岸洋佑|アーティスト・岸洋佑が自分の足で歩き出すまで

私生活も仕事なんだって、意識がガラッと変わりました

──2017年にはテレビ朝日系「宇宙戦隊キュウレンジャー」に出演されました。一度はお芝居から足を洗ったのに、どうして再チャレンジしたんですか?

確かに、一度芝居をやめた昔の自分とは矛盾している行動なんですよね(笑)。ただ、当時よりも視野が広くなって「音楽を広める方法は音楽だけじゃないよね」という考えになっていたんです。それで、事務所の方には「初めてのオーディションは受からないものだから。オーディションのための練習だと思って受けてみな」と言われて。僕もダメもとで受けたら選んでいただけて。喜ぶよりも「死に物狂いでやらないとヤバいな。もしダメだったら芸能界で生きていけないぞ」という感覚でした。

──キュウレンジャーの反響はどうでした?

岸洋佑

子供たちの人格形成にも影響を与える仕事じゃないですか。そう思うと、責任を持って活動しなきゃダメだなって強く思うようになって。以前は頻繁にお酒を飲みに行ってたし、遊ぶこともあった。でも、それをしたら迷惑をかける人がたくさんいるし、何よりも子供たちやお母さん方が悲しむと思ったんです。そこから私生活も仕事なんだって、意識がガラッと変わりましたね。あとは大きなチャンスをいただけたからこそ、ちゃんと音楽も本気でアタックしなきゃいけないと思いました。

──そして今年、2018年2月からはライブハウスツアー「はじめまして、岸洋佑と申します。」で、自らバンを運転して全国15カ所を回ったと。

はい、これは自主企画として始めました。まだレコード会社が決まってない状態でしたけど、自分の力で結果を残したいと思ったんです。それで宿泊先、スタッフ、ライブハウスを押さえるまで全部1人でやって。結果、そのツアーで約3500人を動員できました。しかもそこには今までライブハウスに足を運んだことがなかったというお客さんが約6割もいて。もちろん「キュウレンジャー」で僕を好きになってくれた人たちも多くいました。俳優とアーティスト、つながってなさそうでつながっている部分がたくさんあるんだ、と勉強にもなりましたね。

25年間の完結であり、始まりの作品

──16歳から現在までを振り返っていただきましたが、新作の「走りたいわけじゃない」は、岸さんのこれまでの人生が詰まった、集大成的な作品のように感じました。

まさにそういうテーマです。人生25年って、大人からしたら短いかもしれないですけど……この作品は僕の25年間の完結であり、始まりの作品として作りました。「走りたいわけじゃない」というタイトルにした理由は、今まで“人に走らされていた人間”だったから。これからは、僕は僕で、僕の好きな人と一緒に……自分のペースで歩いていきたい。走らされるんじゃなくて、前を向いて一歩一歩前進していきたいと思ったんです。

──岸さんが作詞作曲した「僕への挑戦状」の「唄いたい唄を唄って 歩きたい道を歩く」という歌詞は、岸さんが歌うからこその重みがあると言うか。

過去に何もない人が、この歌詞を歌っていたらワガママに聞こえるかもしれないですね。それこそ16歳の僕がそうだった。実績もないのに「やりたくないことはやらない」と言ってたあの頃。過去の自分があったから、今改めて「唄いたい唄を唄って 歩きたい道を歩く」ということを、まっすぐな気持ちで……「応援してください」という思いを込めて歌える。そんな人生を歩んで来れたことはよかったと思います。もちろん、ここからなんですけどね(笑)。

──今作にはマシコさんも作詞作曲に参加されてますよね。

タツロウさんは、10代の頃の僕のダメな部分を一番知っている人で。何か言われても嘘くさく「はい!わかりました!」と口先だけで答えていたような僕に、タツロウさんは「お前、嘘くさいんだよ! 思ってることあるなら伝えろよ!」と初めて言ってくれた人なんです。僕の中ではいい子ぶることが正解だと思っていたけど、そうじゃないんだって。今は思っていることをちゃんと伝えるようになった。そこを理解したうえで「お前はこういう音楽が向いてるよ」と提供してくれたんだと思います。今までお世話になった分、いつかは僕がタツロウさんを支えられるような人間になりたいですね。

──岸さんは、自分の弱い部分についても、真摯に話してくださいますね。

昔の僕は人から嫌われる要素しかない人間でしたから。「嫌われたくない」と思う気持ちが行動や言葉に出て、それが嘘くさくて嫌われた。逆に、嫌われてもいいという勇気を持った瞬間から、人に嫌われなくなったと思います。「誰にどう思われても、自分を好きになってくれる人が1人でもいたらいい」と思ったら、自分のことを嫌う人にも優しくなれたんです。媚を売らなくなったら、周りの人に好いてもらえるようになって。そこが昔と大きく変わったかもしれないですね。

──媚を売らない言葉には、強さがありますよね。

そうですよね。取り繕った優しさって、本当に必要ないと思います。そのことがわかったからこそ、この作品が作れたんだと思います。

岸洋佑
ツアー情報
岸洋佑メジャーデビュー記念ワンマンライブ
  • 2018年12月21日(金) 東京都 LIQUIDROOM
    OPEN 18:00 / START 19:00