ナタリー PowerPush - 鴉

激動の1年を経て放たれる彩り豊かなニューシングル

鴉がニューシングル「風のメロディ」を1月13日にリリースした。多くのライブをこなし、着実にステップアップしてきた彼らが次に世に出すのは、キャッチーなタイトルチューンが印象的な作品だ。

ナタリーではこれを記念して、メンバー3人にインタビューを実施。順風満帆に見えた活動の影で抱えた苦しみや悩み、それを超えることで見いだしたライブへの思いについて、余すことなく語ってもらった。

取材・文/野口理香

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いろんなバンドと対バンしたことで競争心が芽生えた

──2009年は、初の全国流通盤として3月にミニアルバムをリリースし、その後1stシングルでメジャー進出という激動の1年でしたね。振り返ってみていかがですか?

近野淳一(Vo, G) もう忙しさにも慣れたと思ってたらもっと忙しかった、みたいな感じです。あと、ライブに臨むにあたっての心構えが変わったかな。パフォーマンスや演奏面で意識する部分がどんどん増えてきました。

一関卓(B) いろんなことを見直せた1年だったと思います。いろいろ悩んで、バタバタして。レコーディングは回数を重ねれば重ねるほど視野が広がっていったし、ライブも春頃とこのあいだのワンマンでは全然違うものになったし。ぎゅっと詰まった1年でしたね。

渡邉光彦(Dr) リリースを機にどんどんライブが増えて、10月から12月は結構な本数をこなしたんですよ。もちろんやってく中で迷いも生じたりしてたんですけど、ライブをやればやるほど身になるのが実感できたし、たくさんライブをやってきたことが年末のワンマンに生かせたので、充実した1年でした。

近野 長い1年だったなと。終わってみたらあっという間だったというのもあるんですけど、僕の人生の中でも、これだけ濃密な1年は今までなかった気がします。

──確かに、昨年3月に渋谷CHELSEA HOTELで開催された無料ライブと2009年末のワンマンは、同じ会場で行われたライブだったにもかかわらず全く違う仕上がりでした。3月のライブでは、ステージとお客さんの間に多少心理的な距離や遠慮があったように感じましたが、ワンマンではそれが全くなくなってましたし。

近野 3月のライブでは、お客さんを意識したパフォーマンスもそんなにできてなかったし、やろうともしてなかったかもしれない。それが、いろんなバンドと対バンしていく中で、勝手に自分の中で競争してるような感じが生まれた気がします。まだ「これをやった」と言い切れるようなことはないんですけど、強く押し出せるところは出していかないとなって正直思ってて。それでお客さんがついてきてくれるんだったらラッキーだし。パフォーマンス面についても最初の頃はちょっと戸惑いがあったんだけど、今はそれもなく。“アートしてる感覚”っていうのが自分が思ってるほど必要なかったんですね。うちら、ライブを1回やるたびにビデオに撮ってもらって後で観てるんですけど、映像には自分の狙いと全然違うものが映ってるんですよ。そういうことを自覚してから、どこまで狙ってどこまで素直に出すかっていう考え方が変わってきましたね。

──なるほど。鴉のライブで一番変わったのは、お客さんに対して皆さんがそれぞれ強くアピールするようになったことだと思います。ギターの鳴らし方、ベースの弾き方、ドラムの叩き方ひとつとっても、すごく前を向いていることが印象的で。

近野 そうですね。年末のワンマンでは、お客さんがぐいぐい来てくれるから逆にこっちも全力で向かわないとやられるって思ってたところも最初はありつつ(笑)。でも、後半になるにつれて、本当お互いのやりとりだけで体が動いて声が出てた。本当にお客さんありきで、あそこまで出し切れたんだなと思います。

ライブの現場で次のステップにつながる何かを得ている

──昨年は、全国ツアーなどで今まで行ったことのない地域でライブをする機会も増えたと思います。地方のお客さんの反応はどうでした?

一関 うちらを観に来てくれる人がどこにでもいるんだなぁと。待っててくれる人がいるってことに感動しました。

近野 東京では、ライブをやる回数が増えた分シビアに見られるようになったと思うんですよ。それに対して、去年の終わり頃に栃木県や埼玉県などの東京近県でライブをやったときは、癒されて帰ってくることがありました。

──癒されて?

近野 うん。「待ってたよ」って言ってくれる人が結構いて。俺らが思ってる以上に受け入れてくれたんで「東京でもまたがんばろう」って思えたんです。リアルな話、あきらめかけた頃に好意的な反応が返ってきたって気持ちもありましたね。シングルを出した当初は反響も結構あったけど、それも徐々に落ち着いてきて「あぁこのままダメになってくのかな」って思ってた時期もあって。「物事は自分の見えるところ、聞こえるところ以外で起きてる」って考えながら、あくまで前向きに想像するようにはしてたんですけどね。そんなとき、地方に行ったら鴉を観に来てくれた人が結構いて。ライブでも手上げてくれたり。そういうのを感じられて本当に良かったなとも思ったし、変な話、こんなに東京でやる暇があったらもっと地方に行っときゃよかったなって思ったんです(笑)。攻められるところはもっと攻めておいたらよかったなって。

──対バンして印象深かったバンドや、思い出深いイベントはありますか?

近野 俺は10月の「MEGA★ROCKS 2009」かな。そのときは、ライブに対して悩んでる時期で。俺、あんまり他人のライブって進んで観に行かないんですよ。悪い癖なんですけど。でもその日はお祭りだし、ARABAKIとかでは体調を崩して他のバンドを観れなかったんで、いろいろ観て回りました。例えばUNISON SQUARE GARDENを初めて観たんですけど、サウンドやライブが思ってたのと全く違ってた。すげぇ気合が入ってて、正直「俺、今日こんなんできねぇや」って思うぐらいすごかった。それからTHE BACK HORNがやっぱりすごいライブだったんですよ。そうしたら自然と、その日自分もライブでそうなれた。あそこまでやってる人がいるから、俺もできる限りやりたいっていう気持ちが生まれて。だからあの日あの人たちを観てなければ、ライブも良くなってなかっただろうと思う。

一関 うん、「MEGA★ROCKS」あたりから、ちょっとずつ現場での体験がきっかけになってきてる。後々何かしらのスイッチを入れてくれる、次のステップにつながる何かを対バン相手から得られるようになったと思います。個人的には「FACTORY」収録で一緒だった伊藤ふみおさんのライブはめちゃめちゃ楽しかったな。

渡邉 俺は、UNLIMITSのツアーで対バンした、HOT SQUALLが激しくてすごいなぁと感じました。あとはもちろんUNLIMITSのサウンドや見せ方もすげぇカッコよかった。これは負けられんなぁと思えたな。

ニューシングル『風のメロディ』 / 2010年1月13日発売 / 1000円(税込) / TOY'S FACTORY / TFCC-89292

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CD収録曲
  1. 風のメロディ
  2. ココニナク
  3. 向かい風
(からす)

近野淳一(Vo,G)、一関卓(B)、渡邉光彦(Dr)からなるスリーピースバンド。2001年に近野を中心に秋田で結成。エモーショナルかつ重厚なサウンドと叙情的な歌詞世界で、地元で絶大な支持を集める。2008年頃より関東地区でのライブ活動を開始。2009年1月にTSUTAYA限定シングル「時の面影」を発表、同年2月に「時の面影」がiTunes Store「今週のシングル」に選ばれ各方面で反響を呼ぶ。2009年3月、初の全国流通作品となるミニアルバム「影なる道背に光あればこそ」をリリース。2009年8月には1stシングル「夢」でメジャー進出を果たす。