上白石萌音|n-buna(ヨルシカ)、大橋トリオ、橋本絵莉子との対話から見えてくる色彩豊かな萌音の魅力

上白石萌音×橋本絵莉子 インタビュー

胸がキュンとしてます

──上白石さんと橋本さんは今日が初対面だそうですね。

上白石 はい。チャットモンチーさんの楽曲は以前からずっと拝聴していて。カラオケでも歌っていました。

橋本絵莉子 そうなんですね!

上白石 キーが高くてうまく歌えなかったんですけどね(笑)。橋本さんは私にとってベールに包まれた存在なんです。チャットモンチーさんはいろいろなタイプの曲があって、すべてに橋本さんの歌がビシッとハマっていて。どういう方なのか、なかなか想像しづらかったんですけど、今日お会いしたら本当に素敵な方で。今、胸がキュンとしてます。

左から上白石萌音、橋本絵莉子。

橋本 ありがとうございます(笑)。私が上白石さんを認識したのは、「なんでもないや」を歌っているところをテレビで見たのが最初で。あのときはまだ10代ですよね?

上白石 はい。

橋本 10代でこんなに歌心がある女優さんがいるんだなと思って。あと「妖怪ウォッチ」の映画(2017年12月公開「映画 妖怪ウォッチ シャドウサイド 鬼王の復活」)で天野ナツメの声をやっていましたよね? 息子が妖怪ウォッチの大ファンで、「面白かった」って言ってました。

上白石 まさか「妖怪ウォッチ」も知っていただいていたとは!

橋本 今、22才ですよね? すごくしっかりされてますね。

上白石 いえいえ……まだ猫をかぶってます(笑)。

──橋本さんが22才の頃は、チャットモンチーでメジャーデビューした時期ですよね。

橋本 そうです。ちょうど上京した頃ですね。

上白石 そうなんですね!

10代の頃の気持ち

──橋本さんが提供した「白い泥」は、NHK Eテレで放送中のアニメ「メジャーセカンド」第2シリーズのオープニング曲です。橋本さんにはどういう依頼があったんですか?

橋本 上白石さんのスタッフの方からお話をいただいたんです。アニメのオープニング曲であること、アルバム「note」に収録されることも聞かせていただいて、もちろんうれしかったんですが、最初は「私に書けるかな?」と思って。野球部ではなかったし(笑)、私が作って嘘にならないか、10代の頃の気持ちを思い出せるか?ということを考えて。私は歌詞から書くんですけど……。

上白石 いつも歌詞から書かれるんですか?

橋本 はい。いろいろ考えて、中学の頃のことを書いてみようと思って。かなり厳しめの吹奏楽部だったんですよ。自分で言うのも変ですけど、かなり真面目にやっていて。その頃の気持ちを歌詞にしたことはあまりなかったんですよね。

上白石 「白い泥」には橋本さんの経験も反映されているんですね。橋本さんが送ってくださったデモ音源が素晴らしかったんですよ。ギターと歌の弾き語りだったんですけど、「橋本さんの新曲だ!」って。

橋本 ありがとうございます(笑)。

上白石 デモの時点で完成されてたんですよね。ギター1本だけでもすごく広がりがありましたし、「この素晴らしい曲を私が歌うのか……」とプレッシャーを感じました。中学のときは帰宅部だったので、部活の思い出もなく。レコーディング当日まで、どう歌うべきか迷っていましたね。

橋本 そうだったんですね。

上白石 メロディにも歌詞にもすごく力があって、ちょっと力を抜いて歌うだけで、全体のニュアンスが変わってしまったり。キラキラした感じ、ハツラツとした青春真っ只中の雰囲気は残しながら、どうやって形にするか……楽しかったけど、「これで大丈夫かな」と思っていました。

「その景色を見せてあげたい」

──「白い泥」の上白石さんのボーカルはいかがでした?

橋本 素敵でした! 「白い泥」は私も歌うのが難しくて。メロディに起伏があるから、デコボコした歌になりがちなんですよ。デモ音源を作るときも何度も歌い直したんですが、上白石さんの歌は全然デコボコしてなくて、うまく乗り越えていて。感激しました。

上白石 そう言っていただけて安心しました。レコーディングは大変だったんですけど、語感のよさがすごくあって、歌っていて気持ちよかったんです。独特のリズムとメロディと言葉がぴったりハマっていて、出会うべくして出会ったという感じがあって。

橋本 歌いづらいんじゃないかなと思っていたから、よかったです。歌詞を書いてしまうと言葉を削るのが難しくて、ちょっとくらい歌いづらくても、そのまま曲にすることが多くて。「白い泥」もそうだったから、心配だったんですよ。

上白石 いえいえ、そんな。「白い泥」の歌詞は、どこから書き始めたんですか?

橋本 最初に出てくるサビの部分ですね。言いたいことを先に書くことが多いので、サビからできることが多いんです。

──「あなたに見せたい景色がある」ですね。

橋本 中学時代に吹奏楽部の先輩に言われた言葉をそのまま書いたんですよ。

上白石 え、そうなんですか?

橋本 はい。コンクールを勝ち進むと、そのたびに何度も演奏できるんですけど、「その景色を見せてあげたい」って言ってくれて。今振り返ってみると、けっこういい話ですね(笑)。

上白石 めちゃくちゃ素敵です。青春群像劇みたいです。

橋本 負けたときに「連れて行ってあげられなくてごめん」と言われたんですけど、その言葉もめちゃくちゃ覚えていて。

上白石 そのお話、「メジャーセカンド」のストーリーにも通じてますね。勝ち抜かないと見られない景色があるっていう。“泥”や“スポットライト”もそうですけど、野球場につながるような言葉もあって。外を走り抜けるというか、解放的な雰囲気を念頭に置いて歌いました。とにかく曲が素晴らしいので、余計なことをしないでストレートに歌おうと。

──「白い泥」という曲名も野球のイメージですよね。

上白石 そうですね。私、ホームベースが浮かびました。

橋本 あ、そうなんですね。私は“染まっていない泥”というイメージだったんです。あとは、上白石さんの名前に“白”が入ってるので、それも使いたくて。

上白石 えーっ!? うれしいです!

左から上白石萌音、橋本絵莉子。
橋本絵莉子(ハシモトエリコ)
橋本絵莉子
1983年徳島県生まれ。2000年に地元・徳島でチャットモンチーを結成し、ギター&ボーカルを担当。2005年11月、ミニアルバム「chatmonchy has come」でメジャーデビュー。シングル21枚、オリジナルアルバム7枚をリリースしたのち、2018年7月に徳島で開催したイベント「チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2018 ~みな、おいでなしてよ!~」をもって活動を完結させた。2019年9月にオフィシャルサイトを開設し、ソロ活動を開始。2020年6月に数量限定デモCDの第2弾となる「Demo Series Vol.2」をリリースした。また楽曲提供や、CMソングの歌唱などの活動も行っている。