音楽ナタリー PowerPush - 石崎ひゅーい×丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)

舞台「彼女の起源」出演記念対談 未知なる世界で奮闘中

違うバカ野郎!

──そのほか、実際に稽古に入ってみて気付いた発見はありますか?

丸尾 稽古前にみんなで筋トレするのが新鮮みたいです。

石崎 はい。ご飯食べに行くにしても3、4人じゃなくて20人とか大所帯で行くのも新鮮です。あと、みんなで変なゲームやったりするんですよ。

丸尾 鬼ごっことか、言葉遊びのゲームとかね。演技するのって、最初はお互い恥ずかしいじゃないですか。だから人となりを理解し合うために、大の大人が昼間から2時間くらいキャッキャしてます。

石崎ひゅーいを取り囲む「彼女の起源」出演者たち。

石崎 あれがめっちゃ楽しくて。あと皆さん、感受性と瞬発力がある人たちで、それは本当にすごいなと思ってます。お互い持っているものを瞬間的に合わせていくというか、それはライブの作り方とは違うなって。

丸尾 でもひゅーいくんは、最初の本読みのときから全力で声を出してくれるよね。人によっては「こんな感じかな? 間違ってるかな?」って不安がって本気でやらない人もいるけど、最初から思いっきりやってくれるので、こっちも「こうしたほうがいいんじゃないか」っていうアイデアも浮かぶし、話が早いよ。

石崎 足されることがあまりないほうがいいのかなと思っていて、まずは120%の力でやってみるようにしてます。違うって言われたらそこから引き算していけばいいかなって。

──石崎さんのライブも常に120%の力を出している印象がありますが、演技とライブで似ている感覚はありますか?

石崎 どうなんだろう、まだわからない。とりあえず全力でやってみて判断を委ねるという段階ですね。それで「違うバカ野郎!」って言われよう、みたいな。

丸尾 言わないって(笑)。

自分を俯瞰でみる感覚

──舞台で演じるときって、どの程度理性を保っているものなんでしょう?

丸尾 役者のタイプにもよるけど多くの人は分離してるというか、一方で役に入っておきながら、もう一方でそれを俯瞰して見てると思いますね。その割合は人によって違うと思うんですけど、僕の場合は俯瞰で見てる割合のほうが強いかな。舞台って1カ月かけて稽古して作っていくから、その間に役が体になじんでくるんですよね。本番で舞台に立っているときは、例えば何かを渡すという動作にしても、「この人『渡す』っていう動作をやってるな」と別のところから見ている感覚です。

石崎 へえ。

丸尾 セリフも「次はなんだっけ?」とはまったく考えてなくて、自然に出てきます。

石崎 僕は普段ライブするとき、俯瞰してるのは1%くらいです。ライブが始まる前までめっちゃいろいろ考えてて、始まったら99%は無、何も考えてない状態です。そのほうがいいライブができる気がしていて。

丸尾 そうなんだ。ひゅーいくんは舞台のときは何も考えてないってほうがいいのかもしれないね。それは個性だから必ずしも俯瞰がいいってわけじゃないし。ただ立ち位置とか動作とか、ライブよりも段取りが多いから、無になれないっていう部分はあるかもしれないけど。

石崎 そうですよね。

──今、稽古していて、“俯瞰で見る”という感覚はつかめそうですか?

石崎 いや、まだ全然。ただテンパってるだけです。思いっきりやろうと思っているだけで。ただ、自分の歌を見せる“間”の感覚とか、舞台を経験することでライブの完成度も高くなる気はしています。

思わず夜の街を走りたくなるような後味

──お2人とも執筆活動もしていますが、どういうことを考えながら書いているんでしょう?

左から、丸尾丸一郎、石崎ひゅーい。

丸尾 僕が書くのは脚本なので、それをガイドに物語が進んでいくわけじゃないですか。最初は自分の書きたい願望、初期衝動から始まるんですけど、ある地点から書かなきゃいけないっていう責任感が伴ってくるんですよね。衝動だけで最後まではいかないというか。最後にまた衝動が現れるときはあるけど、脚本が面白くないと何も始まらないんだっていう責任感で書いてますね。

──石崎さんもつい先日、初めての書き下ろし小説「さよなら、東京メリーゴーランド」をスペシャアプリで配信したばかりですよね。

石崎 そうですね。ただ小説は僕が自分で書きたいものを書いただけなので丸尾さんの責任感とは違うものだと思うんですけど。僕の場合、歌の歌詞は役者でいう“セリフ”みたいなもので、歌詞だけじゃ伝えきれないものがあるから、もう少し僕の頭の中をみんなに見せようと思って書いたのが小説なんです。

──普段の作詞する作業とは違いました?

石崎 作詞は削っていく作業なんですけど、小説は足していく作業だなって思いました。「さよなら、東京メリーゴーランド」は1つの作品として作りたかったんですよ。小説があって、ライブがあるっていう。

──4月24日に東京キネマ倶楽部で開催した、同じタイトルのワンマンライブですね(参照:石崎ひゅーい、強烈な余韻残したシンガーソングライター最後のワンマン)。

石崎 うん。小説はフィクションなんだけど、ライブに足を運んだらフィクションだと思っていた世界がフィクションじゃなくなるというか。「私どこにいるんだろう?」って錯覚するようなものを作りたかったんですよね。

丸尾 ちなみに僕もそのキネマ倶楽部のライブを観させてもらったんですけど、すごくよかったです。ライブ後にそのまま夜の街を走りたいような衝動に駆られたんですけど、それって何かを観たあとにふさわしい感情だと思うんですよね。泣きました、笑いました、だけじゃなくて、居ても立ってもいられなくなって走りたくなっちゃったっていう。ひゅーいくんのライブを観て、僕らも今回の舞台を観終わったお客さんが思わず走りたくなったり、脚立とか高いところからジャンプしたくなるような作品にしたいなって強く思いましたね。

劇団鹿殺しロックオペラ「彼女の起源」2015年6月3日(水)~8日(月)東京都 CBGKシブゲキ!! / 2015年6月11日(木)~14日(日)兵庫県 AI・HALL
「彼女の起源」

<作>丸尾丸一郎

<演出>菜月チョビ

<出演>
菜月チョビ / 石崎ひゅーい / 丸尾丸一郎 / オレノグラフィティ / 山岸門人 / 橘輝 / 傅田うに / piggy(ex. pocketlife) / 辰巳裕二郎(ex. 花団) / and more

ストーリー

幼い頃から父親に監禁して育てられた金子陶子(菜月チョビ)のもとに、ある日1本のカセットテープが差し入れられる。差出人は彼女の弟の金子三樹夫(石崎ひゅーい)。テープを再生すると、そこには陶子の知らない世界の様子を伝える三樹夫の歌が吹き込まれていた。その日から陶子と三樹夫のテープを通じた交流が始まる。だが、しばらくして三樹夫からのテープが途絶えてしまう。

凱旋LIVE「彼女の起源FINAL」

2015年6月16日(火)東京都 TSUTAYA O-WEST
2015年6月18日(木)宮城県 darwin

※東京公演にはジョニー大蔵大臣(水中、それは苦しい)、鳥肌実、masato(SuG)がゲストミュージシャンとして参加。

石崎ひゅーい(イシザキヒューイ)
石崎ひゅーい

1984年3月7日生まれ、茨城県水戸市出身のシンガーソングライター。風変わりな名前は本名で、デヴィッド・ボウイのファンだった彼の母親が、ボウイの息子・ゾーイ(Zowie)をもじってひゅーい(Huwie)と名付けた。高校卒業後、大学で結成したバンドにてオリジナル曲でのライブ活動を本格化させる。その後は音楽プロデューサーの須藤晃との出会いをきっかけにソロシンガーに転向し、精力的なライブ活動を展開。2012年7月、ミニアルバム「第三惑星交響曲」でメジャーデビューし、2013年2月から5月にかけて全国47都道府県を回るライブツアー「全国!ひゅーい博覧会」を実施した。同年6月にテレビ東京系ドラマ「みんな!エスパーだよ!」のエンディング曲「夜間飛行」を、7月に1stフルアルバム「独立前夜」をリリース。2014年4月に、自身の亡き母をテーマにしたコンセプトアルバム「だからカーネーションは好きじゃない」を発表した。2015年6月3日より上演される劇団鹿殺しの舞台「彼女の起源」に出演する。

劇団鹿殺し(ゲキダンシカゴロシ)
劇団鹿殺し

2000年、関西学院大学在学中に菜月チョビと丸尾丸一郎によって旗揚げされた劇団。2005年に活動の拠点を大阪から東京に移し、年間1000回以上の路上パフォーマンスを敢行する。あわせてコンスタントに公演を実施し、2010年発表の「スーパースター」は、第55回岸田國士戯曲賞の最終候補にノミネートされた。2013年6月、文化庁新進芸術家海外派遣制度により菜月チョビが海外留学すること、それに伴い1年間の充電期間へ突入することを発表。充電前最後の舞台「無休電車」は東京・大阪ともに全ステージ完売となった。2014年1月にはCoccoを主演に迎え、初プロデュース作品として「ジルゼの事情」を手がける。この公演は演劇界のみならず音楽界でも大きな話題を呼び、同年9月に再演された。2015年6月、菜月チョビの復帰後初出演作として石崎ひゅーいを招いた「彼女の起源」を上演する。