ナタリー PowerPush - 小松未可子
今、身に付けたい音と言葉の宝箱
エメラルドの丘を越えて、終わらないメロディーを歌いだしました。
──「e'tuis」編のラストに「終わらないメロディーを歌いだしました。」を持ってきた理由って?
10曲目、11曲目のタイトルをつなげると文章みたいになっているのがちょっと面白いかなと思いました。「エメラルドの丘を越えて、終わらないメロディーを歌いだしました。」って、なんかすごく忙しいことになりますよね(笑)。
──で、ホントのところは?(笑)
曲のタイトルの通り、終わりの歌であって始まりの歌でもあったので。というのも今回のアルバムの11曲目までは、「初恋」のような曲もあるんですが、基本的には明るいテイストになっていると思っています。
──そうですね。前作「THEE Futures」の収録曲のうち、小松さんが作詞したもののヒロインって、まあハッピーな恋愛をしてなかったんだけど……(参照:小松未可子「THEE Futures」インタビュー)。
あはははは(笑)。
──でも今作は「PandA」なんかはまさにそうだし、「Sky message」「Re:ing」でも「君と共に 今 飛べる 愛の鳴る方へ」(「Sky message」)、「輝く奇跡 触れたら 縦横無尽に 飛んでゆくの」(「Re:ing」)と明るい旅立ちを歌っていて、「Material」もけっこうのんびり「キミ」を待っている。
そうです。「エメラルドの丘を越えて」も気持ちのいいテンポ感の曲が欲しくて作った曲ですし。ただ、12曲目の組曲「in the suite」は少し違うんです。ラストの「I see world」という曲で、ファンの方にコーラスを手伝っていただいたおかげで、組曲全体が、すごく感動的なものに仕上がっていました。だから、その直前で組曲「e'tuis」編の物語は一旦終わらせたかった。「終わらないメロディーを歌いだしました。」は後ろ向きとか暗いというわけではないんですが「前向きではあるものの根っこには重たいテーマ」という曲なので、これを「e'tuis」編の最後に据えて、そこから先は11曲目までの「e'tuis」編と根っこは同じではあるんですが、1つの楽曲「in the suite」して聴いてもらいたかったんです。
新しいアクセサリーを付けている気分になるCDとライブ
──で、その「in the suite」なんですけど、なぜ組曲を入れようと?
CDをリリースするときは毎回何かしら新しいチャレンジをしていきたいなとは思っていて、そのことをスタッフさんにもお話していたんですけど、そしたらスタッフさんから「組曲っていうアイデアがあるんだけど」というお話をいただいて。そのときはどういう組曲になるのか、具体的なイメージが湧いていなかったので、こんなに壮大な内容になるとは思わなかったですね(笑)。
──確かに11曲目までとはちょっとトーンが違う。「endless night」というまさにほの暗い曲から始まって、最終的には「I see world」という人間賛歌にまで至ってますしね。
まさに生と死や輪廻がテーマだったんです。組曲だから起承転結のあるものにしたかったというのと、あと「suite」には"組曲"以外に"一式"、"ひとそろいのもの"という意味があって。これをテーマにするなら誰もが知っている一式のことをテーマにしたほうが、曲のタイトルやコンセプトと内容がリンクするし、聴いている人も何か引っかかってくれる、どこか心を打たれてくれるんじゃないか、と思ったんです。
──その"誰もが知っている一式"が生と死や輪廻だった?
そうですね。しかも私やスタッフさんだけじゃなくて「in the suite」全曲を作ってくださったナカムラさんも、組曲を作るという話を聞いたとき、そういうイメージが浮かんだみたいで。だから人が生まれて、人生を送って、死んで、もう一回再生する。そういう起承転結、輪廻をテーマにしようという話になったんですが、ただ、いくら歌の中とはいえ一度死んだ人を生き返らせるのは難しかったので、1日に例えてみたんです。「『endless night』という夜がやってきたので寝ました。『walking in the dark』『怪獣』という夢を見ました。そして『I see world』でまた朝を迎えました」と。あと「この4曲をアルバムの最後に置くと入れ子っぽくなるよね」という話もしていて。組曲自体はちゃんと完結しつつも、輪廻、ループするようになっていますし、アルバム全体を通して聴いたときにも、明るい「Sky message」から始まって、前向きなんだけど重くもある「終わらないメロディーを歌いだしました。」を経由して……。
──誕生や旅立ちを喜ぶ「I see world」に再びたどり着く?
はい。アルバム全体という大きなストーリーの中に、「in the suite」という小さなストーリーが入っていて、さらにその中には4つのストーリーが入っている、マトリョーシカみたいなアルバムにしてみました(笑)。
──で、7月からはこのコンセプチュアルなアルバムを引っさげて東名阪ツアーがあります。どんなライブにしましょう?
私自身、好きなアーティストさんのライブを観るたび、何か大切なものをもらって帰ってきている気がしていて。だから自分もそういうパフォーマーになりたいなあという思いがあります。客席と一体になってパフォーマンスをして、私もみんなもその瞬間を楽しむということももちろんすごく大切なことなんですが、今回のライブでは「プラスα」 を。聴いてくれる方には私の曲や詞を聴いて何か感じて、それを持ち帰ってほしいんです。生きる糧にしてほしいというと大げさすぎるんですが「小松未可子のライブに行ったら、言葉や音という指輪をもらった」と、次の日からまた新しいアクセサリーを身に付けて出かけるときのような気持ちになってもらえたらいいですよね。
- ニューアルバム「e'tuis」 / 2014年5月14日発売 / スターチャイルド
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3394円 / KICS-93051
- 通常盤 [CD] 3085円 / KICS-3051
- CD収録曲
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- Sky message
[作詞:小松未可子 / 作曲・編曲:nishi-ken] - Re:ing
[作詞:小松未可子 / 作曲・編曲:Junichi Hoshino] - 天使がいない日
[作詞:只野菜摘 / 作曲・編曲:楊慶豪] - Sail away
[作詞:atsuko / 作曲:atsuko・KATSU / 編曲:KATSU・松本祥平] - 初恋
[作詞:白倉由美 / 作曲・編曲:SiN] - 僕ら
[作詞:James Panda Jr.・TB226 / 作曲:James Panda Jr. / 編曲:矢野博康] - PandA
[作詞:小松未可子 / 作曲:James Panda Jr. / 編曲:James Panda Jr.] - ABC
[作詞・作曲・編曲:ナカムラヒロシ(i-dep)] - Material
[作詞:小松未可子 / 作曲・編曲:Junichi Hoshino] - エメラルドの丘を越えて
[作詞・作曲:小松未可子 / 編曲:小松未可子・SiN] - 終わらないメロディーを歌いだしました。
[作詞・作曲・編曲:ナカムラヒロシ(i-dep)] - in the suite
- endless night
[作詞・作曲・編曲:ナカムラヒロシ(i-dep)] - walking in the dark
[作詞・作曲・編曲:ナカムラヒロシ(i-dep)] - 怪獣
[作詞:カワムラユキ / 作曲・編曲:ナカムラヒロシ(i-dep)] - I see world
[作詞・作曲・編曲:ナカムラヒロシ(i-dep)]
- endless night
- Sky message
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 「ABC」MUSIC CLIP
- ハピこしライブ!~小松未可子生誕イベント2013~ダイジェスト
- 「虹の約束」リリースイベント@東京スカイツリータウン
小松未可子(コマツミカコ)
1988年11月11日、三重県生まれの声優、歌手。女優として活動する傍ら、2010年にアニメ「HEROMAN」の主人公ジョセフ・カーター・ジョーンズ役で声優としてのキャリアをスタート。2012年1月より放送のアニメ「モーレツ宇宙海賊」では主人公・加藤茉莉香の声を務め、4月には同アニメのイメージソング「Black Holy」で個人名義による歌手デビューを果たす。7月にはミニアルバム「cosmic EXPO」、11月7日に2ndシングル「冷たい部屋、一人 / 夏至の果実」を、2013年2月13日には1stフルアルバム「THEE Futures」をリリース。同7月には3rdシングル「終わらないメロディーを歌いだしました。」を、12月には4thシングル「虹の約束」を発表する。またその一方で2012年、2013年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでの「Animelo Summer Live」に、2014年1月には東京・日本武道館での「リスアニ! LIVE 4 SUNDAY STAGE」に出演するなど、大規模フェスにも数多く招聘される。そして同年2月、自身が主演を務める劇場アニメ「モーレツ宇宙海賊 ABYSS OF HYPERSPACE -亜空の深淵」のイメージソング「Sail away」をリリース。同5月には2ndフルアルバム「e'tuis」を発表した。