ナタリー PowerPush - JUJU
“ストーリーテラー”が語るジャズへの憧れ
知らないうちに“JUJUの喉”ができた気がします
──過去と現在で、自分の声や歌い方はどのように変化したと思いますか?
知らないうちに“JUJUの喉”ができた気がします。ジャズアルバムのときの声が、たぶん私のオリジナルの声なんです。デビューする前はあの声でした。それが2004年にデビューして、最初の頃はおそらくそのままの喉で歌っていて。で、2005年かな、川口大輔くんと一緒にバラード曲のレコーディングをしているときに「その歌い方だと日本語のバラードは届かない」って言われたんです。その歌い方だといらないところにビブラートがかかっていたり、語尾がよく聞こえない、みたいな。私は今まで生きてきたことすべてを否定されたような気分になって、私と大ちゃんの関係はその場でそれはそれは凍りついたんですけど(笑)。
──ははは(笑)。深く傷付いたと。
でも1回持ち帰って、川口くんが言うとおりに、ビブラート少なめ、言葉をちゃんと発音するっていう歌い方と、私が好きなように歌ったのを2つ録って聴いてみたら、「なるほどね」だったんです。「日本語を届けるっていうのはこういうことなんだ」ってそのときにわかって。その1週間後ぐらいに2人でまたスタジオに入って歌ったとき、何を言わずともすごくいい雰囲気で、理解し合えた気がしましたね。
──いいお話ですね。
それ以来私は「日本語をちゃんと届けたい」っていうことだけ考えて、そういう歌い方を知らず知らずしていたみたいなんです。で、一昨年ジャズアルバムを作るときに初めて気付いたんです、「あ、違う喉!」って。つまり、ジャズを歌ってる喉と、JUJUが使ってる喉の場所が全然違うと。「ああ、知らないうちにJUJUの喉っていうのができあがってたんだな」って思いました。だからジャズライブの最後に「奇跡を望むなら...」を歌うことになったとき、どう声を出したらいいかわからなくなって。違うところで歌ってたんだなって気付いたときはちょっと唖然としましたね。
──じゃあJUJUの歌唱的ターニングポイントは……。
あの大ちゃんとのセッションだと思います。
まさかバラードが正解だったとは
──活動全般で考えると、大きな分岐点はどこだったと思いますか?
一番のターニングポイントは、「奇跡を望むなら...」をリリースしたタイミングですね。あれがなかったらたぶん今はないだろうし。
──先ほどおっしゃっていた、ファンの存在を初めて感じたというのは「奇跡を望むなら...」?
はい。
──この曲は、「これがヒットしなかったら次はないかも」とJUJUさんの中でも覚悟して出した作品だと聞きました。
そうですね。2004年にデビューして、最初の2作がセールス的にうまくいかなくて、そこから2年間当てどもなく制作を続けて。疲れ果てているときに「もしかしたらこれで最後かもしれません」っていうふうに言われてこの曲をレーベルから提案されたんです。「ホントにこの曲ですか?」っていう思いはちょっとあったんですけど、言い争う気力もないぐらいホントに疲れ果てていて。でも、どうしてもこの曲だっていうならば、そしてこれがもし本当に最後になるならば、誠心誠意取り組んで、振り返ったときに後悔が残らないようにしようって思ったんですよね。でもまさかバラードが正解だったとは、目から鱗でした。
──不遇だった時代も今も、歌手活動をする上で信条としていることがあったら教えてください。
ストーリーテラーであること。ずっと変わらずこれです。
──どういうことでしょう?
歌を歌うときに、私はその物語を読む人でありたいんですよね。私が歌っているけれど、その内容って皆さんが過去に経験したことあるようなものだったり、現在進行形でそういう状況だったり、これから先にあるようなことだと思うんです。もう私じゃなくて自分が歌ってるような感覚になっていただきたくて。だから私は、自分の主観ではないところで、物語を冷静に読む人でありたいって常に思ってます。
原点に戻ってduoで12カ月連続「ジュジュ苑」?
──話は変わって、昨年から今年にかけてホール、ジャズクラブ、アリーナなどさまざまなステージに立ったわけですが、今後どんなライブをしてみたいですか?
ライブハウスツアーかな。アコースティックで。
──まだやったことないですか?
ライブハウスだけのツアーはやったことないかもしれないです。あと、ロックバンドがやりたいです(笑)。ダンスミュージックばっかりのアルバムを1枚作って、クラブツアーもいいかもしれない。とにかく毎月どっかでパーティやりたいですね(笑)。
──やりたいことがすごくバラバラなんですけど(笑)。それに、毎月のパーティは2008年の12カ月連続「ジュジュ苑」ですでにやってますよ?
確かに。あ、でもあの「ジュジュ苑」もう1回やりたいんです。原点に戻ってduo(渋谷duo MUSIC EXCHANGE)で12カ月連続で「ジュジュ苑」……一番やりたいかもしれない。
──ドームでやりたいとか海外ツアーをしたいといった拡大する方向より、小箱でじっくり歌を届けたいっていう欲のほうが強いんですかね。
そうですね。この前初めてアリーナツアーをやらせていただいて、アリーナはアリーナでむちゃくちゃ楽しかったし、アリーナになったからってブルーノートみたいなお客さんとの距離感と違うかって言ったら全然そんなこともなかったんですよね。だから大きくなっても楽しいのかなとは思うけれど、やっぱりなんだろう……ちょっと心配になるんですよね。一番遠いところの人の顔とか見て「あの人、つまんなくないかな」ってすごく心配になる(笑)。そういう意味では大きすぎるよりもちっちゃいところのほうが安心ですかね。やってみたいです、「ジュジュ苑」ライブハウスツアー。あ、レーベルスタッフが目をそらした! あははは(笑)。
- WOWOWライブ「JUJUスペシャル ~JAZZ・COVER・ORIGINAL全て見せます~」
- 2013年年11月4日(月・祝)
- 15:00~「JUJU MUSIC LIBRARY」 16:00~「JUJU ジュジュ苑全国ツアー2012 at 日本武道館」 18:00~「JUJU JAZZ TOUR 2013 at ブルーノート東京」
JUJU(じゅじゅ)
18歳で単身渡米。ニューヨークでシンガーとしての実績を積んだのち、2004年8月にシングル「光の中へ」でメジャーデビュー。2005年から日本でのライブ活動をスタートさせる。2006年にリリースしたシングル「奇跡を望むなら...」は、異例のロングヒットを記録。2010年3月発表の3rdアルバム「JUJU」は第52回日本レコード大賞優秀アルバム賞を受賞し、同年9月にリリースしたカバーアルバム「Request」はオリコン2週連続1位を獲得する。2012年11月には2枚同時に初のベストアルバム「BEST STORY ~Love stories~」「BEST STORY ~Life stories~」をリリース。2011年、2013年にはジャズアルバムを発表している。