juJoeがニューシングル「supersonic」をリリースした。
juJoeは2024年から2025年にかけて、専門学校ESPエンタテインメント東京の音楽芸能スタッフ科・音楽スタッフ総合コースの学生が授業の一環としてアーティストマネジメントや音源制作、ライブ制作、プロモーションなどを1年間かけて実地で行うプロジェクトに参加。「supersonic」はその集大成となる作品で、ESP学生のサポートのもと制作された。
音楽ナタリーではjuJoeのメンバー4人とESP学園在校生3人にインタビュー。20歳ほど歳の離れた両者の交流、ニューシングルの制作を振り返ってもらった。
取材・文 / ナカニシキュウ写真 / 吉場正和
必要以上に明るくいきました
──まずはjuJoeの皆さんがプロジェクトに参加された経緯から教えてください。
平井拓郎(Vo, G) 以前、2015年にUTB映像アカデミーっていう専門学校の学生たちと一緒にミュージックビデオを作ったこともあって、僕は学生と一緒に何かを作ることがもともと大好きなんです。プロの現場で経験を積んだ人たちと作るクオリティには及ばないかもしれないけど、逆にそこでは得られない初期衝動みたいなものに触れられるから。今回は「お前、こんなん好きやろ」と関係者の方からこのプロジェクトを紹介してもらったのが最初のきっかけですね。
花澤彰典(G) 面白そうだなということでオーディションにエントリーして、実習アーティストに選んでいただきました。
平井 専門学校に通うくらいなんで、ESP学園のみんなは周囲の友達関係の中で一番の音楽インフルエンサーだと思うんですよ。そういう子たちと絡むのが単純に楽しいってのもあるし、数年後にはプロになっている子たちなんで、どこかの現場でプロ同士として再会できるかもしれない。そういうのも含めて、若い子たちと何かを作ることが好きなんですよね。
──プロジェクト開始時のお互いの第一印象はどんな感じでしたか?
佐藤依織(ESP学園在校生 / セールスプロモーション担当) 最初はどういう人が来るのか心配だったんですけど、思った以上に明るい人たちだったのですごく安心しました。
長谷美里奈(ESP学園在校生 / アーティストマネジメント担当) クラスにバンド好きの人が少なくて、たぶんみんな不安が大きかったと思うんですけど。
小林想(ESP学園在校生 / セールスプロモーション担当) 私もあまりバンドを聴いてきていなくて、最初はjuJoeさんのことを存じ上げなかったんです。なので事前に調べておこうと思って「玉砕」を聴いてみたら、もう耳についちゃって何度も何度も繰り返し聴くようになりました。だから最初の顔合わせのときは「本物だー!」って(笑)。
菅秀昭(B) でも、「玉砕」を最初はなんて読んだんだっけ?
小林 「たまくだき」。
一同 (笑)。
花澤 そのエピソード、ずっと擦ってるからね(笑)。
菅 昨日のライブでもMCで使わせてもらったから。
小林 いくらでもネタにしてください(笑)。
菅 やっぱりロックバンドをやっていて、こういう風体で、しかも20近く歳も離れてるんで、ビビらせちゃったら嫌だなと思ってたんですよ。なので最初の顔合わせは必要以上に明るくいきました。「怖くないよー!」って(笑)。
長谷美 実際めっちゃ明るかった(笑)。一気に打ち解けた感じがすごく印象に残っています。
花澤 学生さんたちほどではないにせよ、僕らも最初は「仲よくやれるかな?」という不安は同じように持ってましたね。
米谷優馬(Dr) もしかしたらちょっとスレてる学生たちばっかりかもしれないな、と思ったりもしてて。
平井 不良をイメージしてましたよね。
菅 「ロックとかマジ聴かねえし」みたいな感じで来るのかなと思ってたら、みんな明るく接してくれたんで、僕らも空元気を出しやすかったです。次からは早くもナメられてたけど。
小林 そんなことないです!(笑)
菅 顔を見るだけでクスクスクスーって指差して笑われるようになりました。くだけた関係性が築けてありがたかったです。
サカナクションみたいにしたらいいじゃん
──このプロジェクトを通じて制作された「supersonic」「チェーンソー」の2曲が、2月12日にCDとしてリリースされます。楽曲自体は今回新たに書き下ろしたものですか?
平井 そうです。選曲会議の授業をするために8曲ぐらい必要だという話があって……。
菅 もともとライブで披露していた既存曲2、3曲に加えて、5曲くらい新しく作ったんだっけ? そのラフなデモを提出して、学生のみんなに選んでもらいました。
平井 最終的に決まった2曲はどちらも新しく書いた曲ですね。聞くところによると、授業の中で「サカナクションみたいにしたらいいじゃん」というプロデュース案が出たらしいんですよ。
佐藤・長谷美・小林 (笑)。
花澤 あったなあ、そんな話(笑)。
米谷 「サカナクションみたいなイメージのバンドなのかな」と言った学生がいた、って話を先生から聞いたんだよね。
長谷美 誰が言ったんだろう? ここちゃん(小林)じゃない?
小林 ええー? 全然覚えてない。
長谷美 だって、ここちゃんぐらいしかそんなこと言わないと思う(笑)。
一同 わはははは。
小林 じゃあ私なのかな……? 私が言ったらしいです(笑)。
平井 その意見に異論はないです。サカナクションになれるものならなりたいんで(笑)。「supersonic」はめちゃくちゃサカナクションにしてやろうと思ってメロディを作ったんですよ。あんまりサカナクションにはならなかったけど。
菅 全然ならなかったね。
長谷美 もう1曲の「チェーンソー」の歌詞には「うちらのことかな?」と思えるようなことが書かれていて、みんなすごく喜んでました。
佐藤 学校のある場所が高田馬場なんですけど、歌詞に「まっさらなまま 高田馬場」という一節があったりして親近感が湧きます。
小林 一緒に作ってる曲なんだなって感じられて、すごくうれしかったです。
平井 実際に彼らのことを書いた曲なので、それが伝わっていて僕もうれしいです。
──選曲会議というのはどんなふうに進めたんですか?
長谷美 いただいたデモを聴いたうえで学生1人ひとりが曲に順位を付けていって、それを集計したんです。
菅 誰がどの順位を付けたかはわからないようにしてね。それを表にしたものを見せてもらいました。
長谷美 そこで得票数の多かった上位2曲が「supersonic」と「チェーンソー」だったので、それをレコーディングすることに決まって。
花澤 決まったときは「あ、こっちなんだ?」という感覚が僕の中でけっこうありましたね。デモ音源のクオリティ的にも、前からあった曲はある程度ちゃんと作り込んであったのに対して、新しく作った5曲はだいぶラフな録音だったんで、聴きづらかったと思うんですよ。それなのに新しいほうの中から選ばれたってことは、デモの完成度に惑わされずにちゃんと曲そのものを受け取ってくれたんだろうなと。そこはさすが専門学生だなと思います。
L字歩きの練習してんのかなって
──曲が決まったあとは、プリプロを経てレコーディングに進むんですよね。
菅 そうですね。
──そこには学生さんはどんな感じで絡むんでしょうか。
花澤 プリプロに関しては基本的にこっちでやって、音源を送って意見をもらう形だったんで、その作業自体は学生は見てないといえば見てないのかな。
菅 1回だけESP学園のスタジオに入って録ったことがあったけど、それはまた別の学生たちが担当だったもんね。
長谷美 はい。
──となると、その間3人はほかの仕事をしていた感じですか?
佐藤 そうですね。僕たちは主にライブの準備をしてました。
長谷美 1回目のライブが6月にあったので、それに向けていろいろと。
小林 ライブでは私がチーフを担当しました。全体の取りまとめ役というか、アーティストさんと連絡を取って、それをチームに伝えるみたいな。
佐藤 僕はアテンドをしました。
長谷美 私もアテンドだった。
佐藤 アテンドは、アーティストさんがスムーズに動けるよう、入りからずっと付き添ってご案内する係ですね。
平井 「アテンドの授業があるのかな?」ぐらい思いましたね。こう、僕らが歩く斜め前に立って先導してくれるんですよ。僕らはそれを「L字歩き」と呼んでるんですけど、授業で習ってるのかなと思うくらいみんなうまくて。
花澤 体育館とかでL字歩きの練習してんのかなって(笑)。
佐藤 やってないです(笑)。
平井 しかも、誰に聞いてもちゃんと案内してくれるんですよ。この3人以外の子に聞いてもみんな教えてくれるから、情報共有がしっかりしてるなと。
長谷美 情報共有もしていましたし、ライブ会場が去年も使ったホールだったので、ある程度みんなが会場の構造を把握していたというのもあると思います。
平井 ちゃんと目的地まで連れていってくれるのもすごいなと思いました。「あっちっすよ」って指差すだけで終わらせない。
花澤 L字歩きで連れていってくれる(笑)。おかげですごくやりやすかったですね。
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ぜいたくなレコーディングだった