LITTLE
一生懸命を恥ずかしがるな
──そもそも今回の完全復活の告知は、6月18日に東京・TOKYO DOME CITY HALLで行われたKREVAさんのツアー 「TOTAL 908」の最終公演終了後に解禁されました。あのとき、3人が勢ぞろいしてサプライズ登場した姿は、会場で観ていて鳥肌が立ちました。
ありがとうございます。すごくいい感じであの場を使わせてもらえてうれしかったですね。でもあの日はスタッフ以外の誰にも絶対にバレちゃダメだったから、午前中からずっと雄志くん(MCU)と楽屋に潜んでいました。だからKREVAのステージも観られなくて、それは残念だったなと(笑)。
──3人はこれまでもKICKとして集まって、何度かフェスのステージに登場していましたが、LITTLEさんとしてはどのようなモチベーションで参加していたんでしょうか?
休止後の最初のステージは2008年の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」だったと思いますが、そのときは場所も特別だし、規模もデカイしということで、そのレアな1日を俺たちもお客さんも一緒に楽しむために全力で取り組んでいましたね。そこから何回かフェスに出ていくうちに、「新曲出さないんですか?」と思う人がいるのも察してはいたけど、縁やゆかりのある場所と、俺らを呼んでくれた場所には喜んで出向いていったという感じだったかな。
──3人だけでスタートしたアルバムの制作は、最後まですごくいい雰囲気で進んだと聞いています。
そうですね。1曲ごとにテーマを決めて、あまり考え過ぎずにやりました。オケから感じるものを手がかりに始めたり、「最近思うところある?」とか会話をしながら進みました。
──レコーディングを通じて、MCUさんとKREVAさんについて変わった、変わらないと感じた部分は?
うーん……変わったなあと思うこともあんまりないし、変わんないなあとわざわざ思うこともなかったと言うか(笑)。ずっと普通って感じなんですよね。以前と比べて機材が進化してプリプロを自分たちだけで進められるようになったとか時間が短縮されたとか、作業について変わったことは確かにあったんですけどね。まあ話している内容は多少は大人っぽくなってるけど、それくらいかな。
──ご自身についてはいかがですか?
もちろん歳を取ったということで言えば大人になっているんでしょうけど。ほかの媒体で「千%」の歌詞について「熱いこと言うようになった」と言われたんですけど、今回の制作にあたってここ数年でお互いに何が変わったのか?という話を3人でしてみたんですよ。テーマ作りのためにね。そうしたらそれぞれに、以前活動していた頃は二十代だったこともあって、熱い気持ちやド直球なことを歌うのが嫌だったし恥ずかしかった。今と比べたらまあイキってましたからね(笑)。でも今はある程度歌えるようになったし、その大事さもわかるようになったよね、という話になりました。もともとKREVAの歌詞なんだけど、「千%」の「一生懸命を恥ずかしがるな」という雄志くんヴァースのフレーズは、俺のソロのサビに使いたいくらいに今の気分に合うんですよ。そのぐらいいいフレーズだと思った。だから時間を経て言えるようになった思いというのはあるんでしょうね。まあ雄志くんのヴァースを俺が熱く語るのもなんだかなって感じですけど(笑)。
自分たちの出番やできることも、昔より確実にたくさんあるはず
──ひさびさな感じや取って付けたような違和感が皆無で、サウンドもチームワークも盤石さを感じるアルバムだと感じました。
3人でちゃんと話し合って決めたことと、3人がいいと思えることしかしていないからでしょうね。例えばすごく売れそうなアイデアがあったとしても、3人の中でイマイチその感覚を共有できなかったら使わない。「君がどんなに実力のあるマンガ家でも、今は野球モノしか描かせないよ?」みたいな縛りを持ち込む編集者みたいな立場の介入も設けなかったし、仮にあったとしてもまあ受け付けなかったし(笑)。フリースタイルバトルがちょっと盛り上がっているからって、別にそれっぽい感じだって1mmもないでしょ?
──確かにないですね。
それぐらい3人の中から出てきたものだけで作ることができた。俺自身がここからのKICKの色を見つけられているのかどうかはまだわからないけれど、濃密な味わいの1枚にはなったと思います。ノリがよくて聴きやすいだけじゃないので、リスナーにも濃いアルバムだと受け取ってもらえたらうれしいですね。まだ作ったばかりで俺ら3人もわかっていない真価を、もうちょっと時間が経った頃に「ああいうアルバムだったんだな」と気付けたらいいなあと思っています。
──LITTLEさんが個人的に気に入っている曲を教えてください。
「タコアゲ」かな。歌詞が乗る前のオケの段階から好きで、歌詞に乗ったらさらに好きになりましたね。それこそ当初はこの曲のテイストで再開の挨拶ができたらいいなと思っていたんです。でも正月のリリースだったらともかく真夏だったんで(笑)。
──確かにそういう意味では先行で発表された「千%」や「SummerSpot」のほうが夏に似合いますね(笑)。
そうなんですよ。「夏に正月の歌やるのって斬新じゃない?」とかよくわかんないこと言ってかなり粘ってみたんだけど(笑)。
──でもこの「タコアゲ」は最初の活動期から今回の活動再開までの間に流れた時間であり、シーンの移り変わりであり、もっと言えばそれ以前のアーリーデイズを感じさせるようないい曲ですね。
ありがとうございます。まさにそういうリリックですね。俺としては正月に友達と河川敷で遊んでいた頃のような感じがあって。あと、俺たち昔、“河川敷ラップ”とか言われていたので、それもあってこういう曲が好きなのかもしれない。
──LITTLEさんにとって今のKICKはどんな場所なんでしょうか?
どうなんだろう……去年3人で集まり出した頃から今年の初めぐらいまでは特別な場所と言うか、やっぱりグループでやるってすごくいいなあと思っていたんです。やっぱりグループならではのよさや楽しさや安心感ってたくさんあるんですよ。自分だけだったら考え過ぎて採用しなかったかもしれないけど、2人が「いいね」と言ってくれたから歌えたワードもあるし。本当に3人でプレイしながら新たなものが生まれていった。でも今はそこからさらに何も考えていない状態と言うか。逆に、KICK以外の場所のほうが特別な場所になってきたと言うか。
──つまりKICKが改めてホームになってきたということですか?
ホームっていうのもどこかに出かけてきた感じがするしなあ……うん、普通かな。普通って感じなんですよ。
──そのモードが武道館の復活祭や全国ツアーを経てどう変わるのか、変わらないのかは興味深いです。
そうですね。そこもレコーディングと同じで、3人で楽しんでプレイを重ねていけば自然と前に進んで答えが出ると思っています。KICKはわりと幅広く活動をしていた分だけ以前活動していた当時は「ヒップホップとしてどうなのか?」と言われた場面もあったけど、今はそのバラエティ感が昔以上に違和感なく受け入れられる世の中だと思うので、自分たちの出番やできることも昔より確実にたくさんあるはずだと思っています。
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MCU ソロインタビュー
- KICK THE CAN CREW「KICK!」
- 2017年8月30日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
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初回限定盤 [CD+DVD]
4320円 / VIZL-1228 -
通常盤 [CD]
3240円 / VICL-64834
- CD収録曲
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- 全員集合
- 千%
- 今もSing-along
- SummerSpot
- なんでもないDays
- 完全チェンジTHEワールド
- また戻っておいで
- また波を見てる
- I Hope You Miss Me a Little
- タコアゲ
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 千%(Music Video)
- SummerSpot(Music Video)
- 千%(Making)
- SummerSpot(Making)
ライブ情報
- KICK THE CAN CREW「復活祭」
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2017年9月7日(木)東京都 日本武道館
<出演者> KICK THE CAN CREW / いとうせいこう / 倖田來未 / 藤井隆 / RHYMESTER
- KICK THE CAN CREW CONCERT TOUR 2017
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- 2017年12月1日(金)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- 2017年12月3日(日)宮城県 チームスマイル・仙台PIT
- 2017年12月10日(日)北海道 Zepp Sapporo
- 2017年12月16日(土)愛知県 Zepp Nagoya
- 2017年12月17日(日)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2017年12月21日(木)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2017年12月24日(日)福岡県 福岡サンパレス
- KICK THE CAN CREW(キックザカンクルー)
- それぞれソロで活動していたKREVA、LITTLE、MCUが集まり1997年に結成。同年にシングル「タカオニ / カンケリ」でインディーズデビューし、2001年5月にシングル「スーパーオリジナル」でメジャーデビューを飾る。山下達郎の「クリスマス・イブ」をサンプリングした「クリスマス・イブRap」でブレイクを果たしたのち、「マルシェ」「アンバランス」「イツナロウバ」などヒットを飛ばす。2002年12月には「第53回NHK紅白歌合戦」に出場し、「マルシェ」をパフォーマンスした。人気絶頂の2004年に活動休止を発表し、それぞれソロに転向。しかしメンバー間の交流は途絶えることなく、KREVAのライブにLITTLEとMCUが参加したり、KREVAがLITTLEとMCUのユニットULをプロデュースするなど音楽活動を共にする。2014年にKICK THE CAN CREW名義で「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014」に出演。その後も不定期でKICK THE CAN CREWとしてライブを行い、2017年8月に14年ぶりのオリジナルアルバム「KICK!」を発表した。
2017年9月7日更新