ナタリー PowerPush - KNOCK OUT MONKEY

“神戸の暴れ猿”襲来! 今を詰め込んだ「reality & liberty」

「この4人で音を鳴らす」がバンドの始まり

──最初からラウド系の音楽をやろうと思ってたわけではない、と。

w-shun そうですね。「こういう音楽をやりたい」ではなくて、「この4人で音を鳴らす」というところから始まってるから。音楽性も人間性もバラバラだから、最初は「ホンマに大丈夫かな?」って心配してたんです。収拾がつかなくなるんじゃないかって……。でも、このメンバーとバンドを組んだのは間違いじゃなかったですね。曲作りとかもわりとその場の雰囲気でやってるというか、「こんなのがやりたい」っていう漠然としたアイデアを放り込んで、みんなで膨らませていく感じなんですよ。全員が違う音楽を聴いてきたから、例えばギターに関しても、まったく予想しないフレーズが飛び込んでくるんですけど、逆にそれが面白いというか。ゼロの状態から全員で作ったほうが、曲に対する思い入れも強くなると思うし。音を削ぎ落としていく作業はちょっと大変なんですけどね。4人とも詰め込み過ぎる傾向があるんで(笑)。

──どの曲にもぶっ飛んだアイデアが反映されてますからね。間奏でいきなりジャズっぽいフレーズが出てきたり。

dEnkA そうですね。

亜太 それも全部スタジオで決めてるんです。「ここはジャズで」とか「スラップやって」とか言われながら(笑)。そもそも家でベース弾くのが大嫌いなんで。ベースだけ弾いてても楽しくないじゃないですか。

──じっくり時間をかけて考えるというより、その場の直感でアレンジしていく?

亜太 歌のメロディに向き合って、「こういう感じかな」って浮かんできたフレーズをそのまま弾くっていう。それだけなんですよ、ホントに。こういうジャンルに対する知識もないですからね。RIZEやDragon Ashは好きで聴いてたけど、実際にやり始めたのはこのバンドを組んでからなんで。

ナオミチ 全員で何回も演奏しながら、「ここは違う」とか「もっと派手に」みたいなことを言い合うんですよ。そのうちに自分を追い込むようなフレーズがどんどん加わって。

w-shun 最後はヒーヒー言ってます(笑)。

とにかくライブやって不安を払拭した

──結成当初の活動はやっぱりライブが中心?

w-shun はい。街中でライブやったりしてたんですよ。三宮の駅前に公園があるんですけど、そこで音を出して。僕らだけじゃなくて、ほかのバンドもやってたんです。まあ、一番人を集めてたのはウチですけどね。よく考えてみたら、ただ音がデカかっただけかもしれないけど(笑)。

dEnkA そうやな。

ナオミチ 2曲目のイントロで警察が来て、演奏止められたり(笑)。

w-shun ライブハウスにも出てたんですけどね、もちろん。神戸はかなりライブハウスの数が多いんですけど、「1つのハコに出たら、ずっとそこでやる」みたいな雰囲気があったんです。俺らはそれがイヤだったから、全部のハコとちゃんと関係を持って、どこでも自主イベントをやれるような環境を作って。

──まずは地元のシーンを盛り上げたいという気持ちもあった?

dEnkA 地元で有名になったら、次は全国に広げたいっていう捉え方だった気がします。

w-shun もちろん上に行きたいっていう気持ちはあったんですけど、どういう方法を取ればいいかわからない時期もあったし。「ツアーか……。車持ってないしな」とか。

ナオミチ うん。

「SUMMER SONIC 2012」幕張公演の模様。(C)SUMMER SONIC 2012 All Rights Reserved

w-shun 回り道は多いほうでしょうね。とにかくライブの本数を増やそうと思って、弾き語りの人たちと対バンしたり、ギャルバンのイベントに突っ込んでいったり……。今となっては、そういう経験も全部ためになってると思います。声がぜんぜん出ないとか機材が壊れたとか、そんなことも当たり前のようにあったし、「あの時期を乗り越えたんだから、大丈夫」っていう自信にもつながったので。ただ、ここまで来るのが長かった(笑)。

──途中で「このまま続けていてもダメかも」って思ったことはない?

w-shun うーん……。まあ、不安はずっとありましたけどね。どこかでリミットを考えてるところもあったんだけど、それを払拭するためにさらにライブをやったり。ライブハウスの人や先輩のバンドから「おまえらならイケるよ」って背中を押してもらったのもすごく大きかったんですよね。もちろん自分らも努力してきたけど、人には恵まれてるバンドだと思います。

だったらもっと自由にやったほうがいい

──新作「reality & liberty」で初めてKNOCK OUT MONKEYの音楽に触れる人も多いと思うんですが、今回はどんなテーマで制作に臨んだんですか?

w-shun 前作(ミニアルバム「0 → Future」)はやりたいことが最初から明確で、それに沿った曲を当てはめていった感じなんですよね。でも今回はやりたいことがぜんぜん浮かんでこなかったというか、かなり煮詰まってたんですよ。ただバンドの空気は悪くなかったし、ずっとライブばっかりやってたんで、そこを信じて今のバンド感をそのまま詰め込んでみよう、と。実際、今のリアルな感情だったり、バンドが持ってる勢いがそのままパッケージされてる感覚があるんですよ、今回は。あとはもう、聴いてくれた人が色を付けてくれたらいいと思います。「この曲でテンションを上げてます」でもなんでもいいので。

──まさに「reality & liberty」ですね。バンドのリアリティと聴き手の自由な解釈が絡み合うというか。

w-shun うん、現実と自由が共存している感じだと思います。前回のツアーの経験も大きかったんですよ。「CDを聴いた上でライブに来てくれてる」という実感を初めて感じられたし、ダイブしてるヤツもいれば、サークルモッシュで踊ってるヤツもいれば、後ろで手拍子しながら楽しんでくれてる人もいて。たぶんそういうことをやりたかったんですよね、ずっと。モッシュもダイブも大好きなんですけど、「そんなのぜんぜん受け付けない」っていう人もいるわけじゃないですか。だったら、もっと自由にやったほうがいいんじゃないかなって。それぞれが好きなように盛り上がってくれるのが一番うれしいし、そういう場所をどんどん増やしていきたいんですよね。

ミニアルバム「reality & liberty」 / 2013年3月6日発売 / 1500円 / Magnifique / QCL-014
ミニアルバム「reality & liberty」
収録曲
  1. Beginning (skit)
  2. Scream & Shout
  3. Primal
  4. Blazin'
  5. Neverland
  6. ピエロの仮面
  7. TODAY
  8. Climber
KNOCK OUT MONKEY
(のっくあうともんきー)

神戸で結成されたw-shun(Vo, G)、dEnkA(G)、亜太(B)、ナオミチ(Dr)からなる4人組バンド。ラウドロック、レゲエ、ヒップホップ、メタル、エモといったさまざまなジャンルの要素を取り入れたキャッチーなサウンドと、感情むき出しに咆哮するボーカルが魅力。精力的にリリースを重ね、じわじわとロックファンの注目を集める。2012年にはアンドリューW.K.の来日公演でサポートアクトを務めたほか、「SUMMER SONIC」をはじめ数々の大型フェスに出演し、その名を広く知らしめた。2013年3月、ミニアルバム「reality & liberty」をリリース。