いろんな人たちと絡みたい気持ちになれたのは昨年のおかげ
──となると、2年目の幕張開催となる今年の「氣志團万博2025 ~関東爆音パビリオン~」を成功させることが、次の一歩につながっていくことになりそうですね。
そうなるといいなと。ただ、それも今のところ希望的観測でしかなくて、現時点で具体的には何も決まってなくて。本当だったら11月の時点で来年の発表をしたいんですけど、今はもう八方ふさがりです。だから、本当に次はZepp開催かもしれません(笑)。でもまあ、2023年に一度絶望を経験していますから……あの頃は自分も喉の手術をしたのもありましたし、腐りきって本当にふさぎ込んでいたけど、今はダメなものはダメなんだし、だったら違うことをやろう、みたいな気持ちになれています。以前は「氣志團万博」が自分のライフワークみたいな気持ちだったし、「これをやめたら終わってしまう」みたいな、勝手に自分たちの生命線のように思い込んでいたんですけど、1年休んだことで少し気持ちが軽くなった。また、仕切り直したことで新たな方たちとの出会いもあり、そこでしか生まれないものもたくさんありましたし、同時にずっと支えてくれていたみんなのことも恋しくもなりました。もっといろんな人たちと出会いたいし、いろんな人たちと絡みたいという気持ちになれたのは昨年の「氣志團万博」のおかげです。
──おっしゃるように、昨年のラインナップは従来の仲間たちだけでなく、「氣志團万博」に新たな彩りを与えてくれたアーティストも多かったです。今年もASKAさんや20th Century、ジュースごくごく倶楽部といった初出場組に加え、過去の出演時に大反響だったNEWSや聖飢魔II、BUCK∞TICK、唯一の皆勤賞となるももいろクローバーZなど、「氣志團万博」でなければあり得ない独自のラインナップとなっています。
僕自身、ご縁を大事にしたいなというのがあって。子供の頃の僕たちにとってのロマンって、アントニオ猪木から始まった異種格闘技だったんですけど、それは少年マンガの世界でも一緒だったじゃないですか。自分も「あれとあれが戦ったらどうなるんだろう?」「いや、絶対これが強いと思うよ」みたいなことにロマンを感じて育ってきた人間ですし、そもそも氣志團というバンド自体がそういう存在なわけで。自分たちも「あのバンドとあのバンドが対バンしたら面白いだろうな」とか思っていたけど、気付いたら時代も変わり、そういうバラエティに富んだものが最も行きたくないイベントになってしまった。「バラエティに富んだ」というのは、すごく素敵な表現だったはずなんですけど、ともすれば「まとまりがない」と言われてしまうようになって。
──細分化されたジャンルの中で何かを好きになるかがスタンダードになり、同じジャンルの人たちが集まるイベントがどんどん支持される時代に変わっていったと。
それって要は、北海道旅行に行ったときにみんなが長蛇の列に並ぶ、「あの海鮮丼のお店、ウニとイクラとエビとホタテとマグロが載ってるよ、最高!」みたいな感じじゃないですか。それに対して、「氣志團万博」はもっとビュッフェやバイキング感覚。僕らは「あれもこれも食べたい!」という世代ですけど、今はもう「サラダとヨーグルトとオレンジジュースだけでいいんだけど」みたいなのが主流なんですよね。ただ、そこに自分がどうしても順応できなくて。そもそも自分たち自身がもともとあったシーンの中から生まれたバンドじゃないので、結局はバイキングに戻っちゃうんですよ。例えば、横浜銀蝿とクレイジーケンバンドとクールスを集めてイベントをやったところで、それぞれのお客さんからしても「いや、違うから」という話になりますし。
──門外漢には見た目の雰囲気や髪型に共通点を見出すかもしれないけど、だからといって同じ枠に収めるのも違うし。
やっぱり原点に立ち戻ると、「氣志團万博」って14歳の自分に見せたいものが根底にあるんですよ。あの頃は「宝島」に夢中で、インディーズロックとかメインカルチャーになれない音楽ばかりが取り上げられる中に、ときどき桑田佳祐さんが載るだけでサブカルファンが怒るとか、売れてからのTHE BLUE HEARTSは載せちゃいけないとか、そういうヘンテコなものでしたし。でもそのおかげで雑食に育ったし「カッコよければなんでもいい」という考えを持てるようにもなった。あれはあれですごく狭い世界だったけど、自分にとってはすごく広い世界に見えたんですよね。
「氣志團万博」は音楽界の「すたみな太郎」
──僕も世代的に翔さん側に近いので、ビュッフェやバイキング感覚、「宝島」というキーワードはすごくしっくりくるものがあります。
ただね、成功しているフェスを研究すると、7割5分ぐらいは基本的にレギュラーのアーティストがいて、2割5分ぐらいを毎年ちょっとずつ変えているんですね。あとは、若い層をどんどん入れていくことによって、そのイベントが古くならないようにうまくやっている。だから、僕らの世代が今やベテランと呼ばれるようになってしまい、ベテランより上はレジェンド化しているわけです。僕ら1997年組は再来年に30周年を迎えるわけですけど、今も残っているバンドがこんなにも多い世代は歴代初めてじゃないかなってぐらい。ただ、この世代の中で今も全国のフェスでレギュラー的に出ているバンドって、マキシマム ザ ホルモンとか10-FEETとかMONGOL800とか、本当にわずかなんですよ。世代を感じさせなくて、若い人たちがずっと入れ替わり立ち替わり入ってくるし、先輩とも後輩ともしっかりやれてサビつかない。そういうバンドたちによって、おじさん世代と若者世代の分断を少しでもなくせないかなと。そこに我々が存在する意義があり、「日本の音楽は面白いんだぞ!」ということを知らしめる役割が課せられているんじゃないかなという気がしているんです。
──なるほど。
日本の音楽チャートって、海外と比べたら特殊じゃないですか。海外で流行っている音楽がランクインしないぐらい偏っているし、それに対して「日本の音楽シーンはヤバい」とおっしゃる専門家の方もいる。でも、僕はむしろ自分たちがさらに特殊な集まりの中で活動していたので、そういう特殊な環境を勝手に誇らしく思っていて。先ほど「氣志團万博」は独自のラインナップだと言ってくださいましたけど、確かにその通りなんですよ。このガラパゴスな感じは日本の音楽チャートと重なるところがありますし、僕はそういうところこそ日本ならではの強みだと思っていて。だから、最終的には……「氣志團万博」という名前じゃなくてもいいけど、このパッケージで世界を回りたいんですよ。
──それくらい胸を張って、世界にも持っていきたい「日本ならではの文化」というわけですね。そんなフェスを日本で体験できることは幸せこのうえないですが、それでもまだ足を運ぶことに躊躇している音楽ファンも少なくないと思うんです。そんな参加を迷っている人たちへ、翔さんからメッセージをいただけますか。
とにかくね……「氣志團万博」は音楽界の「すたみな太郎」なので。皆さん、自分の好きなものって決まっていると思うけど、うちは寿司も焼肉も、どれをとってもおいしいですし、焼きそばも食べられますし、なんならアイスクリームも食べ放題(笑)。自分でソフトクリームを作れますし、ラーメン、そば、うどんはセルフにはなりますが、全部楽しめる。自分の愛しているものを腹いっぱい食べたい、大好きなものだけで満足したいという気持ちもわかるんですけど、「氣志團万博」はおせっかいからスタートしていて。何しろ僕は前述の通り雑食で育ってきたもので、大人になって何が幸せかというと「好きなものがやたら多いこと」なんですよ。僕のメンタルがいつも健康なのは、好きなもののことで忙しいからであって、ネガティブになる暇なんてない。本当に楽しいことばかりで生きていられるし、好き嫌いがなく育ったものですからストレスも全然ないんです。これからの生き方の提唱として、一度お試しに来てもらえないかなと思っています。「いやいや、そもそも好きじゃないし」っていう方もいらっしゃると思いますが、でも人生に1日や2日ぐらい自分を試してみる日があってもいいんじゃないでしょうか。僕は今年の最初に、「未知との遭遇」という目標を掲げたんですけど、人って歳をとればとるほど知らないものに触れることがおっかなくなってくるし、どんどん億劫になってくるんですよね。もしよかったら、あなたの1日2日を僕に預けてみませんか? とにかく俺の友達はみんな、超強いし超カッコいいし超かわいいし。みんなを幸せにしかしないから、安心して来てよと言いたいですね。
──中には「大好きなアーティストのワンマンライブになら1万円払えるけど、興味のないアーティストが複数いるフェスに同じ金額を払うのはちょっと」という方もいるかもしれません。
それはもうおっしゃる通りなんですけど、こればかりは説明してもわからないと思うから、「とにかく来て。大丈夫だから!」と。この一番曖昧な「大丈夫」という言葉、僕も使われるのも使うのも好きじゃないですけど、「氣志團万博」においてはこの言葉しか言いようがないんです。大丈夫、あんたの時間、あんたのお金は絶対に無駄にしないと約束できます。それぐらい自信のあるイベントです。この世の中で今一番信頼できるのはネットではない。君のタイムラインに流れてはこないところに幸せがいくらでもあるので、どうかその目で観て、その耳で聴いて、その肌で感じに来てください。バーチャルでは体験できないすごいものがそこにあります。あいにきて I・NEED・YOU!、君がいないと始まらないのが「氣志團万博」だとお伝えさせていただきます。絶対に後悔させないので、幕張で待ってます!
公演情報
サントリー オールフリー presents 氣志團万博2025 ~関東爆音パビリオン~ powered by Epson
2025年11月15日(土)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
OPEN 9:00 / START 10:30
<出演者>
ASKA / 打首獄門同好会 / 岡崎体育 / OKAMOTO'S / 氣志團 / クリープハイプ / 聖飢魔II / 7ORDER / 10-FEET / 20th Century / ももいろクローバーZ / ヤングスキニー / ROTTENGRAFFTY
OPENING CEREMONY ACT:細川たかし
WELCOME ACT:柳家睦&THE RATBONES
2025年11月16日(日)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
OPEN 9:00 / START 10:30
<出演者>
アイナ・ジ・エンド / 氣志團 / 君島大空 合奏形態 / ゴールデンボンバー / ジュースごくごく倶楽部 / 私立恵比寿中学 / -真天地開闢集団-ジグザグ / 超ときめき♡宣伝部 / Dragon Ash / NEWS / BUCK∞TICK / RIP SLYME / レキシ
OPENING CEREMONY ACT:秋山竜次(ロバート)
WELCOME ACT:DJダイノジ
プロフィール
氣志團(キシダン)
1997年に千葉県木更津で結成。メンバーは綾小路 翔(Vo)、早乙女 光(Dance & Scream)、西園寺 瞳(G)、星グランマニエ(G)、白鳥松竹梅(B)、白鳥雪之丞(Dr / 2014年3月より活動休止中)の6名。“ヤンクロック”をキーワードに、学ランにリーゼントというスタイルでのパフォーマンスが話題を集め、2001年12月にVHSビデオで“メイジャーデビュー”を果たす。「One Night Carnival」「スウィンギン・ニッポン」などヒット曲を連発し、2004年には東京・東京ドームでのワンマンライブも開催。2012年からは地元千葉県にて大規模な野外イベント「氣志團万博」を主催し、ほかのフェスとは一線を画するラインナップで多くの音楽ファンの支持を集めている。2025年の「氣志團万博」は11月15日と16日に千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホールで開催。これに先駆け、11月12日にはDMM TVのドラマ「「ドンケツ」の主題歌「汚れなきクソ野郎ども」を約5年半ぶりのCDシングルとしてリリースする。