音楽ナタリー Power Push - 筋肉少女帯

“再結成バンド”として過ごした10年間を振り返る

筋肉少女帯がベストアルバム「再結成10周年パーフェクトベスト+2」とシングル「人から箱男(筋少×カラオケDAMコラボ曲)」を同時リリースした。ベストアルバムにはシングル「週替わりの奇跡の神話」「混ぜるな危険」や、メジャーデビュー25周年を記念して作られた「中2病の神ドロシー ~筋肉少女帯メジャーデビュー25th記念曲」、大槻ケンヂが歌詞を提供したももいろクローバーZ「労働讃歌」のセルフカバー、そして新曲「めでてえな?(バンド再結成10周年の歌)」「パノラマ島失敗談」などを収録。2枚組のCDに、再結成後の10年における充実した活動がしっかりと刻み込まれている。

今回も音楽ナタリーでは、メンバー全員にインタビューを実施。再結成後の活動、バンドに対する意識の変化、今後のビジョンなどについて語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

筋少はKissとAerosmithの再結成を両方やれた

──ベストアルバム「再結成10周年パーフェクトベスト+2」がリリースされます。2006年の再結成から10年経ちましたが、この10年をどんなふうに捉えてますか?

橘高文彦(G) 「アッという間だったな」と思ってたんですけど、今回のベスト、ヒストリーの映像(限定盤付属DVD「再結成10周年 Anniversary Movie」)の編集をしていて「やっぱり長かったな」と感じましたね。

──再結成以降、オリジナルアルバムを5作発表してますからね。

橘高 我々としてはセルフカバー(「公式セルフカバーベスト 4半世紀」)も新作のつもりで作っていたから、6枚アルバムを作った感じですね。

大槻ケンヂ(Vo) 濃密でしたね、すごく。再結成以降は、以前の活動とはまた違った面白さがあったんです。以前は1980年代のバンドブームというものがあって、それを発端として広がっていったんですよね。そのブームの収束の中で、「どうサバイブしていくか?」という部分もあったし。筋肉少女帯は2006年に再結成したわけですが、当初は若いバンドを取り巻く状況もよくわかっていなかったんですよ。いろんなロックのフェスティバル、あるいはアニメのフェスティバルに再結成してから参加させてもらう中で、「そうか、今時代はこうなっているのか!」と理解していったというか。

本城聡章(G) うん。

大槻ケンヂ(Vo)

大槻 意識的なところでいうと、若いときは不安もあったんですよね。「この先、どうなってしまうんだろう?」という心配もあったし、同世代の男の子や女の子にワーキャー言われても「自分はそれほどの人間ではないはずなのに、どうしてこんなに騒がれるんだろう?」なんて思ったり。今はメンバーも大人だし、「お客さんは祝祭の日みたいなものを求めていて、そのために我々は皆さんを盛り上げに来ている仕事をやっているのだ」という理解と責任感もありますからね。それに対して、皆さんも応えてくれますし。

橘高 そうだね。

大槻 再結成後もいろんなことがあったけど、楽しかったという印象のほうが強いんです。以前も楽しかったんだけど、今は若さゆえの恍惚と不安みたいなものがなくなったし。

内田雄一郎(B) 「恍惚と不安がなくなったうえで、いかにロックをやるか?」ということですよね。「若くないのにロックしていいの?」っていう(笑)。そこで模索していた部分はあったかもしれないです。もちろん、がんばっている先輩のバンドも多いんですけどね。

大槻 そうだね。洋邦問わず、50歳過ぎても続いているバンドはたくさんあるので。

橘高 これは再結成したときにも話していたんですけど、我々が影響を受けてきた洋楽のバンドの中で言うと、KissとAerosmithが再結成のひな型だったんです。Kissの再結成の方法論は「みんなが大好きだった、あの頃のKissを見せる」ということですよね。つまり「ファンをタイムマシンに乗せるようにして、1977年のKissをもう一度見せる」っていう明確なコンセプトがあった。俺自身、メイクしたKissを初めて観たのはリユニオン後の東京ドーム公演だったし、狂喜乱舞しましたからね。一方のAerosmithは、新しいプロデューサーと一緒に新作を作って現在のシーンで勝負したわけですよ、まるで新人バンドのように。批判覚悟で言うと俺は再結成後のAerosmithのほうが好きなんだけど(笑)、それはともかく、筋少の場合はその両方をやってきたと思うんですよね。

大槻 あーそうだね。

橘高 最初にやった中野サンプラザのライブ(2006年12月に行われた復活ライブ)はまさしくKissの方法論というか、当時の衣装を着て、当時のパフォーマンスを見せることによって「本物の筋肉少女帯が目の前にいる!」というお祭り騒ぎを演出したわけです。その後の3年間で、アルバムの再発やベストのリリースを含め、再結成したバンドがやるべきことはすべてやれたんですよね、幸せなことに。その後“新曲を作って、新しい歴史を続けていく”という方向性が固まったからこそ、再結成から10年目までたどり着けたんだと思いますね。

CDが売れなくなったと同時にロックが社会に根付いた

──今回のベストに収録されている新曲「めでてえな?(バンド再結成10周年の歌)」には「予想と違った こんなはずじゃ もう10年だと 再結成から」という歌詞がありますね。

大槻 そうですね……。筋少をやってなかった時期、僕は音楽活動も含めて人生に疲弊していたんですね(笑)。それで当時の事務所の社長に「50歳になったらとりあえずまず音楽をやめて、リタイアします」って言ったことがあるんだけど、その社長がひと言「ヒマだよー」って。

内田本城橘高 ハハハハハ!(笑)

大槻 そういう生き方をしようと思ってたの、ホントに。それが「50歳過ぎても、毎年のようにリリースしてすごいですね」なんて言われるようになって。バンドそれぞれのやり方があると思うんですけど、筋少は以前からリリースの多いバンドだったし、それはオーバー50になっても変わらないのかなって気はしてます。

内田 まだやれるのにリタイアする人っているのかな?

大槻 ハリウッドの女優さんとかは、ギャラが高騰してオファーが減って、結果的にリタイアしているように見えたりするよね。ミュージシャンでもけっこういるんじゃない?

橘高 バンドが大きくなりすぎて、動けなくなることはあるよね。

大槻 あるね、確かに。

橘高 我々も90年代にそれと似たことを経験しましたからね。スタッフの数を含めて活動の規模が大きくなって。

内田 楽器の数も増えて、どんどん大げさになってね。

橘高 そうそう。再結成後は身の丈を把握してますけどね(笑)。

大槻 80年代、90年代のバンドは「どうやってデカくするか」という経営論だったわけですよ。

橘高 それが正義だったからね。

大槻 うん。以前は筋少も巨大化を目指してたんだけど、そこで身動きが取れなくなってきて、さらにほかのバンドもどんどん崩壊していって「どうしよう」なんて思っているうちに、パンクやスカコアの若いやつらが薄利多売というか「インディーズで原盤を自分たちで持って、ライブでTシャツを売って」という新しい経営論でバンドを動かし始めたわけです。時代が変わったんですよね、そこで。

橘高 再結成後の活動はそこが違うよね。CDも売れない時代になったし。

大槻 CDが売れなくなったと同時にロックが社会に根付いたと思うんですよ。そのときに「今までの殿様商売を目指す巨大化は間違ってる」ということに気付いたんじゃないかな、洋邦問わず。バンドによっては大きいビジネスを続ける方法もあるんだろうけど、それよりも自営でパン屋さんをやるようなスタイルで着実にやったほうがいいっていう。そうやって音楽を届けることが大事ですよね、今は。

橘高 そのためにも、売り物のパンはしっかりコストをかけて作ってますけどね。

ベストアルバム「再結成10周年パーフェクトベスト+2」 / 2016年10月26日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
初回限定盤 [CD2枚組+DVD] / 4838円 / TKCA-74428
通常盤 [CD2枚組] / 3218円 / TKCA-74429
DISC 1
  1. めでてえな?(バンド再結成10周年の歌)
  2. 仲直りのテーマ
  3. トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く
  4. ワインライダー・フォーエバー(筋少Ver.)
  5. 枕投げ営業
  6. おわかりいただけただろうか(Vo.橘高Ver.)
  7. 孤島の鬼
  8. ムツオさん
  9. 週替わりの奇跡の神話
  10. ゾロ目
  11. ツアーファイナル
DISC 2
  1. パノラマ島失敗談
  2. 釈迦
  3. アウェー イン ザ ライフ
  4. 機械
  5. 混ぜるな危険
  6. 労働讃歌
  7. 蓮華畑
  8. 恋の蜜蜂飛行
  9. 地獄のアロハ
  10. 中2病の神ドロシー ~筋肉少女帯メジャーデビュー25th記念曲
  11. 新人バンドのテーマ
初回限定盤DVD収録内容
  • 再結成10周年 Anniversary Movie
ニューシングル「人から箱男(筋少×カラオケDAMコラボ曲)」 / 2016年10月26日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
初回限定盤 [CD+DVD] / 2970円 / TKCA-74401
通常盤 [CD] / 1296円 / TKCA-74402
CD収録曲
  1. 人から箱男(筋少×カラオケDAMコラボ曲)
  2. 週替わりの奇跡の神話('16 Live Version)
  3. マタンゴ('16 Live Version)
  4. 人から箱男(筋少×カラオケDAMコラボ曲)[Short Version]
  5. 人から箱男(筋少×カラオケDAMコラボ曲)[Original Karaoke]
  6. 人から箱男(筋少×カラオケDAMコラボ曲)[Instrumental]
初回限定盤DVD収録内容

MUSIC VIDEO

  • 人から箱男(筋少×カラオケDAMコラボ曲)

LIVE VIDEO
2016年4月23日 LIQUIDROOM 公演より

  1. モコモコボンボン(Vo.内田)
  2. LIVE HOUSE(Vo.本城)
  3. スラッシュ禅問答(Vo.橘高)
  4. 日本印度化計画(Vo.ナカジマノブ)
  5. 球体関節人形の夜(Vo.野水いおり)
  6. イワンのばか(Vo.二井原実)
  7. 日本の米(Vo.橘高、本城、内田)
  8. 航海の日
  9. 地獄のアロハ(Vo.橘高、本城、内田)
  10. 釈迦(Vo.大槻、二井原実、ナカジマノブ、野水いおり)
筋肉少女帯(キンニクショウジョタイ)
筋肉少女帯

1982年に中学の同級生だった大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)によって結成。インディーズでの活動を経て、1988年にアルバム「仏陀L」にてメジャーデビューを果たす。1989年に橘高文彦(G)と本城聡章(G)が加入し、「日本印度化計画」「これでいいのだ」「踊るダメ人間」などの名曲を発表。特に「元祖高木ブー伝説」はチャートトップ10入りを記録し、大きな話題に。大槻による不条理&幻想的な詩世界とテクニカルなメタルサウンドが好評を博すものの、1998年7月のライブをもって活動を“凍結”。各メンバーのソロ活動を経て、2006年末に大槻・内田・橘高・本城の4人で活動再開を果たす。2007年9月には約10年ぶりのオリジナルアルバム「新人」をリリース。東京・日本武道館公演や「FUJI ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といった大型イベントへの出演など、精力的なライブ活動を展開する。2015年5月には人間椅子とコラボバンド「筋肉少女帯人間椅子」でシングル「地獄のアロハ」を発表。2016年10月にはベストアルバム「再結成10周年パーフェクトベスト+2」とシングル「人から箱男(筋少×カラオケDAMコラボ曲)」を同時リリースした。