ナタリー PowerPush - 川田まみ

ベスト盤&ニューシングルで魅せる過去と未来

自分で言うのもなんだけど「歌がうまくなったなあ」と

──メジャーデビュー後の楽曲はもちろん「eclipse」「明日への涙」もリマスタリングしたり、レコーディングし直したりはしてないですよね。

ファンの方、そして私が歴史を振り返るためのアルバムなので、いじろうとは思わなかったですね。新しい川田まみをお見せするのは、これからのシングルやオリジナルアルバムで、って思ってますから。

──なのに「風と君を抱いて」はレコーディングし直しています。

うーん……。実はあまり深くは考えていないんですよ(笑)。私と制作陣の間で「オリジナルバージョンの『風と君を抱いて』をレコーディングしてから12年。ちょうどひと回りの年月を経た私や楽曲制作陣がその原点を実際に振り返ってみたらどうなるんだろう?」っていう話が自然と持ち上がって「じゃあ録ってみようか」「いいですね」ってなってたんです。「皆さんに12年前の私と、当時よりはちょっと成長した今の私を聴き比べてもらいたいな」「そういう楽しさを提供できたらいいな」って。

──実際に12年前の曲を歌ってみた感想は?

自分で言うのもなんなんですけど「歌がうまくなったなあ」と(笑)。「この12年間、いろんな経験を積んで、声と歌に深みや柔らかさや艶っぽさを出せるようになったんだなあ」って。ただ、当時の危なっかしいんだけど、初々しくてけなげだった感じが失われている気もしましたね。それに気付いたら、当時、緊張で胃が痛くなったことや、1回録るだけでヘトヘトになっていたこと、でも楽しくて一生懸命汗かきながら全身全霊をかけて歌っていたことを思い出して、ちょっと寂しくもなっちゃいました。だから、当時からのファンの方にはその「うれしくもあり寂しくもあり」っていう感じを楽しんでもらえると思うし、でもちゃんと声もトラックも2013年バージョンの音にはなっているので、最近知った方にもちゃんとなじんでもらえるのかな、っていう気はしています。

光は確かに胸の中にある

──そしてアルバムの最後を飾るのが新曲「BIRTH」。……なんですけど、タイトルのわりに詞にも曲にもあまり祝福ムードはない曲ですよね?

確かに最初は誕生を祝福するようなキラキラしたイメージで楽曲制作を進めていて、実際にそういうデモもできあがったんですけど、そのとき私が「こんなもん歌えるか!」と(笑)。実際にそこまで汚い言葉を使ったわけではないんですけど、今回のベスト盤は皆さんと一緒に川田まみの歴史を振り返った上で、次のステップやステージを生み出すという意味での「誕生」の作品であることに気付いてしまいまして。そうなるとI'veという環境に守られて甘えてきた私や、誰かに引っ張ってもらったほうがラクだからって自分の中にある「ああしたい」「こうしたい」っていう気持ちに嘘をついていた私のことも振り返らなきゃいけないじゃないですか。だから過去の「なにくそ!」っていう気持ちがあったからこそ未来が生まれるっていうストーリー性のある曲。淡々とイントロが始まって、かなり渋めのエレクトロテイストのAメロがあってから、ようやくちょっとドラマチックでキレイなサビに移るっていう曲に作り直したんです。

──ただ渋いAメロの果てにはドラマチックでキレイなサビが待っているわけですよね。ということは、今の川田さんは明るい未来を見出せている?

はい。去年、甘えていた自分や、本当の気持ちに嘘をついていた自分に気付いて、意識を切り替えるようにしたら、自分の中に次のステップのイメージが浮かんだし、その次のステップに届いたときにしたいことや、しなきゃいけないことがひらめいたので。そのイメージもひらめきは、まだぜんぜん形にはなっていない。私の中にあるだけ。「BIRTH」のサビの詞にあるとおり「光は胸にある」状態なんですけど、でもその光は間違いなく私の中に「誕生」している。そして私はこの光を信じて次のステップに飛んでいくつもりなんです。だから実は「BIRTH」って今の私にとっては一番前向きになれる言葉を集めた曲なんですよ。一見幸せそうには見えないかもしれないけど、ちゃんと私なりの戦い方ができている曲なんです。

──ただ、この曲って最後にその「なにくそ!」の象徴である渋いAパートがリフレインしますよね。

でもそのまたあと、アウトロにギターのアルペジオが入るじゃないですか。あれって普通ならイントロに使いがちなフレーズですよね。実際アレンジを進めている段階ではイントロに使うつもりでしたし。でも私はこの曲をどうしても「また物語が始まる」っていうイメージで終わらせたかった。だから、これから曲が始まることを伝えるはずのイントロをあえてアウトロに持ってきたんです。しかも、突然カットアウトして終わらせることで「この先、どうなっちゃうの?」って新しいステージに向かう私に期待してほしかったんです。

──「MAMI KAWADA BEST BIRTH」っていうアルバムは、基本的には川田さんの歴史を振り返るものであるものの、最終的にはその過去に落とし前を付け、今の川田さんや未来の川田さんに着地する構成になっている、と。

そうなんです。

ベストアルバム「MAMI KAWADA BEST BIRTH」 / 2013年2月13日発売 / ジェネオン・ユニバーサル
「MAMI KAWADA BEST BIRTH(初回限定盤)」[CD+Blu-ray] / 3675円 ジェネオン・ユニバーサル / GNCV-1032
「MAMI KAWADA BEST BIRTH(通常盤)」[CD] / 2940円 / GNCV-1033
CD収録曲
  1. radiance [テレビアニメ「スターシップ・オペレーターズ」オープニングテーマ]
  2. 緋色の空 [テレビアニメ「灼眼のシャナ」オープニングテーマ]
  3. 赤い涙 [劇場版「灼眼のシャナ」挿入歌]
  4. Get my way! [テレビアニメ「ハヤテのごとく!」エンディングテーマ]
  5. JOINT [テレビアニメ「灼眼のシャナII」オープニングテーマ]
  6. PSI-missing [テレビアニメ「とある魔術の禁書目録」オープニングテーマ]
  7. masterpiece [テレビアニメ「とある魔術の禁書目録」新オープニングテーマ]
  8. No buts! [テレビアニメ「とある魔術の禁書目録II」オープニングテーマ]
  9. See visionS [テレビアニメ「とある魔術の禁書目録II」新オープニングテーマ]
  10. Serment [テレビアニメ「灼眼のシャナIII -FINAL-」新オープニングテーマ]
  11. Borderland [テレビアニメ「ヨルムンガンド」オープニングテーマ]
  12. FIXED STAR [劇場版「とある魔術の禁書目録 -エンデュミオンの奇蹟-」エンディングテーマ]
  13. 風と君を抱いて -2013 ver.- [ゲーム「miss you」主題歌]
  14. eclipse [ゲーム「燐月 -リンゲツ-」主題歌]
  15. 明日への涙 [テレビアニメ「おねがい☆ツインズ」エンディングテーマ]
  16. BIRTH
初回限定盤Blu-ray収録内容
  • MAMI KAWADA 2012 LIVE TOUR “SQUARE THE CIRCLE”
川田まみ(かわだまみ)

2月13日生まれ、北海道出身の女性シンガー。学生時代から歌手を志し、2001年に島みやえい子の推薦でI'veのオーディションに参加し合格。同年11月に発表された「風と君を抱いて」で歌手デビューを果たす。2004年6月にリリースされた「I've Girls Compilation 6『COLLECTIVE』」収録曲「IMMORAL」「eclipse」で高評価を受け、2005年2月に中沢伴行プロデュースによるシングル「radiance / 地に還る~on the Earth~」でソロデビューした。以降、さまざまなアニメのテーマソングを手掛け、独特の繊細なビブラート、透き通るように伸びやか、かつ力強い歌声で幅広い層からの支持を獲得。2012年8月に通算4枚目のアルバム「SQUARE THE CIRCLE」をリリース。翌2013年2月には初のベストアルバム「MAMI KAWADA BEST BIRTH」、ニューシングル「FIXED STAR」を立て続けに発表。