上白石萌音|n-buna(ヨルシカ)、大橋トリオ、橋本絵莉子との対談から見えてくる色彩豊かな萌音の魅力

上白石萌音×大橋トリオ インタビュー

私の“大橋トリオ愛”

──「Little Birds」は、上白石さんが大橋トリオさんの大ファンだったことがご縁で生まれた楽曲なんですよね?

上白石 ……はい。ものすごく恐縮しています! 私は大橋トリオさんの音楽が本当に大好きで、朝も昼も夜もずっと聴いていました。本当にただのファンだったので、「楽曲提供をしていただきたい」なんて口が裂けても言えなかったんです。でも、そんな私の“大橋トリオ愛”を知っているスタッフさんが「だったらお願いしてみよう」と後押ししてくださり、実現することができました。大橋トリオさんにも、そのスタッフさんにも、本当に感謝しています。

左から大橋トリオ、上白石萌音。

大橋トリオ そう言ってもらえるのは本当にうれしいですね。ただ、正直このお話をいただくまで萌音さんの歌声を聴いたことがなかったんです。最初はビジュアルのイメージからかわいらしい声なんだろうなとは思っていましたが、実際に聴いたらすごくちゃんとしていて、歌手としてのオーラと説得力がしっかりとあって驚きました。まだ22歳という若さなのに引き込まれるうまさがあったので尊敬しましたね。それから曲が生まれるまで時間はかからず、むしろイメージがあふれてきて2曲も作ってしまったんです(笑)。

上白石 まず最初にその2曲を聴いたときに、大好きなアーティストの新曲を聴いているような感じでした。どちらの曲も本当に素晴らしくて、1曲を選ばなくちゃいけないという現実が本当に残酷だったんです。何日も迷った結果、「Little Birds」を選ばせていただきました。

──本当に悩んだんですね。

上白石 そうなんです。苦渋の決断でした。どちらかを選んだらどちらかを歌えないということが切なすぎるくらいうれしくて……。さらにいつも聴いている大橋トリオさんが、私の声に合わせて曲を作ってくださったという事実があることだけで「すごい人生になっちゃったな」と感慨深かったです。

大橋 もちろん自分でも歌いたいと思うような曲だったので、今回選ばれなかった曲は僕がちゃんと歌いますね。

上白石 やったー! 楽しみにしています!

──歌詞もすごく素敵ですよね。

上白石 そうなんです。最初にメロディを聴いたときは、どんな歌詞になるんだろうと思っていたんですが、実際に乗った言葉が本当に気持ちよくて、メロディが喜んでいるようにピタっとハマっていたんです。この曲なら特別なことをしなくても、声を出すだけで素敵なものになると実感して、レコーディングがすごく楽しみでした。

この声を大切にします

──実際にレコーディングをしてみていかがでしたか?

大橋 萌音さんは歌手としての存在感、オーラがあるだけでなく、しっかりしていて責任感がすごくあるんです。ちゃんとキャリアがあるからこそ注文してもすぐに対応できるので、楽しみながらできましたね。それに上白石さんはすごく声がいいんですよ。とはいえ声がいいというだけでは魅力にはならないんです。そこにちょっとした表現力が加わって、若くてかわいらしい声質なのに成熟していて。どこかで一生このまま変わらないでいてくれるという安心感もあるからこそ、すごく素敵に響くんですよね。

上白石 うれしいです。この声を大切にします。そういえば私、CDの音源にハモるのが趣味なんですよ。大橋トリオさんの楽曲にもよくハモっていました。

大橋 わかる。僕もほかの人の曲によくハモります。なんなら「なんでここにハモりを入れなかったんだろう」って思ったりもしますね(笑)。

上白石 わかります(笑)。大橋トリオさんの曲ってハモリがすごく素敵ですよね。緻密に織り合わさっているような感じがして。

大橋 実はハモリは最後の最後に詰める作業なので、本当は適当だったりするんです(笑)。この曲のハモリも感覚で決めたんですが、それが最終的に正解になることが多いんですよね。

上白石 そうだったんですね。ハモリが入った瞬間に楽曲の表情が変わるような感じがしたので、魔術のようだなと思っていました。

大橋 僕の中ではハモリで音楽的に完成させていることがすごく重要だと思っていて。普通にメロディを歌っている中でも、ハモリで動いていくと気持ちよかったりするじゃないですか。そういう音楽を作りたいんですよね。

上白石 楽器と主メロとハモリの総合芸術みたいですよね。ハモリと主メロ、どちらも主役のような瞬間があって、それがすごく面白いと思いました。

上白石萌音の可能性は無限大

──大橋さんにディレクションしてもらう中で気付いたことはありましたか?

上白石 驚きと感動の連続でした。音楽ってこうやって作るんだということを、ゼロから感じることができたんです。音楽の繊細さを改めて感じることができましたし、その上での歌う気持ちも変化があったので、大きく成長ができたと思います。きっとこれから歌を歌うときは、必ず今日のことを思い出すと思うくらい幸せな時間でした。ディレクションを受けたすべてのことを録音したいくらい学びの連続だったんですよ。

大橋 マイクは「49」(Neumann TLM49)を使うんだよ?(笑)

上白石 はい! これからは教えていただいた「49」というマイクを使って録音したいと思います!

──大橋さんが今後上白石さんに期待することはどのようなことでしょうか?

大橋 可能性が無限大すぎて、僕から指定することはおこがましいんですが、その謙虚な姿勢や人間性は大事にしてもらいたいですね。あとは音楽をやり続けていると、どんどん耳が肥えるので、極力いいミュージシャンやプロデューサーと一緒にお仕事をしてほしいです。

上白石 ありがとうございます。今はこのご時世なのでなかなか実現ができないんですが、いつか大橋トリオさんのライブに行きたいと思っています。

大橋 ぜひ遊びに来てください。いつか共演できたらいいですね。

上白石 はい。……え!? 今無意識に答えてしまいました! そんな大それたこと! 私は一観客として聴きに行きます!

大橋トリオ(オオハシトリオ)
大橋トリオ
2007年にアルバム「PRETAPOTER」でデビュー。シンガーソングライターとしての活動のほか、テレビドラマ、CM、映画音楽の作家としても活躍。代表作には映画「余命1ヶ月の花嫁」「雷桜」「PとJK」の劇伴などがある。最近ではNHK Eテレの子供向け番組「にゃんぼー!」の音楽や、TBS系「世界遺産」のテーマ曲も担当。2017年にデビュー10周年を迎え、2020年2月に通算14枚目となる最新アルバム「This is music too」をリリースした。