね。すごく好きな曲だからずっと歌っていたかったんですけど(笑)。
これからも楽しく「はじめまして」を言い続けるのかも
──最初の話に戻ってしまうんですけど、実は今回の「群青サバイバル」は小松さんにとって2015年初めての音源なんですよね。
そうなんですよ。もう8月も終わるぞっていう時期なのに(笑)。
──でも2015年一発目としてはインパクトの強いものをガツンとドロップしましたね。ここから始まる2015年後半戦、何をしましょう?
この間の「KING SUPER LIVE」もそうですし、これから出演させていただく「Animelo Summer Live」や(参照:「アニサマ」に藍井エイル、Kalafina、てさプルん♪ら6組追加)、「きたまえ↑」(参照:アニキ、angela、みかこし、Kalafina、エイルら出演の「きたまえ↑」野外ライブ)や、すみぺとのツーマン(参照:スタチャ主催「LIVE NEXUS」スタート、初回は上坂すみれ×小松未可子)もそうなんですけど、今年は特に「はじめまして」の方々の前に立つことが多くて。その影響もあるんだと思うんですけど「いかにより多くの方に小松未可子を知ってもらうか?」はテーマの1つかな?と思っています。
──へっ!? まだアニメソングシーンで小松未可子の名前が認知されている実感はない?
「まだ皆さんに知っていただく段階だな」と思ってます。今、私の曲を聴いてくださっている皆さんが、小松未可子が音楽活動をしていることや、小松未可子の楽曲をどうやって知ったのか?というと、たいていアニメを通じてだと思うんです。「モーレツ宇宙海賊」のイメージソングだった「Black Holy」で知ってくださった方もいれば、「K」のエンディングテーマの「冷たい部屋、一人」で知った方もいらっしゃるし、今回「青春×機関銃」を観ていて「群青サバイバル」で、という方もいて。音楽活動をする小松未可子にアクセスするための入り口が皆さんバラバラなんですよ。
──しかも「モーレツ宇宙海賊」は原作がベテランの笹本祐一さんのSF小説だから、アニメ版の視聴者にもコアなSFファンは多かっただろうし、「K」や「青春×機関銃」なら……。
女性の視聴者が多いから、女の子から「『冷たい部屋、一人』好きです」って言っていただくことは多いですし。あと「終わらないメロディを歌いだしました。」については、ちょっと例外的で。あの曲がエンディングテーマだった「神さまのいない日曜日」を観て気になったという方もいる一方で「ラジオから流れてきて知りました」という方や、「アニサマ」や「リスアニ!LIVE」で歌っている私を観て知ったという方もけっこういらっしゃるし。
──曲ごとにファン層がまるで違う、と。
そうなんですよね。だから今はまだ皆さんの中にある小松未可子像がまちまち。まだ「これが小松未可子のフィールドです」みたいなものが確立されていないので「小松未可子像をしっかり作り上げて、それを皆さんに知っていただいたほうがいいのかもしれないな?」と思っています。
──でもそれって小松さんがいろんなアニメでいろんな役を演じる声優である証拠でもありますよね。今挙げたアニメのいずれにもテーマソングを提供しつつ、出演もしているわけだから。
そう言っていただけるとうれしいです(笑)。
──ただ、だからこそ難しい問題なのも事実で。売れている役者さんだからこそ「はじめまして」と言い続けなければならない。そんな矛盾を抱えているアーティストって小松さんくらいのものかもしれないですから(笑)。
あはははは(笑)。だからもしかしたら「『これが小松未可子のフィールドです』みたいなものがない」ことが私のフィールドなのかもしれないですね。役や曲をもらうたびに私の中にある引き出しを開けて、新しい小松未可子の姿を観ていただいたり、聴いていただいたり、あとは引き出しの中身を充実させるために新しいことに挑戦してみたり……そういう作業を続けていくことはすごく楽しいですし、役者冥利、アーティスト冥利に尽きることでもありますから。これからも私は楽しく「はじめまして」って言い続けるのかもしれませんね(笑)。
- ニューシングル「群青サバイバル」 / 2015年8月26日発売 / STARCHILD
- 青春盤 [CD+DVD] 1944円 / KICM-91622
- 機関銃盤 [CD] 1296円 / KICM-1622
- アニメ盤 [CD] 1296円 / KICM-91621
青春盤および機関銃盤 CD収録曲
- 群青サバイバル
[作詞:小松未可子 / 作曲・編曲:ナカムラヒロシ] - トウキョウ・ミッドスカイ
- 群青サバイバル off vocal ver
- トウキョウ・ミッドスカイ off vocal ver
アニメ盤 CD収録曲
- 群青サバイバル
[作詞:小松未可子 / 作曲・編曲:ナカムラヒロシ] - Trouble shooting
[作詞・作曲・編曲:SiN] - 群青サバイバル off vocal ver
- Trouble shooting off vocal ver
青春盤 DVD収録内容
- 「群青サバイバル」MUSIC CLIP
小松未可子「ハピこし!ライブ2015」
2015年11月7日(土)
東京都 TOKYO DOME CITY HALL
小松未可子(コマツミカコ)
1988年11月11日、三重県生まれの声優、歌手。2010年にアニメ「HEROMAN」の主人公ジョセフ・カーター・ジョーンズ役で声優としてのキャリアをスタート。2012年1月より放送のアニメ「モーレツ宇宙海賊」では主人公・加藤茉莉香の声を務め、4月には同アニメのイメージソング「Black Holy」で個人名義による歌手デビューを果たす。7月にはミニアルバム「cosmic EXPO」、11月7日に2ndシングル「冷たい部屋、一人 / 夏至の果実」を、2013年2月13日には1stフルアルバム「THEE Futures」をリリース。同7月には3rdシングル「終わらないメロディーを歌いだしました。」を、12月には4thシングル「虹の約束」を発表する。またその一方で2012年、2013年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでの「Animelo Summer Live」に、2014年1月には東京・日本武道館での「リスアニ! LIVE 4 SUNDAY STAGE」に出演するなど、大規模フェスにも数多く招聘される。そして同年11月、ナカムラヒロシ(i-dep)とサイトウ“JxJx”ジュン(YOUR SONG IS GOOD)を制作陣に迎えたシングル「Latimer road」をリリース。そして2015年8月、ナカムラのスコアによるシングルにして主演アニメ「青春×機関銃」のエンディングテーマ「群青サバイバル」を発表した。