2021年9月から12月にわたり全11公演が開催された「JUJU ARENA TOUR 2021 YOUR STORY」。そのファイナル公演となった北海道立総合体育センター 北海きたえーるでの模様が、2月13日にWOWOWで独占放送される。
ベストアルバム「YOUR STORY」を引っさげて2020年の9月からスタートする予定だった同ツアーは、新型コロナ感染拡大の影響を受けて全日程の延期が決定。そこから1年を経て、改めて行われたツアーにおいてJUJUは、「皆さんの前で歌うことがいかに当たり前ではないか、という気持ちがより一層強まった」と語っている。そんなツアーをどんな思いで巡り、そしてファイナル公演ではどんな思い出を作り上げたのか。WOWOWでの放送への期待値を高めるエピソードをJUJU本人にたっぷりと語ってもらった。またインタビューの後半では、3月16日にリリースされる松任谷由実の楽曲だけで構成されたカバーアルバム「ユーミンをめぐる物語」と、5月から開催される全国ホールツアー「JUJU HALL TOUR 2022 不思議の国のジュジュ苑 -ユーミンをめぐる物語-」の話題にも触れている。
取材・文 / もりひでゆき撮影 / Hana
会えない時間が長すぎてMCが空回る
──2020年4月にリリースされたベストアルバム「YOUR STORY」を引っさげたアリーナツアーは、本来なら同年9月にスタートする予定でしたが、新型コロナの感染拡大の影響により1年の延期を余儀なくされてしまいましたね。
あのときは世界中で起きていることが未知すぎて、自分たちが直面していることがなんなのかすらわかっていなかった感じがありましたね。ただ、皆さんが不安を抱えた状態でライブに来なくてはいけないということが一番嫌だなと思ったので。生きている中で起こることには必ず理由があると私は思うようにしていて、もちろん残念ではありましたけど、なんとかその気持ちを落ち着けた感じで。お楽しみを先延ばしにすることで、未来への希望が増えればいいなという願いがあったような気もします。
──1年の延期を経て、いざツアーが始まったときのお気持ちはいかがでしたか?
2021年の春に「俺のRequest」という男性カバーアルバムを携えたツアーを先にやらせていただいたんですけど、そのときにものすごく痛感したんですよ。皆さんの前で歌うことが当たり前ではないということを。ツアーで全国各地を巡ることができるありがたさも同時に感じましたし。その後「YOUR STORY」のツアーをスタートさせたことで、ライブに対しての気持ちはより一層強くなっていきました。延期した1年もの間、払い戻しをせずにチケットをずっと持っていてくれた皆さんとお会いしたことで、自分の中に湧き上がってくる感謝と感激の感情はひとしおでした。
──延期を経ての再会には感極まるものがありそうですよね。
そうですね。自分でも本当にビックリしたんですけど、皆さんと会えない時間が長すぎて話したいことや伝えたいことがたくさんあったから、MCでものすごく空回るんですよ。子供って、「ねえねえ聞いて聞いて! あのね、あのね、それでね」みたいな感じで、焦りすぎて伝えたいことを全然伝えられなかったりするじゃないですか。まさにそういう感じ(笑)。今までMCでしゃべることに関しては全然緊張しなかったのに、初日なんかは特にガチガチでしたね。「あ、私ってめちゃくちゃ緊張するんだな。めちゃくちゃ空回るんだな」ということを今回のツアーで知ることができました(笑)。公演を重ねていく中で徐々に普段の感覚を取り戻してはいったんですけど。
目は口ほどに物を言う
──セットリストはどんな思いで組み立てていいきましたか? ベストアルバム「YOUR STORY」は4枚組で全52曲が収録されていたので、そこから選曲していくのはなかなか大変そうですが。
選曲はかなり大変でしたよ。ベストに収録されていたのはどれも自分の音楽活動におけるハイライトみたいな曲ばかりなので。
──ライブの冒頭はコロナ禍の今だからこそより強く響いてくる選曲がなされていたようにも感じたのですが、そのあたりは意識されました?
コロナ禍を念頭に置いた曲選びはしなかったかな。コロナにまつわる出来事の印象は強烈に心に残っているから、意識せずとも何らかの影響があったのかもしれないですけど。ただ、オープニングを飾る1曲目に関しては迷わず決まったんですよ。私が「始まりはあの曲がいいと思うんだけど」ってチームのみんなに言ったら、満場一致で「わかる!」って。
──あえて曲名は伏せますけど、本当に温かなメッセージが胸に響いてくる感動的なオープニングだったと思います。
昔、嫌なことが続いて落ち込んでいた私に対して、友達が「どう過ごしたとしても1日は1日なんだよ。だから笑って過ごしてね」って書かれた手紙をくれたことがあって。それ以来、私はしんどいときこそ口角を上げていきたいと思うようになったんです。今回のツアーを通して何かしらのメッセージを込めたとしたら、そういった思いかもしれないですね。1曲目に関しても、自分の未来は自分の手でどんな形にも変えていくことができるんだと信じる気持ちを伝えたかったから選曲したんだと思います。
──それはある意味、いつものJUJUさんのライブに満ちている空気感でもありますよね。コロナ禍だからといって変に感傷的になったり、特別なメッセージを込めるわけではなく、いい意味で普段通りというか。
ですね。私がシンガーソングライターだったら、たぶんコロナに対して思うことを曲として書いたのかもしれない。でも、私はあくまでストーリーテラーなので、それぞれの曲を通して「あなたはどんな物語を紡いでいますか?」と問いかけるライブをいつもしているんです。それは今回のツアーも然り。なので、いい意味で普段通りのライブだったと感じていただけるのはすごくうれしいことではありますね。
──とは言え、お客さんはずっとマスクをした状態で、声を出せないというイレギュラーな状況でのライブでもあったわけで。それを踏まえて見せ方を試行錯誤したところもありましたか?
コロナ禍での有観客ライブをやってみたことで、“声が出せない=盛り上がらない”ではないと気付くことができたんです。もちろんこれまでのように客席から飛んでくる突拍子もない質問に答えたりとか、そういうJUJUのコンサートにおける大きな楽しみになっていたコミュニケーションは取れなくなりましたけど、それによってコンサート自体が楽しめないってことでは全然ない。むしろ声を出せないからこそ伝え合える何かがあるとも感じましたし。
──お客さんたちは歓声以外の部分で思いを伝えようとしてくれますもんね。大きく手を振ったりとか。
そうそう。できることが限られると、人はその制限の中でも伝える方法を見出そうとするんですよね。このツアーの最中に、大好きなユーミン(松任谷由実)のコンサートに行かせていただいたんですけど、私は「キャー!」とか「ワー!」とか当然言いたいわけですよ(笑)。でも今はそれができない。そこにはやっぱりもどかしさもあったけど、でもじゃあどうすればこの思いを伝えられるかなと思って、手を振ったりとか大きく拍手をしたりとか、いろいろ自分なりに気持ちを表してみたりして。それもすごく楽しかったんですよね。
──JUJUさんのライブに参加したお客さんもみんな同じ感覚だったでしょうね。
図らずも自分がお客さんの立場を経験したことで、自分のライブに来てくれる皆さんの気持ちがすごくリアルに感じられたんです。だからこそ私は皆さんの気持ちをいつも以上にしっかり受け取ろうとしたところもありました。みんなマスクをしているから目元しか見えていないけど、それでも楽しんでくれていることはちゃんと伝わってきます。“目は口ほどに物を言う”とはよく言ったもんですよ。
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ファイナルはJUJUからファンへの大感謝祭