井上実優が1stアルバム「Sparkle」を3月21日にリリースする。
今年1月に成人式を迎えたばかりのタイミングでリリースされる本作は、キャッチーなメロディ、クリスティーナ・アギレラや福原美穂を敬愛してきたという彼女らしいパンチの効いたボーカル、飛躍的な成長を遂げた作詞能力など、井上のアピールポイントを最大限に詰め込んだ1枚となった。音楽ナタリー3度目の登場となる今回は、その制作の舞台裏をじっくりと語ってもらった。
取材・文 / 内田正樹
10曲がまったく異なる輝きを持っている
──アルバムの話に入る前に、1月に成人式を迎えましたね。おめでとうございます!
ありがとうございます!
──20歳を迎えて、何か意識に変化は生じましたか?
私と言うより、周囲の反応が変わったかもしれない。成人式は地元の博多で迎えたのですが、やはりみんなから音楽活動の様子について聞かれるので。プロのアーティストとしてデビューしたという事実がみんなに広まっているのだと実感して、より気が引き締まりました。あと、成人式のあとに、中学時代の部活のメンバーだけで集まったのですが、一番親しかった友人たちが、それぞれ新たな進学先に行っていたり職に就いていて、「もうあの頃には戻れないんだなあ」と当たり前の事実に気付かされました。
──なるほど。ちなみに晴れて成人ですが、井上さん、お酒のほうは?
それが博多出身なので「強いの?」と期待されがちなのですが、もうまるでダメで……。
──どちらかと言えば強そうな声で強そうな歌も歌っているのに……。
そうですよね……できることなら細いグラスなどでガッと浴びるように飲んでみせたいのですが、実際は梅酒でさえグラス半分いけるかいけないかでダウン、みたいな(笑)。
──それは飲まないほうが賢明ですね(笑)。さて1stアルバムですが、まずは完成した率直な感想から。
ひと言で言えば自信作です! 手応えを感じています。
──それは素晴らしい。本作の制作期間は?
3rdシングル(「この空の果て」)と同時に制作していたのですが、どちらも昨年の10月の終わりから4カ月ぐらいかけました。
──制作にあたって、なんらかのテーマやコンセプトなどは設けましたか?
収録する全10曲が出そろったときに、この“異彩を放つ”という意味の「Sparkle」というタイトルにたどり着きました。それは我ながら10曲がそれぞれにまったく異なる輝きを持っていると感じたからでした。
積極的なインプットで向上した作詞能力
──では何曲かについて伺っていきます。まず1曲目の「近未来」ですが、この曲、トラックに対する歌メロの休符の置き方といい、ボーカルといい、テクニカルなことにトライしていますね。
そうですね。レコーディングも苦労しましたが、初めてのタイプの楽曲だったので純粋に楽しかった。もっと歌っていたいと言うか、今後もこういう楽曲をもっと制作したいと思いました。
──この曲は井上さん自身の作詞だし、こういう曲を歌いこなせるあたりからも、デビュー以降の成長が感じられますね。
ありがとうございます。私、アニメが好きで、たまにYouTubeでアニメのMADムービー(※個人が既存の映像や音楽を編集・再構成したムービー)の音声を消して、私のデモを流しながら合うかどうかを試したりするのですが、この楽曲はロボットもののアニメとすごく合って。そこから近未来やメカニカルなイメージの歌詞が膨らんで、アレンジもより入り組んだものになっていきました。私、新海誠さんの「ほしのこえ」という作品がすごく好きで、「もしかしたらあれにも合うかも?」と思って予告編の映像で試してみたらやはりすごく世界観が合って、鳥肌が立ちましたね。
──デビュー曲の「Boogie Back」は「ドラゴンボール超」のエンディングテーマで、今、手元にある井上さんのスマホのケースも「おそ松さん」なんですが(笑)、もしかしてかなりのアニメ好きですか?
はい! 「ドラゴンボール超」も好きですし、新海誠監督や今敏監督の作品も全部観ています。だから今後もテーマソングのお話などいただけたらうれしいですね。
──それにしてもデビュー時のインタビューで、デビュー前の高校時代、作詞における言葉遣いが固すぎて「言葉のチョイスが古過ぎる」「上司へのメールか?」と呆れられていた時分から比べると格段に進化しましたね(参照:井上実優「Boogie Back」インタビュー|音楽塾ヴォイス出身の19歳、メジャーデビュー)。
確かに! さすがに最近は言われなくなりました(笑)。
──何か具体的な“処方箋”があったのですか?
楽曲を制作していく中で徐々にスキルアップしていけたということももちろんあると思いますが、以前よりも積極的にインプットを心がけて、それをどう生かせるかをいつも考えるよう習慣付けたことが一番かもしれない。映画やアニメを観るときも、ただ観るだけじゃなく、これをどう私の作品に生かせるかを考えるようになりましたね。私は楽曲ごとにそれぞれ異なる主人公を設けているのですが、以前よりも、その主人公により深く感情移入して制作やパフォーマンスをすることができるようになりました。
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私は“女”を歌いたい
- 井上実優「Sparkle」
- 2018年3月21日発売 / Victor Entertainment
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初回限定盤 [CD+DVD]
3240円 / VIZL-1345 -
通常盤 [CD]
2808円 / VICL-64972
- CD収録曲
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- 近未来
- Boogie Back
- Slave (album ver.)
- この空の果て
- Robin
- Break down
- 消えない
- Shake up
- I will be your love (Sparkle ver.)
- again
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 「この空の果て」Music Video
- 「この空の果て - Behind the Scenes -」
- 井上実優(イノウエミユ)
- 1997年生まれ、福岡県出身の女性シンガー。小学校6年生のときに出場した音楽コンテスト「唐津ジュニア音楽祭」をきっかけに、音楽塾ヴォイス主宰の西尾芳彦に出会う。中学生の頃から作詞作曲と歌唱の研鑽を積み、高校入学を機に本格的に曲作りをスタート。2016年春に上京し、7月には東京・日本武道館で行われたライブイベント「スカパー! Presents『FULL CHORUS ~音楽は、フルコーラス~』 in 日本武道館」に出演し、ステージデビューを果たす。2017年4月にシングル「Boogie Back」でビクターエンタテインメント内のレーベル・ビクターレコーズよりメジャーデビューを飾る。8月に新作CD「Shake up EP」を、ドラマ「科捜研の女」主題歌を収録した2ndシングル「この空の果て」を発表。2018年3月に1stアルバム「Sparkle」をリリースする。