音楽ナタリー Power Push - KANA-BOON
葛藤の末に取り戻した自分たちの「Origin」
好きなことを追求したゆえに反応はわからない
──サウンドが変化すると、歌にも影響がありそうですね。
谷口 そうですね。メロディの構成やコーラスの組み立て方もすいぶんレベルアップしてるし……大変ですね(笑)。その分、お客さんのリアクションがすごく楽しみなんです。
飯田 そうやな。
谷口 自分たちには「いい曲たちができた」という自負があるけど、それをアルバムとして聴いたときはどうなんだろう?とか。自分たちが好きなこと、やりたいことを詰め込んだからこそ、わからない部分もあるんですよね。古賀が「好きなことを追求したゆえに反応はわからない」って言ってたんですけど、僕も「なるほどな」って。
古賀 ただ、ニーズに応えることでもらった評価よりも、自分らが好き放題やった曲を評価されたほうが格段にうれしいと思うんですよね。もし批判があっても納得して受け止められるし、それを吸収して次につなげられるんじゃないかなって。
谷口 うん。今はいいモードだし、ここからさらによくなるっていう感じもあるんですよね。
コンセプトありきで作っていた「KANA-BOONが人間をつくります。」
──初回生産限定盤Aに付いているCD「KANA-BOONが人間をつくります。」についても聞かせてください。デビュー直前に開催したイベント「KANA-BOONが人間をつくります。」にあわせて制作した楽曲をまとめたCDですが、「音楽を始めた原点」をテーマにした「Origin」にもピッタリの企画ですよね。
谷口 それは、たまたまなんですけどね(笑)。「Origin」のテーマが決まる前から並行して進めていた企画なので。
飯田 運命的やったな(笑)。
──でも、このタイミングでメジャーデビュー前の音源が聴けるというのは、すごく意味があることだと思います。イベントを行っていたのは2012年ですよね?
谷口 そうですね。メジャーデビュー前年の11月から5カ月連続でシングルを会場限定で発売して。それがデビュー前最後の自主企画イベントだったんですよね。イベントと並行して、「人間のパーツを集めて、最後に1人の人間になる」というテーマで楽曲を作って。
──体のパーツをテーマにした曲を作ろうと思ったのは、どうしてですか?
谷口 わからないです(笑)。とにかくコンセプトのあることをやりたかったんですよね。マンガの単行本もコンプリートしてきれいに並べないと気が済まないタイプなんですけど、自分たちの作品でもコンプリートを目的としたことができたらいいなって。それは今も思ってることなんですけどね。
古賀 最後の「Construct Connect」は今聴いても染みますからね。
谷口 この企画を総括する1曲だからね。「Construct Connect」は、メジャーデビュー後に発表したシングルのカップリングに入れる話もあったんですけど、それはかたくなに拒否したんです。「人間をつくります。」のほかの曲と一緒にリリースしないと意味をなさない曲なので……。そういう意味でちゃんと10曲入りのCDという形で発表できたのはよかったですね。
飯田 曲を作ってた当時はヒーヒー言ってたけどね。
小泉 そう、一気に作ったから。あれはけっこうヤバかった。
谷口 2回に分けてレコーディングしてたんですけど、1回目が終わって、「この感じだったらイケるな」って思ったら……。
飯田 レコーディングの2日前まで曲ができなくて(笑)。
谷口 8時間くらいスタジオに入って、そこで一気に作って。最後の曲を録り終わったときは、スタジオのエンジニアさんも「よく間に合ったね」って感動してましたね(笑)。
古賀 短い時間で集中したほうがいい曲ができる説があるからね、俺らは。
小泉 必死やったけどね。レコーディングしながら曲の流れを覚えて。
谷口 今そんなことやったら、マジでスタッフに怒られるよ。そういう状況も楽しくて仕方なかったんですよね、そのときは。
「この頃の気持ちを取り戻したい」
──今、シングルにしてもまったく違和感がない昔のアレンジの「talking」もあれば、叙情的でフォーキーな「ピアスを開けた」もあって。特に「ピアスを開けた」は鮪さんのパーソナルな部分が出ていていい曲ですよね。
谷口 ……その曲のことはいいじゃないですか。
──弾き語りでもすごくよさそうですよね。
谷口 絶対やらないです。
飯田 (笑)。聴いた人みんなにイジられるよな、この曲を歌ったら。
谷口 そう、絶対にみんな笑うんですよ。
──素朴な感じもありますからね。「うそばっかり」もそうですけど。
谷口 若いですよね(笑)。ただホントに思っている感じがするというか、言葉の中にちゃんと芯があるんですよ。この頃はだいぶヒネくれてますけどね。まあ、曲を書くときの意識も今とはだいぶ違いますから。今は自分の歌の向こう側に聴いてくれる人がいるじゃないですか。自分のパーソナルな部分よりも、聴いてくれる人の力になったり、その状況にヒットする曲を書きたいというモードになっているというか。もちろん、ところどころに自分自身も出てきますけど、そのバランスをうまく取らないといけないなって。
──昔の曲を再録したり再ミックスしたりして、当時の楽曲と改めて向かい合ってみてどんなことを感じました?
谷口 僕は「いい曲だな」って改めて思いましたね。当時からしっかりしたクオリティだったんだなと思ったし、あの頃、自分たちが信じてがんばっていたことは間違いじゃなかったなって。
飯田 昔の曲って、フレーズのことで言うと隙間だらけだし、「ここに音を加えたら絶対にカッコいいのに」って思ったりするんですよ。でも、実際にハメてみたら、そんなによくなかったりもして。コードに対するフレーズの当て方とかもわかってなかったけど、そのときなりの感覚でちゃんとやってたんだなって思いましたね。
古賀 昔の曲を演奏するメリットって、自分の成長の度合いが明確にわかることなんです。同じフレーズでも指のニュアンスや力の入れ具合によって、全然変わってくるし。今のほうが格段にいいテイクが録れたし、そこはよかったなって思います。
谷口 そうやな。「KANA-BOONが人間をつくります。」の頃に書いていたような曲をもう一度書くことも、今の僕らの目標の1つですね。「この頃の気持ちを取り戻したい」と思ったし、自分自身を包み隠さず表現することで生まれるエネルギーってすごく大きいので。
──こういうコンセプトありきのアルバムを作るのも面白そうですよね。
谷口 それはいつか絶対やりたいと思ってます。普段は曲を集めてからアルバムのタイトルやテーマを考えますけど、その順番を逆にしたらよりレベルの高いもの、それこそ“作品”と呼べるものが作れるんじゃないかなって。
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- KANA-BOON ニューアルバム「Origin」 / 2016年2月17日発売 / Ki/oon Music
- 初回限定盤A [CD2枚組] / 4536円 / KSCL-2686~7
- 初回限定盤B [CD+DVD] / 3780円 / KSCL-2688~9
- 通常盤 [CD] / 3024円 / KSCL-2690
CD収録曲
- オープンワールド
- 机上、綴る、思想
- なんでもねだり
- ランアンドラン
- anger in the mind
- インディファレンス
- talking
- グッドバイ
- 革命
- ダイバー
- スタンドバイミー
- Origin
初回限定盤A CD「KANA-BOONが人間をつくります。」収録曲
- 見たくないもの(再録)
- 目と目と目と目(新ミックス)
- MUSiC(新ミックス)
- ピアスを開けた(新録)
- talking
- うそばっかり(新録)
- クローン(再録)
- かけぬけて(新ミックス)
- 僕らはいつまで経ってもさ(新録)
- Construct Connect(新録)
初回限定盤B DVD収録内容
- KANA-BOONの企画会議 その1
- 盛者必衰の理、お断り THE PARODY Music Video
- KANA-BOONの企画会議 その2
- 結晶星 THE PARODY Music Video
- こいずみのたたかい
- 盛者必衰の理、お断り THE PARODY オフショット
- 結晶星 THE PARODY オフショット
KANA-BOON(カナブーン)
谷口鮪(Vo, G)、古賀隼斗(G)、飯田祐馬(B)、小泉貴裕(Dr)からなる4人組バンド。高校の同級生だった谷口、古賀、小泉を中心に結成され、のちに飯田が合流して現在の編成となり、地元大阪を中心に活動を始める。2012年に参加した「キューン20イヤーズオーディション」で4000組の中から見事優勝を射止め、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのライブのオープニングアクトを務める。2013年4月には活動の拠点を東京に移し、同年9月にシングル「盛者必衰の理、お断り」でメジャーデビューを果たした。2014年はテレビ東京系アニメ「NARUTO-ナルト-疾風伝」のオープニングテーマ「シルエット」を書き下ろすなど精力的に新作を発表する。2015年1月には2ndアルバム「TIME」を発表。3月には大阪・大阪城ホールおよび東京・日本武道館にて初のアリーナワンマンライブを行い成功を収めた。11月にはシナリオアートとのスプリットシングル「talking / ナナヒツジ」をリリースした。2016年1月にアルバムに先駆けてシングル「ランアンドラン」を、2月に3rdアルバム「Origin」を発表。