音楽ナタリー Power Push - 石崎ひゅーい×須藤晃

覚悟を決めた問題作

一番大事なのは生きること

──「さよなら、東京メリーゴーランド」は2015年4月に東京キネマ倶楽部で開催したワンマンライブで初披露された楽曲ですよね(参照:石崎ひゅーい、強烈な余韻残したシンガーソングライター最後のワンマン)。今回アルバムに入るということでファンの人もSNSを見るとすごく喜んでいて。

左から須藤晃、石崎ひゅーい。

石崎 そうですね、喜んでくれてますね。

──この曲はどうやってできたんですか?

石崎 書き始めるきっかけは僕の周りに同性愛者がいたことですね。ちょうど渋谷区で同性愛が認められた時期で、それで須藤さんと一緒にアイデアを膨らませて「さよなら、東京メリーゴーランド」っていう小説を書いたんですけど、その小説に曲を付けるイメージで作りました(参照:石崎ひゅーいが作家デビュー「さよなら、東京メリーゴーランド」)。

須藤 別に同性愛の人を擁護するとかそういう気持ちがあるわけではなくて、貧しい人もいればお金持ちもいるし、頭のいい人もいればよくない人もいるし、人間なんていろいろいるわけですよ。一番大切なことはなんであれ、生きていくことなんだっていう。ひゅーいは、もちろんそれだけじゃないと思うけど、死んだ母親に対して歌っていきたいってモチベーションが一番強いんですね。だから僕は、生きてなきゃダメなんだっていうのを石崎ひゅーいの根底にすごく感じていて。生きてるから苦しいことも多いけど楽しいこともあるんだっていう、当たり前のことなんだけど。

音楽を甘く見るな

──アルバムには大友裕子さんの「傷心」のカバーや、須藤さん作詞、浅田信一さん作曲による「沈黙」も入ってますよね。この2曲も非常にメッセージ性が強くて。

須藤 2曲共僕はすごい好きでいつか誰かに歌ってほしかったんですよ。ただ大友裕子さんは引退されていて、たぶん「あの曲のイメージがあるから」ってちょっとやそっとのことじゃOKを出さないと思っていたんですけど、ひゅーいが歌ったデモテープを送ったらOKが出たのでよかったです。あれを朝から聴くと仕事する気なくなるくらいすごいんですよ。

石崎ひゅーい

石崎 疲れるんですよね本当に。これも1回歌って次また歌うんだろうなと思って準備してたらもう終わってました(笑)。

──アルバムを通して聴いているとこの2曲でレコードのA面が終わるような印象を受けました。つまり、1曲目「溺れかけた魚」から「沈黙」までが濃厚なメッセージソングが詰まったA面、7曲目の「さよならワンダー」から「謝肉祭」まではバラード寄りのB面っていう。

石崎 その感じありますよね。

須藤 まったくその通りですよ。尾崎さんの「十七歳の地図」を作ってるときの感じに近かったんですけど、A面が終わってひっくり返して、1回ちょっとコーヒーかなんか飲んで仕切り直さないとB面聴けない感じあるでしょ。飛ばしながら聴くとか、音楽を甘く見るなと思って。だいたい人生に音楽が足りなさすぎると僕はずっと思ってるので。

尾崎豊と玉置浩二と石崎ひゅーいの共通点

須藤 気が付いたかもしれないですけど、僕がプロデュースしてるってことはとにかくボーカルの音量が大きいんですよ。

──確かにボーカルがよく聞こえました。「謝肉祭」や「サヨナラワンダー」など、須藤さんが編曲している曲はオケがシンプルで、ボーカルが映えるアレンジになってるとも思ったんですが。

須藤晃

須藤 まあ僕はトオミくんほど音楽的にいろんなことができるわけじゃないので、ひゅーいと2人で作ったものは彼と比べたらシンプルなものにならざるをえないっていう部分もあるんですけど。音を重ねていくという発想がなくて、バンドでできることしかやってないんですよね。

──石崎さんの歌声って、バラードを歌うときはとても優しくて繊細で、一方でシャウトもすごくて、そういう幅広さが魅力だなと改めて感じたんですね。それって尾崎豊さんと通ずる部分があると思ったのですが、須藤さんから見ていかがですか?

須藤 もうそっくりですよ。

石崎 へえ。

須藤 2人共声の情報量が多いんですね。それは尾崎さんもそうだし、玉置さんもそうですよ。例えば「なぜ」ってたったひと言発した瞬間に世界を作って、みんなを引き込んでいく感じ。ステージに上がらせたらその人間力たるや半端じゃないですよね。「すごいな、持って生まれたものだな」って思いますね。存在として天才ですよ。

石崎ひゅーい ニューアルバム「アタラズモトオカラズ」2016年12月7日発売 / EPICレコードジャパン
初回限定盤 [CD+DVD]4000円 / ESCL-4748~9
通常盤 [CD]3200円 / ESCL-4750
CD収録曲
  1. 溺れかけた魚
    [作詞:石崎ひゅーい、須藤晃 / 作曲:石崎ひゅーい / 編曲:須藤晃]
  2. 牧場で僕は迷子になって
    [作詞・作曲:石崎ひゅーい / 編曲:トオミヨウ]
  3. ダメ人間
    [作詞・作曲:石崎ひゅーい / 編曲:トオミヨウ]
  4. 敗者復活戦
    [作詞:石崎ひゅーい、須藤晃 / 作曲:石崎ひゅーい / 編曲:須藤晃]
  5. 傷心
    [作詞・作曲:大友裕子]
  6. 沈黙
    [作詞:須藤晃 / 作曲:浅田信一 / 編曲:須藤晃]
  7. サヨナラワンダー
    [作詞・作曲:石崎ひゅーい / 編曲:須藤晃]
  8. ピノとアメリ
    [作詞・作曲:石崎ひゅーい / 編曲:トオミヨウ]
  9. お前は恋をしたことがあるか
    [作詞・作曲:石崎ひゅーい / 編曲:トオミヨウ]
  10. さよなら、東京メリーゴーランド
    [作詞・作曲:石崎ひゅーい / 編曲:トオミヨウ]
  11. アタラズモトオカラズ
    [作詞:石崎ひゅーい、須藤晃 / 作曲:トオミヨウ]
  12. 謝肉祭
    [作詞:石崎ひゅーい、須藤晃 / 作曲:石崎ひゅーい / 編曲:須藤晃]
初回限定盤DVD収録内容

石崎ひゅーいTOUR2016「花瓶の花」東京キネマ倶楽部 2016.07.28 ライブ映像収録

  • 夜間飛行
  • ファンタジックレディオ
  • ピーナッツバター
  • 花瓶の花
ライブ情報
石崎ひゅーい TOUR2017「アタラズモトオカラズ」
  • 2017年1月28日(土)大阪府 Shangri-La
  • 2017年1月29日(日)愛知県 SPADE BOX
  • 2017年2月10日(金)埼玉県 所沢市民文化センター ミューズ
  • 2017年2月16日(木)東京都 LIQUIDROOM
石崎ひゅーい(イシザキヒューイ)
石崎ひゅーい

1984年3月7日生まれ、茨城県水戸市出身のシンガーソングライター。風変わりな名前は本名で、デヴィッド・ボウイのファンだった彼の母親が、ボウイの息子・ゾーイ(Zowie)をもじってひゅーい(Huwie)と名付けた。高校卒業後、大学で結成したバンドにてオリジナル曲でのライブ活動を本格化させる。その後は音楽プロデューサーの須藤晃との出会いをきっかけにソロシンガーに転向し、精力的なライブ活動を展開。2012年7月、ミニアルバム「第三惑星交響曲」でメジャーデビューし、2013年2月から5月にかけて全国47都道府県を回るライブツアー「全国!ひゅーい博覧会」を実施した。同年6月にテレビ東京系ドラマ「みんな!エスパーだよ!」のエンディング曲「夜間飛行」を、7月に1stフルアルバム「独立前夜」をリリース。2015年6月には劇団鹿殺しの舞台「彼女の起源」で俳優に挑戦した。2016年5月に2ndフルアルバム「花瓶の花」、その7カ月後となる12月に須藤晃オールプロデュースによる3rdアルバム「アタラズモトオカラズ」を発表。同じく12月には、松居大悟監督、蒼井優主演の映画「アズミ・ハルコは行方不明」に出演。