ナタリー PowerPush - 鴉
近野淳一と山崎賢人の初対談
男は男に認められたいって気持ちがある
──鴉の演奏シーンはスタジオで撮られたんですよね。山崎さんが演じている様子がスクリーンに映ってましたが、最初に山崎さんの映像を見て確認してから、演奏に入ったんですか?
近野 いえ、本番でバーンとぶつける感じで、特に確認はせず。今回、映像の加工もほとんどしてないと思いますし。だから、あとから撮影した映像を観て、「わあ、こんなイケメンと出るのかー」って思いましたね(笑)。俺、自分の顔のアップは全部削りましたから(笑)。「やめてくれ!」って。
──確かに今回は、引きの絵が多いなと思いました。
近野 なんか、バンドとドラマ、両方を生かし合いたかったんですよね。だからバンドのほうは引いたほうがいいんじゃないかなと思って、口を挟ませてもらいました。
──そんな「列車」のPVは、YouTubeで公開されたりCS放送でオンエアされたりしていますが、お2人のところに感想は届いてますか?
山崎 友達とか親とかが観て、「普通にカッコいい」って言ってくれました。俺、友達に鴉をオススメしてたんですよ、ずっと。そしたら友達もハマってくれて。だから「鴉のPVに出ることになった」って話したら「えっ嘘!?」ってめっちゃ驚いてて。完成した映像を、その友達も観てくれて「すごいいい」って言ってくれて。うれしかったです。
──着実にファンが増えてますね、近野さん。
近野 男性のファンが増えるのはうれしいです、単純に。やっぱり、男は男に認められたいって気持ちがありますからね。
「列車」は今作の中で最も駆け抜けてる感じがする曲
──ところで「列車」という楽曲は、非常にポップな曲ですよね。山崎さんがPVに出演されたことでさわやかなイメージもできましたが。昨年12月にリリースされた1stアルバム「未知標」とはまたモードが違う曲だなと感じたんですが、いつ頃できたものなんでしょう?
近野 結構前ですね。3年ぐらい前かな。ストックの中にずっとあって。実は、曲ができたときにプリプロまではやってたんですよ。でも、今は出したくないな、すぐ出すものではないな、って感覚があったんです。なので、出したいと思えるまでとりあえず置いておこうと。
──寝かせておいた「列車」が、このタイミングでリリースされるのはなぜですか?
近野 2ndミニアルバム「感傷形成気分はいかが」の選曲をしてたときに、「幻想蝶」から「曇りなき私」まででひとつの作品ができあがった感があって。でも、そのまま終わっちゃうと面白くないな、と。できあがった世界にもう1つ、次に向かっていく理由が欲しくなったんです。そういう何か、もうひとつテイストを加えないと気が済まない部分っていうのが自分の中にあって。で、「列車」はこのミニアルバム全体の中で最も駆け抜けてる感じがする曲なので、この曲でアルバムに色を足せたらいいな、と。
──確かに「列車」はシングルっぽい、疾走感がある曲ですよね。
近野 うん、そうですね。でもシングルにならなかったんですよね(笑)、正直な話。なので、ミニアルバムのリード曲っていう贅沢な使い方をしたほうがいいなと思って。
──では、「列車」が今作のキーになるっていうのは早い段階で見えていた?
近野 そうですね。作り終わってから思ったのは、表向きのリードが「列車」で、裏リードが「幻想蝶」。それら2曲をミニアルバムの最初と最後に持ってきたことで、作品が完成する感じですね。
──ちなみに山崎さんは2ndミニアルバム「感傷形成気分はいかが」は聴きました?
山崎 はい、聴きました。やっぱり「幻想蝶」がすごくいい曲だなと思いました。だから今、「幻想蝶」が裏のリード曲だって聞いて、あっやっぱりと思いました(笑)。
野外ライブはバンドの深い部分をちゃんと見せないといけない
──最近のライブについても教えてください。夏は「OGA NAMAHAGE ROCK FESTIVAL vol.2」「TREASURE05X -the flashy seed-」と2つのイベントに既に出演され、このあとも「Heat up!」「STAND UP! MACANA -がんばっぺ宮城-」に参加されますね。中でも「OGA NAMAHAGE ROCK FESTIVAL」は大きいステージだったんじゃないかと思うんですが、いかがでした?
近野 野外ライブは、練習するにしても何も想定できない……というか想像できないので、ハードルは高いですね。特に、明るい時間に演奏する場合は照明や舞台装置もあまり意味がないし。ある意味では、すごくアコースティックな気持ちでやれるっていう面もありますね。演出的な部分よりも、もっと真に迫った、バンドの深い部分をちゃんと見せられないと成り立たないなとも思うし。あ、でも、細かい話なんですけど、ギターの指板や足元が見えやすいって一面もあります(笑)。
──お客さんの顔もよく見えます?
近野 そうですね。かなり生々しく(笑)。
山崎 あははは(笑)。
近野 だから演奏してるときに、俺という人間の特徴なのかもしれないんですけど、ライブを一生懸命盛り上げようとしてくれてる人よりも、ちょっと沈んでる人が見えちゃうんですよね。そのときに「やべえ、つまんねえのかな」って思っちゃうことは、ありますね。そう思う自分との戦いみたいな気持ちにもなるし。でも、そのときに鳴らしたい音を慣らしに来てるわけだしな、と前向きに思うようにしてます。
──かなりいろんなことを考えながら演奏されてるんですね。演者にはいろんなタイプがいると思うんですけど、例えば頭が真っ白になって、あっという間に持ち時間が終わっちゃったっていう人もいますよね。近野さんはそうではなく?
近野 まあでもライブって流れがあるから、後半になってきてようやく真っ白になるってときも多分あります。前半は逆に、例えば日によってはめちゃくちゃ緊張してたり。最初はその日の現場の空気と一緒にやりたいなって気持ちで臨むので、いろいろ考えることのほうが多いですね。で、自然にだんだん頭が真っ白になっていけるのが理想です。
鴉(からす)
近野淳一(Vo, G)、一関卓(B)、榎本征広(Dr)からなるスリーピースバンド。2001年に近野を中心に秋田で結成。エモーショナルかつ重厚なサウンドと叙情的な歌詞世界で、地元で絶大な支持を集める。2008年頃より関東地区でのライブ活動を開始。2009年1月にTSUTAYA限定シングル「時の面影」を発表、同年2月に「時の面影」がiTunes Store「今週のシングル」に選ばれ各方面で反響を呼ぶ。
2009年3月、初の全国流通作品となるミニアルバム「影なる道背に光あればこそ」を発売。2009年8月には1stシングル「夢」でメジャー進出を果たす。また「夢」がテレビ東京系 ドラマ24「怨み屋本舗REBOOT」の主題歌に、4thシングル「巣立ち」がMBS・TBS系列 10月ドラマ「闇金ウシジマくん」の主題歌に起用され、話題を集める。2010年12月、1stフルアルバム「未知標」をリリース。その後2011年3月に榎本が加入し、現体制に。8月には2ndミニアルバム「感傷形成気分はいかが」を発表した。
山崎賢人(やまざきけんと)
1994年生まれの俳優。2010年よりテレビドラマ、CMなどに出演し、2011年公開の三木孝浩監督映画「管制塔」で主人公の中学生・藤田駈役を演じて頭角を現す。2012年には東宝系映画「麒麟の翼~劇場版・新参者~(仮題)」「Another」と2作に出演。「Another」では主演を務める。