ナタリー PowerPush - 川田まみ
ベスト盤&ニューシングルで魅せる過去と未来
川田まみがニューアルバム「MAMI KAWADA BEST BIRTH」を2月13日に発表した。これは川田初のベスト盤。メジャーデビュー後のシングル曲を中心に、インディーズ時代の楽曲まで、その全キャリアを振り返る内容となっている。
そして、その1週間後、2月20日にはニューシングル「FIXED STAR」をリリース。こちらは、2月23日公開の映画「劇場盤『とある魔術の禁書目録 -エンデュミオンの奇蹟-』」のエンディングテーマ「FIXED STAR」と、4月25日発売予定のPlayStation Vita専用ソフト「迷宮クロスブラッド インフィニティ」のテーマソング「Intersection」をパッケージした1枚だ。
昨年、4thアルバム「SQUARE THE CIRCLE」リリース時、キャリア第2章へと足を踏み入れる決意を語っていた川田はこの2つのニューアイテムで何を見せてくれるのか。本人に聞いた。
取材・文 / 成松哲
2月13日って私の誕生日なんです
──すみません、まず素朴な疑問を解消させてください。なぜ今ベスト盤を?
「なぜ」って?
──I've所属のボーカリストとして初めて楽曲を発表したのが2001年だから今年で歌手活動13年目。そして2005年にメジャーデビューしているからデビュー8年目ですよね。「○周年記念」というにはキリが悪いし、なんでこのタイミングでベスト盤なんだろう、って不思議だったんですよ。
理由の1つ、それもものすごく簡単な理由としては、2月13日って私の誕生日なんですよ。しかも、今年の2月13日って水曜日じゃないですか。
──オリコンの週間ランキングの集計期間に合わせて水曜日にCDをリリースするのが音楽業界の通例になっている中、たまたま誕生日がカブったからベスト盤をリリースした?
ぶっちゃければそう。水曜日だからです!(笑)
──じゃあ、もしも2010年2月13日が水曜日だったら、3年前にベスト盤をリリースしてました?
いえ。誕生日が水曜日だったのはあくまで「理由の1つ」ですね。
──それも限りなくネタ的な(笑)。
はい(笑)。実際ベスト盤を制作する話自体は2年くらい前からあって。でも、そのとき私の気持ちは「ベストを出したい」っていう方向には向かわなかったんです。なんかベスト盤って活動をいったん締めくくるというか、区切るために出すようなイメージがあるじゃないですか。
──でも2年前の2011年って、その前の年の11月に出世作である「No buts!」を発売したばかりだし、区切りのベスト盤を作るのにいいタイミングではありますよね。「No buts!」で川田さんを知ったファンにそれ以前の川田さんのキャリアを知ってもらうことができるし、しかも歌手活動10周年だし。
確かに「No buts!」で1つ結果を出した自信はありますし、10周年も大きな節目ではあったんですけど、それでもやっぱり「だからベストアルバム」っていう思いには至らなかったですね。すごく偉そうに聞こえるかもしれないんですけど「No buts!」がヒットしたことも10周年であることも、川田まみの活動の中の過程の1つなんだっていう気持ちがあって。まだまだ私の活動は続いていくのに、ベスト盤を出して「川田まみの歴史はこんな感じだったんですよ」って振り返る気にはなれなかったんです。
責任を背負っていくことが私のやりたいこと
──で、最初の質問に戻るんですけど(笑)、ではなぜ今ベスト盤を?
「SQUARE THE CIRCLE」をリリースしたときにもお話させていただいたと思うんですけど、去年活動の幅や環境が変わってきたんですよね。
──所属している音楽制作プロダクション・I'veの中だけで活動するのではなく、フェスやイベントに積極的に打って出てほかのアーティストと共演したことで自身がアニソンシーンの中堅を担うべきキャリアであることに気づいた。そして若いアーティストを引っ張っていける存在になりたくなった、って言ってましたよね。
ええ。その第一歩としてバンドメンバーを全員若い女の子に一新してみたんですけど、この経験が私にとっては本当に大きなものになっていて。のしかかってくる責任はもちろん大きくなったんですけどぜんぜんつらくなかった。むしろ「この責任をきちんと背負っていくことこそが、これから私のやりたいことなんだ」っていう手応えみたいなものが感じられたんです。そうしたら初めて「ベストアルバムを」っていうお話と正面から向き合えるようになったんですよ。次のステップに進む上でも、これまでの活動をしっかり振り返って現状を認識するべきだろう、と。だから「今年の2月13日がたまたま水曜日だからリリースする」っていうのも100%ネタではなくて。こういう機会をいただけたことが私にとっては最高の誕生日プレゼントなんです。
だんだん楽曲に対するストイックさが増してる
──その「MAMI KAWADA BEST BIRTH」って、まずはメジャーデビューシングル「radiance」から最新作である「Borderland」や「FIXED STAR」までをリリース順に並べて、その後にインディーズ時代の楽曲を配した構成になっていますよね。いかがでした? アルバム前半戦で実際に自身のキャリアを振り返ってみて。
「いやあ、がんばってんなあ」って(笑)。普通キャリアが長くなったり、年をとったりするごとに音楽性って落ち着くものだと思うんですよ。なのにこの「川田まみさん」っていう人の楽曲はどんどんハードになっていっている。「コイツまだまだやる気だな」「でも、どこまでこの攻めのスタイルを貫くのかしら」って不思議な感覚になっちゃいました。あと、このアルバム、聴いてて疲れますよね?
──あはははは(笑)。川田さんの言うとおり攻めの姿勢のタフな楽曲が多いから、腹の下に力を込めて聴かないと音に圧倒されちゃうかもしれませんね。
そうですそうです、そういう意味です(笑)。ただ本当に「だんだん楽曲に対するストイックさが増してるな」「作品に対して前向きにぶつかっていくのが私のスタイルなんだな」っていうことは感じましたね。
──リリース順に並んでいるからサウンドの変遷が見てとれるのも面白いですよね。「Get my way!」や「JOINT」で今の川田まみサウンドの原型ともいうべきデジロック系に傾倒し始めて、「No buts!」「See visionS」あたりで今と地続きの音ができあがったっていう感じで。
そうですね。そして、その音の歴史ってファンの方の歴史でもあると思うんですよ。だから聴きながら「中学生のとき、友達とカラオケに行って『緋色の空』を歌ったな」「『PSI-missing』を聴きながら受験勉強したな」っていう感じで、そのシングルがリリースされた頃のことを思い出してもらえるとうれしいですよね。
- ベストアルバム「MAMI KAWADA BEST BIRTH」 / 2013年2月13日発売 / ジェネオン・ユニバーサル
- 「MAMI KAWADA BEST BIRTH(初回限定盤)」[CD+Blu-ray] / 3675円 ジェネオン・ユニバーサル / GNCV-1032
- 「MAMI KAWADA BEST BIRTH(通常盤)」[CD] / 2940円 / GNCV-1033
CD収録曲
- radiance [テレビアニメ「スターシップ・オペレーターズ」オープニングテーマ]
- 緋色の空 [テレビアニメ「灼眼のシャナ」オープニングテーマ]
- 赤い涙 [劇場版「灼眼のシャナ」挿入歌]
- Get my way! [テレビアニメ「ハヤテのごとく!」エンディングテーマ]
- JOINT [テレビアニメ「灼眼のシャナII」オープニングテーマ]
- PSI-missing [テレビアニメ「とある魔術の禁書目録」オープニングテーマ]
- masterpiece [テレビアニメ「とある魔術の禁書目録」新オープニングテーマ]
- No buts! [テレビアニメ「とある魔術の禁書目録II」オープニングテーマ]
- See visionS [テレビアニメ「とある魔術の禁書目録II」新オープニングテーマ]
- Serment [テレビアニメ「灼眼のシャナIII -FINAL-」新オープニングテーマ]
- Borderland [テレビアニメ「ヨルムンガンド」オープニングテーマ]
- FIXED STAR [劇場版「とある魔術の禁書目録 -エンデュミオンの奇蹟-」エンディングテーマ]
- 風と君を抱いて -2013 ver.- [ゲーム「miss you」主題歌]
- eclipse [ゲーム「燐月 -リンゲツ-」主題歌]
- 明日への涙 [テレビアニメ「おねがい☆ツインズ」エンディングテーマ]
- BIRTH
初回限定盤Blu-ray収録内容
- MAMI KAWADA 2012 LIVE TOUR “SQUARE THE CIRCLE”
収録曲
- FIXED STAR
- Intersection
- FIXED STAR (Instrumental)
- Intersection (Instrumental)
川田まみ(かわだまみ)
2月13日生まれ、北海道出身の女性シンガー。学生時代から歌手を志し、2001年に島みやえい子の推薦でI'veのオーディションに参加し合格。同年11月に発表された「風と君を抱いて」で歌手デビューを果たす。2004年6月にリリースされた「I've Girls Compilation 6『COLLECTIVE』」収録曲「IMMORAL」「eclipse」で高評価を受け、2005年2月に中沢伴行プロデュースによるシングル「radiance / 地に還る~on the Earth~」でソロデビューした。以降、さまざまなアニメのテーマソングを手掛け、独特の繊細なビブラート、透き通るように伸びやか、かつ力強い歌声で幅広い層からの支持を獲得。2012年8月に通算4枚目のアルバム「SQUARE THE CIRCLE」をリリース。翌2013年2月には初のベストアルバム「MAMI KAWADA BEST BIRTH」、ニューシングル「FIXED STAR」を立て続けに発表。