音楽ナタリー PowerPush - KANA-BOON
インタビューと座談会で大いに語る!「NARUTO」が「シルエット」にもたらしたもの
こちらの想像を必ず超える岸本斉史
谷口 「NARUTO」を担当していて一番うれしかった瞬間ってどういうときですか?
大槻 先生(岸本斉史)との打ち合わせのとき僕が出したアイデアに対して「あっ、それオレが思い付きたかった」って言ってもらえるとうれしかったですね。ものすごいアイデアを持っている方だから、僕が言ったことなんて実際はすでに思い付いていたのかもしれないんですけど、それでも担当の言葉に耳を傾けてくれるから「この人のためにがんばろう」って思える。そう思わせてくれる作家さんなんですよ。(紙束を取り出しながら)で、最終回の前の回のネームをお持ちしたんですけど……。
古賀・飯田・小泉 おおっ!
谷口 (目を背けて)あっ……。
──どうしました?
谷口 ……コミックス派なんです。だから“僕の「NARUTO」”はまだ最終回直前には追いついてなくて……。
大槻 あっ、ごめんなさい!
飯田 大丈夫です、大丈夫です。僕ら3人でちゃんと楽しませていただきます(笑)。
谷口 (チラ見しつつ)うわっ、なんかメッチャいいシーンっぽい!
古賀 うん、メッチャいいよ(笑)。
大槻 ありがとうございます(笑)。で、この回って打ち合わせの時点では、ここまで迫力のあるものになるはずじゃなかったんですよ。でも先生はこの絵を描いてきた。こうやって僕の想像を超えてくる、打ち合わせのときのアイデア以上の絵やセリフが先生から届くとやっぱりうれしくなりますよね。
受け手の興味を止めないためのこだわり
谷口 あと岸本先生ってどういう方なんですか?
大槻 「あっ、やっぱり『NARUTO』を作る人だな」っていう感じの方です。「誰かがある犯罪を犯しました」っていうニュースを観ていてもまず「なんでこの人はこんなことをしてしまったのだろう?」っていうことに思いを巡らせる。「NARUTO」自体そういうお話なんですよね。単純な悪は出てこなくて、敵には敵なりの理由がある。先生は「みんな、それなりに理由を抱えている」ということを絶えず気にする方なんです。そうやって人の気持ちの機微に敏感だから、僕みたいな担当編集にもすごく気を遣ってくださって。
小泉 「先生」なのに(笑)。
大槻 本当ですよね(笑)。
小泉 その打ち合わせをしているときに一番こだわっていることってありますか?
大槻 可能な限りキャラにウソを吐かせないようにしようっていうことには先生も僕もこだわってます。特に表情。「このキャラクターはこのシーンでこういう表情をするのか? しないのか?」っていうことは綿密に話し合いますね。(ネームを改めて手にしながら)……もう1回机の上に広げてもいいですか?
飯田 鮪は無視してください(笑)。
大槻 ははははは(笑)。(ある現場に駆けつけた春野サクラが驚く一連のコマを指さしながら)このサクラの表情にしても最初は現場に到着して、その様子を見て驚かせることにするつもりだったんですけど、最終的にはネームの通り、現場に向かっているときから驚かせることにしてるんです。こうすることで到着してから驚くよりも、感情の動きがよりサクラらしくなりますから。
──慌ててはいるんだけど、何か予感がして心配している感じになりますよね。
大槻 そうなんです。そうやって細かい表情の変化を煮詰めていくようにはしてましたね。
古賀 すみません。普通にサラッと読んじゃってました。
大槻 逆にそれがありがたいんです。キャラクターの感情の動きに違和感があると読み進める手が一瞬止まっちゃいますから。でもそれって音楽も一緒なんじゃないんですか? スムーズに聴いてもらうために実は細かいところにこだわることはあると思うんですけど。
谷口 確かにありますね。「こんなのオレらしか気付かないだろ?」っていうことであっても、そのフレーズを作るのに時間をかけたり、試行錯誤を繰り返したりすることは多いですし。
古賀 で、そのフレーズをサラッと聴いてもらいつつ「でも、なんかいいな」って思ってもらいたいんですよね。
谷口 うん。スムーズに聴いてもらいたい。でも「誰かが気付いてくれたらいいな」っていう思いがあるから、ついこだわっちゃうんですよね。
「NARUTO」が終わるという実感
古賀 あの……。もしかしたら答えにくいかもしれないんですけど、いつ頃「『NARUTO』を終わらせよう」っていう話に?
大槻 僕は今入社3年目で「NARUTO」の担当歴は丸2年。担当になったときには(「NARUTO」のラストエピソード)「戦争編」が始まっていたんですけど、その頃には先生の頭の中では「戦争編で『NARUTO』は終わる」っていう道が見えていたみたいです。当時から「もう終わるよ」「大槻くんもせっかく担当になったのに、新しいキャラクターを登場させられなくてつまらないでしょ?」って言われてましたし(笑)。
古賀 実際「終わる」って話を聞いたときってどうでした?
大槻 「NARUTO」を浴びて育ってきた人間だからなんだと思うんですけど、正直に言ってしまうと「ちょっと意味がわかんねえな」と(笑)。
谷口 僕らもわかりませんでした!
大槻 担当編集者っていう立場でもあるから、なおのこと混乱したんですよ。「しかも、なんでオレが『NARUTO』の最後に立ち会ってるんだろう?」って。
一同 ははははは(笑)。
大槻 それでも連載が続いているあいだは「いかに最後までナルトたちを輝かせるか」っていうことに集中できたんですけど、最終回が完成したら逆に実感がなくなっちゃって。次の号の「ジャンプ」の台帳……雑誌って「この号はこういう構成になります」っていう設計図をもとに作るんですけど、それを見て「あれっ? なんか1個足りねえな」「『NARUTO』だ!」って思ってみたり、スケジュール帳に原稿取りの予定がないことに気付いて「あれっ?」ってなってみたり(笑)。
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- ニューシングル「シルエット」 / 2014年11月26日発売 / Ki/oon Music
- 完全生産限定盤 [CD+DVD] / 3780円 / KSCL-2517~9
- 通常盤 [CD] / 1258円 / KSCL-2520
CD収録曲
- シルエット
- ワカラズヤ
- バカ
初回限定盤DVD(「KANA-BOON MOVIE 0.5 / KANA-BOONのご当地グルメワンマンツアー 2014 “究極の9曲”盤」)収録内容
- 1.2. step to you
- MUSiC
- ミミック
- 見たくないもの
- 東京
- 羽虫と自販機
- ウォーリーヒーロー
- 結晶星
- フルドライブ
- ライブDVD「KANA-BOON MOVIE 01 / KANA-BOONのご当地グルメワンマンツアー 2014」 / 2014年11月26日発売 / Ki/oon Music
- [DVD] / 4104円 / KSBL-6168
KANA-BOON(カナブーン)
谷口鮪(Vo, G)、古賀隼斗(G)、飯田祐馬(B)、小泉貴裕(Dr)からなる4人組バンド。高校の同級生だった谷口、古賀、小泉を中心に結成され、のちに飯田が合流して現在の編成となり、地元大阪を中心に活動を展開する。2012年に参加した「キューン20イヤーズオーディション」で4000組の中から見事優勝を射止め、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのライブのオープニングアクトを務める。2013年4月には活動の拠点を東京に移し、バンド初の全国流通盤となる1stミニアルバム「僕がCDを出したら」をリリースし、夏には「ROCK IN JAPAN FES」「SUMMER SONIC」「SWEET LOVE SHOWER」など大型フェスに出演したことを機に知名度を全国区に拡大させる。2013年9月シングル「盛者必衰の理、お断り」でメジャーデビューを果たし、10月に1stフルアルバム「DOPPEL」を発表。2014年2月に2ndシングル「結晶星」、5月に3rdシングル「フルドライブ」、8月に4thシングル「生きてゆく」をリリース。8月30日に大阪・泉大津フェニックスで行ったキャリア最大規模のワンマンライブでは、約16320人を動員し大成功を収めた。11月にはテレビ東京系アニメ「NARUTO-ナルト-疾風伝」のオープニングテーマ「シルエット」をシングルリリース。また初の映像作品となるLIVE DVD「KANA-BOON MOVIE 01 / KANA-BOONのご当地グルメワンマンツアー 2014」を同時に発表した。