音楽ナタリー Power Push - KANA-BOON
葛藤の末に取り戻した自分たちの「Origin」
4人の話し合いが生んだ「Origin」
──4人だけのミーティングのあとは、バンドの雰囲気も変わった?
谷口 すっきりしてクリアになりましたね。結果として「Origin」というアルバムがいいものに仕上がったのが、まずは話し合いの功績かなと。
古賀 直接音に出るからね、気持ちが。
──歌詞に対する影響もありました?
谷口 ありましたね。話し合いをした直後に「スタンドバイミー」の歌詞を書いたんです。4人の話し合いにたどり着くまでの葛藤を本音で書けたし、そこからバンドのビジョンも開けた感じがして。「スタンドバイミー」の歌詞が書けてなかったら、アルバムの形も違っただろうし、今の状況もなかったと思います。
──タイトル曲の「Origin」からも、「音楽にドキドキしていた昔の自分を取り戻すんだ」という意思が伝わってきました。
谷口 この曲もわりとレコーディングの最後のほうに作ったんですよね。タイトルが「Origin」だから、アルバムのコンセプト的な曲って捉えられがちなんですけど、重いテーマがあるわけではなくて、子供の頃のヒーローを思い出してる感じなんですよ。それも「原点」とか「始まり」かなって。アニメとか特撮モノとかマンガとか……。
飯田 俺らだったら「忍者戦隊カクレンジャー」とか。
谷口 そうそう(笑)。思春期の頃は「週刊少年ジャンプ」をずっと読んでたし、いろんなヒーローの存在とずっと触れ合ってた気がして。特に僕ら4人はそういう、ヒーローに憧れていたときの気持ちが心に残ってるんです。
──KANA-BOONはそういう時期を共有してきた高校時代からの友達同士ですもんね。
谷口 そう、高校時代から時が止まってるんで。それがよくないときもあるんですよね。くだらない話ばかりしていて、マジメな話にならないので。
──だからこそ、4人でしっかり話し合うことが必要だったんですよね。
谷口 はい。
フーファイとアジカンの影響
──今回のアルバムは音楽的な振り幅も大きく広がっていて。トリッキーなリズムアレンジを取り入れた「机上、綴る、思想」、ドラマチックなメロディが印象に残る「インディファレンス」、ポップスとしての完成度が高い「グッドバイ」などは、今までのKANA-BOONにはなかったテイストの楽曲ですよね。
谷口 はい。今までのモードからは脱却したいという気持ちはありました。ただ、新しいことを実験的にやろうということでなくて、KANA-BOONのイメージとして定着してなかった面を出してあげようって感覚なんですけどね。もう1つ望んでいたのは、パワー感のあるバンドサウンドにしたいってことで。
──確かにパワーがありますね、このアルバムは。Foo Fightersみたいな雰囲気というか……。
古賀 お!
飯田 バレてるなあ(笑)。
古賀 レコーディング中にフーファイのDVDを観てたんですよ。
谷口 ドキュメンタリー映画の「BACK AND FORTH」ね。なんて言うか、もっと骨太な音にしたかったんですよね。僕らが一番好きなASIAN KUNG-FU GENERATIONが、最新アルバム「Wonder Future」をフーファイのスタジオでレコーディングして、すごく強い音を鳴らしていた影響もあったし。それぞれの楽器の音に関しても、普段とは違う取り組みをしてますね。ドラムもいつもとは違うものを使ったりしてたんですよ。
小泉 フーファイのドラムのテイラー・ホーキンスがグレッチを使っていて、鮪が「ああいう音を鳴らしてみたい」って言ってきて。グレッチドラムを叩くのは難しかったですね、すごく。
飯田 まあ、いきなりフーファイの音は鳴らせないから。
小泉 「今の叩き方では、このドラムは鳴らない」ってドラムテックの人にも言われて、自分の叩き方を1から変えてレコーディングに臨んだんです。もちろん、まだまだパワーは足りないですけど。
──ドラムの音が変われば、バンド全体の印象にも影響するでしょうね。ベースに関しても新しいトライがあったんでしょうか?
飯田 去年の途中までは自分の気に入った音があって、ずっとそれを鳴らしてたんですよ。でも、自分が好きな音が曲に合うとは限らないなって思うようになって、いろいろと試すようになりました。ラインで録ってからリアンプしたり、1曲1曲の音色を変えたり。あと「talking」(2015年11月リリースのスプリットシングル収録)からは指弾きもやるようになって。
──「talking」のベースの音は明らかに今までと違いますよね。
飯田 最初はホントに難しくて、地獄でしたけどね(笑)。ずっと自分のプレイを変えたいと思ってたんだけど、なかなか実行に移せてなかったんですよ。でも、できないなりにもがいてみようと思って。例えば「グッドバイ」ではフェンダーのオールドベースを指で弾いてるんですけど、やってみるとけっこう楽しくて。今までのレコーディングは怒られてばかりで楽しくなかったんですけど、今回は楽しく録れましたね(笑)。
──ギターのフレーズのバリエーションもビックリするほど広がってますよね。
古賀 ありがとうございます。レコーディング中は何も考えないようにしてたんですよ。これまでは自分の引き出しの中から探すというか、曲を聴いて、自分の中で想像できる音色やフレーズで構想を立ててたんです。今回はそれを捨てて、何もないところからやってみようと思って。例えば1曲目の「オープンワールド」はSPACE ECHO(ROLANDのRE-201)っていう、テープエコーのビンテージサウンドを出せるエフェクターを使ってるんです。それを買って、速攻で試してみて「よし、これをレコーディングで使おう」って決めて。だから、今までの自分の切り口にはない音色になってるんですよね。フレーズに関しても、ほかの音楽から吸収したものを自分なりに表現できてると思うし、格段にレベルが上がりましたね。
次のページ » 好きなことを追求したゆえに反応はわからない
- KANA-BOON ニューアルバム「Origin」 / 2016年2月17日発売 / Ki/oon Music
- 初回限定盤A [CD2枚組] / 4536円 / KSCL-2686~7
- 初回限定盤B [CD+DVD] / 3780円 / KSCL-2688~9
- 通常盤 [CD] / 3024円 / KSCL-2690
CD収録曲
- オープンワールド
- 机上、綴る、思想
- なんでもねだり
- ランアンドラン
- anger in the mind
- インディファレンス
- talking
- グッドバイ
- 革命
- ダイバー
- スタンドバイミー
- Origin
初回限定盤A CD「KANA-BOONが人間をつくります。」収録曲
- 見たくないもの(再録)
- 目と目と目と目(新ミックス)
- MUSiC(新ミックス)
- ピアスを開けた(新録)
- talking
- うそばっかり(新録)
- クローン(再録)
- かけぬけて(新ミックス)
- 僕らはいつまで経ってもさ(新録)
- Construct Connect(新録)
初回限定盤B DVD収録内容
- KANA-BOONの企画会議 その1
- 盛者必衰の理、お断り THE PARODY Music Video
- KANA-BOONの企画会議 その2
- 結晶星 THE PARODY Music Video
- こいずみのたたかい
- 盛者必衰の理、お断り THE PARODY オフショット
- 結晶星 THE PARODY オフショット
KANA-BOON(カナブーン)
谷口鮪(Vo, G)、古賀隼斗(G)、飯田祐馬(B)、小泉貴裕(Dr)からなる4人組バンド。高校の同級生だった谷口、古賀、小泉を中心に結成され、のちに飯田が合流して現在の編成となり、地元大阪を中心に活動を始める。2012年に参加した「キューン20イヤーズオーディション」で4000組の中から見事優勝を射止め、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのライブのオープニングアクトを務める。2013年4月には活動の拠点を東京に移し、同年9月にシングル「盛者必衰の理、お断り」でメジャーデビューを果たした。2014年はテレビ東京系アニメ「NARUTO-ナルト-疾風伝」のオープニングテーマ「シルエット」を書き下ろすなど精力的に新作を発表する。2015年1月には2ndアルバム「TIME」を発表。3月には大阪・大阪城ホールおよび東京・日本武道館にて初のアリーナワンマンライブを行い成功を収めた。11月にはシナリオアートとのスプリットシングル「talking / ナナヒツジ」をリリースした。2016年1月にアルバムに先駆けてシングル「ランアンドラン」を、2月に3rdアルバム「Origin」を発表。