「juJoe」を知ってほしい
──「juJoe」の収録曲「三十路」は、ご自身の鬱の体験を歌詞にした楽曲ですよね。
平井 juJoeの曲の中で、最初に書いた曲です。「うつになった 自分自身に宛てたメッセージ」という歌詞の通り、鬱になった自分自身へのメッセージを込めています。同時にこの曲が、どこかの患者さんの力に少しでもなればいいなと思って。
ゆうき 人間は自分が思っていることを誰かに話すことによって共有感を得たり、気持ちが整理されたりするんです。なのでこういうふうに作品に落とし込んでらっしゃるのはいいことですね。こういうことを心理学では“昇華”と呼んでるんです。
平井 確かに10日間で一気に7曲書いている間は、アルコール依存の症状が寛解していた気がします。今思えば、あまり酒も飲んでなかった気がするし。
──平井さんは、最近のライブはどういう気持ちで臨まれていますか? お客さんを元気付けたいというような気持ちはあるんでしょうか。
平井 以前はお客さんを元気付けたいという気持ちが中心にありましたが、今はちょっと薄れているかもしれません。今の僕は、たくさんお世話になった音楽業界を勝手に辞めて、勝手に帰って来ただけなので。無料配布している「juJoe」に関しては、「聴いてほしい」「知ってほしい」「今までありがとうございました」という気持ちはあります。でもライブのときにお客さんにメッセージを届けたい、みたいな気持ちは不思議とそこまで強くありません。
──「juJoe」は昨年12月に無料で配信リリースされていますが、ファンからの反響はいかがですか?
平井 「前よりいいじゃん!」とときどき言われます(笑)。別にQOOLANDの曲が悪いわけじゃないと思うんですけど、うれしいですね。
太宰治とアルコール依存
──何かほかにゆうき先生に聞いておきたいことはありますか?
平井 僕たちアーティストや何かを創作してる人って、ちょっと頭がおかしくなってる自分がカッコいいと思っている部分もあると思うんです。例えば、僕が影響を受けた太宰治。彼もアルコール依存症だったし、芥川龍之介やカート・コバーンもカッコいいなって思っていて。極論かもしれませんが、アル中だからこそ太宰治はカッコいい気がする。太宰治が健康的にウーロン茶を飲んで17時から19時までだけ仲間たちと飲み会をして「本当に今日はありがとうございました」と帰って「人間失格」を書いていたら、カッコ悪いなって思っちゃうんですよね。
ゆうき 面白い発想ですね。彼は素晴らしい作品を残したから偉人なのだと思います。飲んだくれは世の中にたくさんいるわけですから(笑)。だから、アルコール依存だから憧れの対象になるわけでは決してないような気がしますね。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という言葉がありますけれども、太宰治や芥川龍之介が素晴らしい作品を残しているからそういう症状もカッコよく見えるだけだと思います。
平井 確かにそうですね。ちなみに「アルコールに依存しているほうがカッコいい」と思っている人が本当に依存してしまうということはありますか?
ゆうき ありますね。心理学では“同一化”と言います。自分を誰かに寄せていくことによって、その誰かに近い人生を送っていくことはあるかもしれないですね。
平井 なるほど。そう思うと自分も憧れの人と同じ行動をしようとすることは多かったかもしれません。でも先生の話を聞いて、確かに世の中に飲んだくれているだけの人はいっぱいいるなって思いました(笑)。
ゆうき 憧れるのはわかります。でもアルコール依存している部分に憧れてしまうと、そこを真似するだけで終わってしまうので。
平井 本当にそうですね。
ゆうき 寄せるなら、“素晴らしい作品を作る”という方向に寄せたほうがよいのではないかと思いますね。
平井 そうですね。
ゆうき 最後に1つアドバイスではないですが、鬱などの精神疾患になる方は自分自身で焦っちゃう方が多いと思うんですよ。理想が高すぎて、その理想像と自分の差に悩んでしまって鬱になってしまう。焦れば焦るほど空回りしてしまうので、今の自分にできることを一歩ずつやっていくのが一番よいのかなと。そういった意味でも今の音楽活動の内容は非常に素晴らしいと思うので、ぜひ今の道を進んでいただければと思います。
平井 ありがとうございました。まずは早くCD1000枚を配りきりたいです!
ライブ情報
- juJoe present's「あしたのために スペシャル床マッチ2」
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2020年1月26日(日) 東京都 下北沢ERA OPEN 11:30 / START 12:00 <出演者> juJoe / シリカ / THURSDAY'S YOUTH