無茶なことをすると気分がすっごいスッキリする

斎藤　ご自分の経験ではどうですか？ 配信でいい影響があったと感じます？

の子　いい影響か……。バンドの実績の面では配信の影響って考えてるんですけど、自己セラピーの面では考えたことなかったな。でも言われてみると、配信が自分を変えた一番のきっかけになったかも（笑）。

斎藤　すごいじゃないですか。治療以上にすごい影響です。

の子　いやー、わかんないっす（笑）。でも配信のときは普段と別人のようにめっちゃしゃべってるんで。こんだけ長年配信やって多くの人としゃべってりゃ、そりゃ多少変わると思います。

斎藤　配信をやってるときの自分ってどういう状態なんですか？

の子　俺、長いときは9時間くらいずっとしゃべってるんですよ。最近自分で録画してみたんですけど、配信しながら寝て、起きてまだしゃべってた（笑）。それ観てホントにびっくりして。まあ一種の病気みたいなものなんじゃないですか（笑）。

斎藤　それは対話ですか？ 独り言ですか？

の子　対話です。独り言じゃないですよ（笑）。よく「お前は1人でパソコンとしゃべってて」みたいなこと言う人もいますけど。

斎藤　傍目に見たらそう見えるだけであって。やってることは対話だと。

の子　うん。やってみたらわかりますよ。みんなああなりますよ。

斎藤　配信ではしゃべるのみならず、過激なパフォーマンスをしますよね。

の子　ああ（笑）。でもそれはたまにですよ。年に1回程度。今は自分のニコニコチャンネルを持ってるんで、ちゃんとした規律を守ってる配信者としてやってます。

斎藤　過激なことをするときは、演じてる感じですか？

の子　そういうことをするのってイライラしてるときなんですよ。やっぱりイライラするとすごい破壊衝動が出てきちゃって。薬と酒を一緒に飲んでワーってやっちゃうときと同じ感覚で。

斎藤　配信でやりすぎて「しまった！」とか頭抱えることはないですか？

の子　外配信で無茶なことやったあとって、気分がすっごいスッキリするんです。あれはたぶん、やった者にしか味わえないものですよ。いいライブをしたあとも近い感覚はあるんですけど、外配信で「かましてやったぜ！」みたいなことをしたあとは、なんかすごいスッキリする。まあ結局マスターベーションみたいなものなんですけど。

「神聖かまってちゃん式配信療法」をマジで考えますよ

斎藤　最近「絶歌」っていう、酒鬼薔薇聖斗の書記が出ましたよね。

の子　はいはい。

斎藤　あの事件について当時はどう見てましたか？

の子　小学生ぐらいのときですかね。別に……他人事でした。

斎藤　遠目に見てる人には、酒鬼薔薇とかまってちゃんは似たくくりに見られているんじゃないかと。

の子　俺この間、誕生日配信したら、みんな酒鬼薔薇についてすごい聞いてくるんですよ。なんで俺が自分の誕生日に酒鬼薔薇のこと話さなきゃいけないんだっていう（笑）。

斎藤　ははは（笑）。ほら、「友達を殺してまで。」とか「みんな死ね」なんてアルバムを出してた初期のイメージが強いから、「これは酒鬼薔薇シンパに違いない」と連想する人はいると思いますよ。

の子　同じイメージって言いますけど、あの本ってなんだかんだで何万部も売れてるんですよね？

斎藤　そこの違いですか（笑）。

の子　その事件のことよくわかんないけど、酒鬼薔薇って本当に殺人鬼であって、気が狂ってるわけじゃないですか。やっぱ本物のキチガイにならないと売れないんだってわかった。俺なんか中途半端なキチガイなんですよ（笑）。

斎藤　私は精神科医だからこういう見方しちゃうんですけど、音楽やってる人って、本当におかしな人っていないんですよね。極端なことをする人はいっぱいいますけど。

の子　そうなんですよ！ 例えば戸川（純）さんにしろオーケン（大槻ケンヂ）さんにしろ、俺の中で作られたイメージではものすごいぶっ飛んだ人だったんですけど、会ってみたら2人とも自分と似てるところがありましたね。

斎藤　小説家や画家とかは1人で完結できちゃうんでホントにおかしい人がいるんですけど、ミュージシャンや映画監督は最小限の協調性がないとできないんだなあ、と。

の子　映画監督は無理でしょうね。全力でバックアップしてくれる人だけで周りを固めれば、あっぱらぱーなキチガイでもいいのかもしれないけど。

斎藤　そういう意味で言えば、の子さんもメンバーとの固い絆があったからやってこれたのでは？

の子　まあ俺も、中途半端なキチガイではありますけど、たまにおかしくなったこともあったんで、今までやってこれたのはメンバーやスタッフが支えてくれたおかげだと思ってます。周りの人に恵まれてたっていうのは大きいですね。

斎藤　支えようと思えるだけの魅力がないと見捨てられちゃうものなんですよ。の子さんにそういう魅力があるわけです。

の子　酒鬼薔薇の本が売れてるって聞くと思うけど、やっぱり人間誰もが、本当に人を殺すまでいかなくてもそういう面を持ってるんですよ。それをコントロールできない奴が、ああやって実際に殺人を起こしちゃう。

斎藤　そうですね。やっぱり配信の力でガス抜きすればいいんですかね？

の子　でも配信のせいで犯罪者予備軍みたいに呼ばれるようになった有名配信者もいますけどね（笑）。まあ、自己セラピーにはなるのかもしれないですね。

斎藤　それを確信しましたね、今回の対談で。

の子　じゃあ「神聖かまってちゃん式配信療法」っていうのをマジで考えてください（笑）。

斎藤　ええ、マジで考えますよ。