音楽ナタリー PowerPush - ジェッジジョンソン「テクニカルブレイクス・ダウナー」発売記念特集 藤戸じゅにあ×坂本美雨 対談

共鳴し合う15年来の友人

いつまで経っても中二病

──ほぼ完成していた作品を約5年経った今リリースする上で、その時間的なブランクが気になるところはありませんでしたか?

藤戸じゅにあ

藤戸 もちろんそこは考えました。やはり今風の音っていうのがありますからね、マスタリングも含めて。今の主流は、音圧をベコベコ突っ込んだ、高域の強い音だと思うんですよ。なのでそれは否定せず、例えばMacBookやiPhoneで再生してもほかの楽曲に負けない個性を出すバランスを考えました。あとは最近、ネオオルタナみたいな動きがあったりもするので、ギターの音なんかを含めたサウンドアレンジはオルタナを意識したものに差し替えたりもしましたね。

坂本 なるほど。

藤戸 で、その上で蓮尾くんや響先生の音をいかに取り込むかっていうことも大事にして。今回は自分でミックスダウンまでやったので、すごく楽しかったです。

坂本 ボーカルちっちゃいよね?

藤戸 今回? マジで? ちっちゃく感じた?

坂本 うん。でも、今オルタナが、っていう話を聞いたから、あえてそうしたのかなあって思った。そういう意図を感じる音作りだから全然大丈夫なんだけど。

藤戸 あれでもがんばって大きくしたんだけどね(笑)。ほんとはギターの壁を厚くして、もっとボーカルは小さくしたかった。

坂本 そっか。まあ、今はボーカルの大きい曲が多いからね。音数も多めだし。

藤戸 うん。5年音楽から離れて戻ってきたら、ずいぶんシーンが変わったところもあるよね。その中でうれしいのは、エレクトロミュージックとロック、DTMとロックを融合させた音楽がリスナーにより近くなったことで。昔は打ち込みっていうだけでライブすらさせてもらえなかったのに(笑)。

坂本美雨

坂本 そうだよね。偏見がないし、世の中の人の耳がそういうエレクトロロックみたいなものに慣れてきたところはあるよね。でも、その中でじゅにあくんのスタンスはあまり変わってないじゃない? サウンド的にもそうだし、歌詞をすごく大事にしてるところもそう。そこがすごくいいなって思うから、時代性みたいなところはそれほど意識しないでいいような気もするけど。

藤戸 そうだね。僕がジェッジとして打ち出したいのは純粋で文学的な歌詞世界と、ポップミュージックとして歌を届けたいってことで。エレクトロロックやオルタナの皮をかぶったポップミュージックであることを大事にしてますからね。そこはこれからも変わらないかな。振り返ると、ジェッジの歌詞を最初に褒めてくれたのは美雨ちゃんだったんですよ。それがすごくうれしかった。

坂本 ジェッジとしてのその核は早い段階から確立してたからね。聴き手の想像を膨らませて、その人を別世界に連れて行けるっていう、音楽が持つ魔法をじゅにあは信じているでしょ。それが単純に私はうれしくて。まあでも、歌詞が好きだよとは言いつつ、「ちょっとドリーミーすぎない?」とか「こんな女いないから!」とか勝手なこと言ったりもするんだけど(笑)。

藤戸 いつまで経っても中二病を患い続けているからね(笑)。恐らく今回のアルバムが一番、中二病が炸裂してるし。

坂本 そういうところがかわいいなって思いながら聴いてる女子は多いと思うけどね。私もそうだし。ただでも、そろそろ、ね(笑)。

藤戸 そうね(笑)。

音楽のある生活が今は何より楽しい

──現在、アルバムを引っさげて行われている久々の全国ツアーはいかがですか?

藤戸 北海道や大阪でのライブは5年ぶりですからね。楽しくてしょうがないです。全国回ってると、「ああ、バンドマンだな俺」とか思う(笑)。ある意味、同期のバンドマンからは周回遅れのような状況でもあるので、それをいかに取り戻すかっていうことを考えたりはしますけど、音楽のある生活が今は何より楽しいです。5年前までは当たり前に感じてたことの大切さを噛みしめています。

──アルバムにはそういったことを歌っている歌詞が多いですよね。

藤戸 はい。自分が感じたことなので、そこは正直に書こうと思いました。みんながそこに共感して、今というときを大事にしてくれたらいいなって僕は思います。

──では最後に、再始動を遂げたジェッジに美雨さんから一言いただけますか?

坂本 うん。プライベートの充実を。

藤戸 あははは(笑)。何もかも知られてるからなあ。

坂本 プライベートで変化があれば、きっとジェッジの歌詞にも新たな素材が加わってくると思うんですよね。それが友人としてすごく楽しみなので。

藤戸 はい、がんばります。美雨ちゃんもがんばってリリース(出産)していただいて。

坂本 そうだね。こっちがリリースできたら、また一緒に何かやろうね。子連れでね(笑)。

左から藤戸じゅにあ、坂本美雨。
ニューアルバム「テクニカルブレイクス・ダウナー」2015年5月20日発売 / 3024円 / UNITED TRAX/BELLWOOD RECORDS / BZCS-1124 / Amazon.co.jp
「テクニカルブレイクス・ダウナー」
収録曲
  1. the Ruler and Savant
  2. KRUNK
  3. アルター・エゴ
  4. 雨上がりの空の下で
  5. In Laboratory
  6. 瓦礫の森
  7. My Arsenals
  8. Loaded Ingram
  9. ドミニオン
  10. the Ruler has never seen another world
  11. ソナチネ
  12. SketchBook
  13. 忘れる魔法
  14. ふたりをつなぐもの
  15. Armillary sphere
  16. 青の連続
  17. AFTER ALL
  18. My Little Steps(Ground Final of BREAKS)
ジェッジジョンソン

ジェッジジョンソン

藤戸じゅにあ(Vo, G, Programing)を中心に1990年代より活動開始。打ち込みを多用した“エレクトロロック”で注目を集め、2004年にUKプロジェクトよりCDデビューを果たす。同年に発表されたアルバム「DEPTH OF LAYERS UPPER」「DEPTH OF LAYERS DOWNER」はカナダおよびブラジルのカレッジチャートで2位を獲得するなど海外でも好評を受け、2008年にはキングレコード内のロックレーベル・UNITED TRAXからメジャーデビュー。「Discoveries」「12WIRES」「SOLID BREAKS UPPER」と年1作のペースでアルバムをリリースするも、藤戸の病気による長期療養で2011年12月よりしばらく活動が休止された。2014年4月の東京・UNIT公演で正式に活動再開を宣言し、同時に蓮尾理之(Key, Programing / ex. school food punishment、SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER)と西川響(B, Programing)が正式メンバーとして加入。現在はギターとドラムのサポートを含めた5人体制で活動している。2015年5月にニューアルバム「テクニカルブレイクス・ダウナー」をリリース。

坂本美雨(サカモトミウ)

坂本美雨

女性シンガー。1997年1月に「Ryuichi Sakamoto featuring Sister M」名義でデビューし、1998年から本名での音楽活動を開始する。透明感あふれる歌声が高い支持を集め、1999年発表のシングル「鉄道員」は映画「鉄道員(ぽっぽや)」の主題歌に採用された。2010年からはエレクトロポップ路線のサウンドを追求し、同年5月にアルバム「PHANTOM girl」、2011年5月に「HATSUKOI」を発表。2012年8月のアルバム「I'm yours!」ではKREVAとのコラボレーションでも話題を集めた。2013年6月に15年間のキャリアをたどる初のベストアルバム「miusic ~The best of 1997-2012~」を発表し、2014年3月には蓮沼執太をプロデューサーに迎えたアルバム「Waving Flags」をリリース。2015年3月には蓮沼執太クルーとのコラボレーションによるライブの模様を収めた初の映像作品「LIVE "Waving Flags"」が発売された。また大のネコ好きとしても知られており、2014年12月に上梓された初の著書「ネコの吸い方」は独自の着眼点が話題を集めロングセラーとなっている。2014年3月にブックディレクター兼編集者として活躍する男性と結婚。まもなく第1子が誕生する。

坂本美雨「ネコの吸い方」
坂本美雨「ネコの吸い方」
2014年12月9日発売
[書籍] 1296円
幻冬舎
Amazon.co.jp
坂本美雨と蓮沼執太クルー LIVE
坂本美雨と蓮沼執太クルー LIVE "Waving Flags"
2015年3月18日発売
[DVD] 4644円
YAMAHA MUSIC COMMUNICATIONS / YCBW-10056
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