音楽ナタリー Power Push - KAN
“KAN流のかけ算”で生んだ6年ぶりのアルバム
ストリングスアレンジがどんどん面白くなってきている
──ここ数年のKANさんの音楽活動を俯瞰すると、ストリングスを伴ったアレンジや楽器編成を押し出しているようにも感じられます。
押し出してますね。いろいろやってる中でもここ数年はすごく楽しいです。オーケストラの譜面を何度か書かせてもらっている中で、特にストリングスを書くのがどんどん面白くなってきています。
──アルバムの1曲目に入っている、既発シングル曲をアレンジした「Listen to the Music ~Deco☆Version~」には新たにストリングスが加えられたんですよね。
いろいろと弦の譜面を書いている中で、自分のアレンジのパターンが見えてきちゃったんです。なのでこの曲は今まで書いたストリングスではやらなかったことをいっぱいやろう、と思って。楽曲の最後のほうは、サックスソロにピッタリ張り付いた弦を鳴らす、という乱暴なこともやっています。
──確かにストリングスとサックスがハモるというアレンジになっていますね。
ほかの人の作品を聴くと、アレンジャーが書くストリングスって歌に遠慮している、っていう印象があるんですよ。僕は自分でオケを作って歌っているので、例えばストリングスが、(喉元を指差して)ここをかすめるように鳴っていても全然大丈夫。
──KANさんはご自身でかつて「フライングボディアタックのようなストリングスアレンジをやっている」とおっしゃったことがあります。そこからもまた変化している、ということでしょうか?
それをもっとめちゃくちゃにしている感じです。せっかくなのでやってみました。
──「桜ナイトフィーバー ~Album Version~」は、間奏の和田唱さんのギターソロがシングルバージョンとは違いますね。
もともと唱くんが自分でソロのフレーズを作ってきたんです。まずそれを録ってから、それとは別に僕が弾いてほしいイメージを口伝えして弾いてもらいました。そうすると、唱くんが作ったソロのフレーズのほうが明らかにポップだったので、「こっちがシングルだよね」ということになって、僕のほうをアルバム用にしました。
次は31周年をどうするか
──KANさんは、芸能活動29周年を迎えるにあたり、今年2016年を「特別感謝活動年」と銘打っています。これまであまりこうした大々的なプランを発表したことはなかったように思います。
ないですね。
──この「6×9=53」のリリースをはじめ、複数の作品のリリースやライブツアー開催などで息つく暇もないのでは?
1990年代に比べたらなんてことないです。当時は僕もそうですし、日本の音楽シーンでは「毎年ニューアルバムを出す」というのをみんな当たり前にやっていましたから。アルバムを作って、ツアーの途中にはもう次のアルバムを作り始めないといけない。その状況を考えると、風邪さえ引かなきゃ大丈夫です。
──2017年にはこれまではなかったストリングスカルテットの編成でも、アルバムの発売やツアー開催が予定されています。
今はストリングスの譜面を書くのがすごく楽しいですから。特にカルテットは本当に難しい。譜面を書く前に全体の構成を作らないと書き始められないんですよ。録っている途中で調整できない。時間はすごくかかりますけど。
──KANさんにとってはチャレンジ、ということでしょうか。
チャレンジと言うのであれば、フルオケをもっとやりたいですが、規模感としてなかなか自分で作れるものではないので。弦カル(弦楽カルテット)ならこっち発信でやれますし、やっていてすごく面白いです。
──ストリングスカルテットでのアルバムには新曲も収録されますか?
できれば新しい曲も入れようかなー、くらいのつもりでいますが、基本的にはセルフカバーです。
──ではオリジナルアルバムの次回作は、現在のペースで行くと、いったい何年後になるでしょうか?
2018年の31周年記念をどうするか、っていうのを今ちょうど考えているんですよ。
──31周年。素数ですね。
そう。23周年、29周年があって、次に何かやるとしたら31周年じゃないですか。あと2年ですよ。それまでにアルバムは……無理だろうなあ(笑)。
CD収録曲
- Listen to the Music ~Deco☆Version~
- 胸の谷間
[with TRICERATOPS / Cho:菅原龍平] - ポカポカの日曜日がいちばん寂しい
[Duet with 佐藤竹善(SING LIKE TALKING)] - 安息
[作詞:桜井和寿(Mr.Children)] - どんくさいほどコンサバ
[G:根本要(STARDUST REVUE) / Cho:佐藤竹善(SING LIKE TALKING) / Piano:塩谷哲] - scene
[Dr:吉田佳史(TRICERATOPS)] - ブログ! ブログ! ブログ!
- 桜ナイトフィーバー ~Album Version~
[Special Guest Guitar Solo:和田唱(TRICERATOPS)] - 寝てる間のLove Song
- ロックンロールに絆されて
[Duet with 馬場俊英]
DVD収録内容
- Recording Documentary【6×9=53が成り立つまで】
KAN(カン)
シンガーソングライター。1962年、福岡県生まれ。1987年に「テレビの中に」でデビュー。1990年のシングル「愛は勝つ」が200万枚を超えるセールスを記録した。2002年に音楽留学のためパリに移住し、2004年に帰国。大の素数好きを公言しており、デビュー29周年の今年2016年を「KAN芸能生活29周年記念 特別感謝活動年」と銘打ち、精力的な活動プランを公表している。2016年2月、6年ぶり16枚目のオリジナルアルバム「6×9=53」をリリースした。