ナタリー PowerPush - 石崎ひゅーい

人に寄り添う歌を歌いたい 新人新鋭シンガーソングライター出現

学生時代からのバンド経験を経て、約2年前にソロとなったシンガーソングライター・石崎ひゅーい。全て実体験を元に作られるという歌詞は、赤裸々な日常にどこかファンタジックなエッセンスを融合させた、独特の世界観が印象的なもの。全身全霊を込めて表現するボーカルも、ときに祈るように、ときに叫ぶように、楽曲によってさまざまなアプローチで聴き手の胸に響いてくる。

今回のメジャーデビューにあたり、彼に付けられたキャッチコピーは「出現。石崎ひゅーい」。これはビデオクリップやジャケット写真などのアートワークを担当した「風とロック」箭内道彦が考案したもの。そんな突如現れた、とんでもない新人は、どのような音楽人生を歩み、歌にどんな思いを抱いているのか。それをじっくりとひも解いてみたい。

取材・文 / 川倉由起子

「本名を書いてください」ってよく言われる

──まずは読者も気になるであろう石崎さんのお名前から伺いたいのですが、「ひゅーい」って本名なんですか?

はい。母親がデヴィッド・ボウイ(David Bowie)のファンで、その息子の名前の「ゾーイ(Zowie)」をもじって付けたみたいなんですけど、なんで「ゾーイ(Zowie)」から「ひゅーい(Huwie)」につながったのかはわからないです。いくら訊いてもわかんないままです(笑)。

──ご自身は、この名前をどう思います?

嫌だと思ったことは一度もないです。でも学校の先生とかにすぐ覚えられちゃうから、悪いことをしたらにすぐ「あいつか!」ってバレちゃう(笑)。あとはお店でポイントカードとかを作るときに、よく「本名を書いてください」って言われます。

──あははは(笑)。

100%言われます! 「本名書いてください」「いや、本名です」っていうやり取りを何度繰り返したことか(笑)。

──ちなみに、ニックネームってあるんですか?

特にないです。ひゅーいとしか呼ばれたことがないですね。

──お母さんがファンだったというデヴィッド・ボウイに興味や関心を持ったことは?

昔、ちょこっと調べたくらいですね。あまり深くは追求してないです。

とりあえず誘われたのでバンドをやってみた

──では、ここからはひゅーいさんの音楽遍歴を探っていきたいと思います。幼少時代はどんな歌が好きだったんですか?

中学生のときはSPEEDが好きで、ファンクラブに入ってました。あとシャ乱Qも好きでしたね。

──いわゆる当時のJ-POPド真ん中を聴いていたと。

はい。そういう、みんなが好きな曲が好きでしたね。で、中3になると友達に声をかけられてHi-STANDARDのコピーバンドをやらされて。そこからボーカルとして歌い始めました。

──やらされた?(笑)

そうですね。自分から歌うってタイプじゃなかったし、とりあえず誘われたのでやってみようかなっていう。

──そんな中学3年生がいきなりHi-STANDARDのコピーを!?

はい。当時すごくメロコアが人気だったので、僕もずーっと叫んで歌ってました(笑)。そのあとは高1くらいでオリジナル曲を作り始めて、地元のライブハウスに出たり。僕の地元の茨城県水戸市で、当時流行ってたハードコアシーンの中で活動をしてましたね。

──オリジナル曲は、ひゅーいさんが作ってたんですか?

いや、ほかのメンバーが。僕が作ることはあまりなかったです。

最初に作ったのは、ガンジーの歌

──中3で組んだバンドは、いつまで続いたんですか?

高校3年間ですね。卒業後は大学進学とかでみんな上京して、いったんはバンドも続けることになったんですよ。でも、ちょっとしたら解散しちゃいました。

──原因は?

高校時代はずっと意味もわからず英語詞を歌ってたんですけど(笑)、叫んだり、そういう音楽をやること自体が嫌になっちゃって。特に理由があったわけじゃないんですけど、自然と日本語の歌を歌いたいっていう欲が出てきたんです。で、大学1年のときにバンドを解散して、今度は日本語で歌うロックバンドを組んで。そのときから自分で曲も作って歌うようになりました。

──ちなみに、最初に作ったのはどんな曲だったんでしょう?

ガンジーについての曲で、「ヒストリー・オブ・ガンジー」ってタイトルでした。

──えっ、ガンジーが好きだったんですか?

そういうわけじゃないんですけど(笑)。当時は民族系のミクスチャーも流行ってたんで、そこから何かしら影響を受けたのかもしれないです。

──歌詞の内容が気になりますね。

確か「彼の名前はガンジー、インドで生まれた」みたいな(笑)。あとは「争いごとをやめろ、そして彼はインドに帰っていった……」っていう感じだったかな。

──ガンジーの自己紹介ソングみたいですね(笑)。

ふふふふ(笑)。僕の曲作りはここから始まりました(笑)。

──ところで、先程「バンドは友達に誘われて」という話がありましたが、昔は音楽で生きていきたいという意思はそこまで強くなかったんですか?

そうですね。今と比べると全然なかったと思います。

石崎ひゅーい(いしざきひゅーい)

1984年3月7日生まれ、茨城県水戸市出身の男性シンガーソングライター。風変わりな名前は本名。高校時代より音楽活動を開始し、高校卒業後に大学で結成したバンドにてオリジナル曲でのライブ活動を本格化させる。その後は音楽プロデューサーの須藤晃との出会いをきっかけにソロシンガーに転向し、精力的なライブ活動を展開。2012年4月から行われたRakeの全国ツアーでは12会場でオープニングアクトを務めた。自身の心情やエピソードを歌った、赤裸々な中に幻想的な表情を見せる歌詞、強い印象を与えるメロディライン、ダイナミックなライブパフォーマンスで、大きな注目を集めている。2012年7月、ミニアルバム「第三惑星交響曲」でメジャーデビューを果たす。