石崎ひゅーい|怖いもの知らずの“成長期”突入 挑戦してつかんだ確かな手応え

石崎ひゅーいが5曲入りミニアルバム「ゴールデンエイジ」を3月6日にリリースした。

ちょうど1年前の3月に初のベストアルバムを発売した際、「石崎ひゅーいの第1章はこの『Huwie Best』で終わりにします。僕はまた新しい旅に出かける気持ちでいます」というコメントを発表していた石崎。その後2度にわたって全国を弾き語りで回った彼は、“成長期”という意味の新作を完成させた。ミニアルバムは20分にも満たないコンパクトな作品ながら、石崎のさまざまな表情が詰め込まれた濃密な1枚に仕上がった。それら5曲がどのようにしてできたのか、そして“成長期”を迎えた今何を感じているのか、話を聞いた。

取材・文 / 丸澤嘉明 撮影 / 竹中圭樹(D-CORD)

石崎ひゅーい

考え方が根本から変わった

──昨年3月に初のベスト盤「Huwie Best」をリリースしたあと、5月から7月まで26カ所、さらに10月から12月まで22カ所を回る弾き語りツアーを行ってきました。けっこうな長丁場でしたが、やってみてどうでした?

ライブに対する考え方が根本から変わりましたね。弾き語りのライブって歌声とギターだけでその空間を支配するというか、気持ちを伝染させていかなきゃいけなくて。バンド編成のライブよりもシビアなところがあって、ある意味修業だったんですよね。それまではステージで僕がどれだけ爆発できるかを重視していたんですけど、今は会場全体を爆破したいという気持ちになっていて。

──会場を爆破したい?

お客さんの気持ちを爆破したいというか。理想は僕と同じレベルの高揚感を味わってほしいんですよね。いかにお客さんを巻き込んで素敵なライブにするか、そういうことを考えるようになりました。

──確かに12月にTSUTAYA O-WESTで行われたファイナル公演を観たときに、会場の空気の作り上げ方がこれまでと変わったと感じました。ギター1本で約1時間半お客さんを飽きさせないのって想像以上に大変だと思うんですが、演奏面での緩急の付け方はもちろん、お客さんとのコミュニケーションも含めて会場の雰囲気作りに気を配っている感じがして(参照:石崎ひゅーい、全国48カ所回った弾き語りツアーで新曲披露も)。

石崎ひゅーい

よかったです。正直ツアーを回る中で全然伝わってる感じがしなくて悔しい日もあったんです。かと思うと、その次の日にすごく手応えを感じるライブができることもあったし。だんだん自分の中で方法論みたいなものがわかったりもしたけど、そうすると決められたことをやるだけみたいになって、逆にダメになっちゃうのがまた難しいところで。でもライブ中にもう1人の自分が俯瞰して会場を見ている感覚はあって、そこは自分でも成長したと思いますね。

──デビューして間もない2013年にも弾き語りで47都道府県を回っていますが、そのときと比べてどうですか?

はっきり言って、デビューしたての頃はみんなのことなんて関係なかったんですよ。「俺を見ろ!」っていう感じで。でも今はそれだけじゃ満足しなくなっていて、お客さんにも爆発してほしい。そのためには自分がやらなくちゃいけないことがたくさんあって、そういうことを意識するようになりました。

──なるほど。そして弾き語りツアー後の今年1月には渋谷CLUB QUATTROでバンド編成のワンマンライブがありました。この公演ではバックバンドに演奏を委ねることで歌うことに専念できていて、だからこそ生まれる爆発力があったように感じました(参照:石崎ひゅーい、愛にあふれた「アンコール」でツアー締めくくる)。

純粋に歌を届けて、それが伝わるとお客さんの心もグワッと高揚するんですよね。そういうライブができたのも弾き語りで全国を回ったからだと思います。

──かなり手応えをつかんだライブだったのでは?

そうですね。ライブを観に来てくれた(尾崎)世界観くんは「今までで観たライブの中で3本の指に入るくらいよかった」って言ってくれたんですけど、信頼している人からもそう聞いたから余計に自分は間違ってないなと思いますね。

初めての挑戦

──それではここからミニアルバムについて伺えればと思います。オープニングを飾る「あなたはどこにいるの」は、テレビ東京などで放送中のドラマ「さすらい温泉 遠藤憲一」の主題歌として書き下ろされた歌謡ロックテイストの楽曲です。

前にドラマ「みんな!エスパーだよ!」に「夜間飛行」という曲を書き下ろしたんですけど、その制作チームがまた声を掛けてくれました。「さすらい温泉 遠藤憲一」はテレ東らしい常識にとらわれない作品なのでそれに負けちゃいけないと思って、自分の中では挑戦をした曲ですね。

──具体的にどんな挑戦を?

「さよならエレジー」のアンサーソングというイメージで作ってみたのと、この曲は初めて女性目線で歌詞を書いているんですよ。以前作った「さよなら、東京メリーゴーランド」(2016年12月リリースのアルバム「アタラズモトオカラズ」収録)という曲も女性目線ですけど、あれとはちょっと違う感じで。

──「さよなら、東京メリーゴーランド」は同性愛の女性の歌でしたもんね。

石崎ひゅーい

そうそう。なので女性が男性について歌う曲は今回初めてで。ドラマにはエンケンさんの相手役として毎回マドンナが登場するんですけど、その人たちが何かしらの悩みや葛藤を抱えているのがヒントになった部分もあるし、ベスト盤を出してから「変化していこう」「いろいろな表現方法を取り入れよう」と意識的になっていたからこそできた曲だと思います。

──歌詞の「破れたシャンデリア」はどういうイメージで?

ここでいうシャンデリアはラブレターのことなんです。シャンデリアのようにキラキラしたもので、それがこの曲の主人公の気持ちを表す言葉だと思っていて。「あなたはどこにいるの」はけっこう歌詞を書き直していて、この部分もほかの言葉を考えたりもしたけど、この表現が一番合ってると思って残しました。

──ちなみに3月20日(水)深夜オンエアの“第10湯”には石崎さんもこけし職人として出演されます。

一応“職人感”は出してきたつもりです(笑)。エンケンさんが面白いから、本当は笑っちゃいけないのに笑っちゃって大変でした。山形の銀山温泉で撮影だったんですけど、川のせせらぎが見える階段で主題歌の弾き語りをしたり、エンケンさんが劇中で歌うシーンの伴奏をやったりして、すごくいい経験になりました。

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