私は“女”を歌いたい
──今回のアルバムの全10曲からも、10通りの主人公の像が伝わってきますね。
ある種の妄想になりますが、井上実優自身ではない、架空の主人公を立てることがすごく楽しいです。と言うか、そもそもそうしないとうまく歌えなくて。歌うたびに違う主人公になれることもシンプルに楽しいですね。
──頭の中で構築する主人公たちは、かなり映像的と言うか具体的なイメージなのですか?
そうですね。ルックスやスタイルがこうで性格がこうでなどかなり具体的ですね。
──そのイメージをすべて具現化するようなミュージックビデオとかアニメを制作したら楽しそうですね。
そうですね。それ、いつか実現させてみたいです!
──「Slave (album ver.)」は「Boogie Back」に収録されていた曲のアルバムバージョンです。この曲は井上さんが敬愛するクリスティーナ・アギレラを想起させる1曲ですが、最近のフェイバリットは?
マギー・リンデマンというシンガーが好きですね。アギレラもそうですが、ジェシー・Jも大好きだし。やっぱりパワフルで身体の芯に訴えかけてくるような女性ボーカルに惹かれるみたいですね。
──「この空の果て」はドラマ「科捜研の女」の主題歌で、作詞はいしわたり淳治さんとの共作クレジットですね。
私はデビュー時からずっとサウンドプロデューサーであるミワコウダイさんと音楽を作ってきたので、本作がミワさん以外の方と共作することが初めてで、最初は緊張しました。でもいしわたりさんはしっかりとミーティングの時間を設けてくれて、とても丁寧に接してくださって。私が表現したかった“女性の強さ”を私の描いていたイメージ通りに、一緒に表現してくれました。
──ミーティングの中で印象に残った会話はありますか?
歌詞に直接関係した話ではないですが、最近、“女”という言葉があまり歌詞で使われないねという話になって。近頃はなんでも“◯◯女子”とくくるじゃないですか。“女”の方はどちらかと言うと、ニュースにおける事件の容疑者とか悪い人のくくりで用いがちで。
──そうですね。昔の歌謡曲やポップスでは頻繁に使われていたんですけどね。
でも私は“女”という呼称に対してまったくイヤなイメージがなくて。むしろカッコいいと思うし、私が聴いてきた洋楽における主人公って、どちらかと言えば“女”のイメージだと思うんですね。だから私の中では強い女性=“女”だし、私自身もそういう“女”になりたいと思っているということに改めて気付かされて。
──確かに5曲目の「Robin」然り、井上さんの歌の主人公は“女性”度数よりも“女”度数のほうが高い気がする。
まだ発展途上ですけど、憧れの対象としての“女”を歌うことで、私もそこに近付いていきたい。「付いてきてね?」と旗を振りながら、カッコいい“女”の姿を提示していくことで、リスナーの皆さんを引っ張っていけるような存在になりたいですね。
発見が多いミワコウダイとの共作作業
──「Break down」はギラギラとした焦燥を感じさせるテイストの曲ですね。
これは中学生のときに制作した楽曲でした。やや歌謡チックな懐かしさは「Boogie Back」と共通していると思います。先程の強い女の話にも通じると思うのですが、「Break down=ぶっ壊す」という強い意志を掲げた、このアルバムの中でもっともギラギラとした遊び心のある楽曲ですね。歌のリズムがとにかく難しい楽曲で、これも私にとっていろいろと初挑戦の1曲でした。
──「消えない」は表情の異なるファルセットの使い分けが効いています。こういう歌い方もハマるんですね。
ありがとうございます。私にとっても新たな発見でしたし、かなり好きな楽曲になりました。歌詞のテーマは夢と恋の選択や、夢に対する覚悟についてで、今の私のリアルな思いを乗せることができました。相手を好きで尊重しているからこそ、私の愛情だけで相手の夢を阻めない。そんな葛藤を歌った1曲です。
──今回のアルバムは全10曲中、ミワさんが作曲・編曲のすべてを手がけ、加えて西尾芳彦さん(※井上が卒業した音楽塾ヴォイスの塾長。これまでにYUI、絢香、家入レオらを輩出)が2曲の作曲に参加しています。作詞は井上さん単独名義が2曲、井上さんとミワさんの共作名義が6曲、ミワさん単独名義が1曲で、前述の井上さんといしわたりさんの共作名義が1曲という内訳です。ミワさんとの共作クレジットの歌詞における互いの言葉やアイデアの比率はどのような感じなのですか?
楽曲によってバラつきがありますけど、最近は段々と6:4とか7:3とか、私の比率が上がってきています。ミワさんはサウンドプロデューサーで信頼関係もかなり強いのですが、それでもいまだに制作で向き合うたびに、お互いの知らなかった面や驚かされるアイデアといった発見があふれています。「最近何観た?」とか「最近楽しかったことは?」とか常に共有するようにしているので、それも楽曲制作の大事な材料になっていると思います。
──緊密なコミュニケーションを心がけているんですね。
もうお父さんみたいな感じです(笑)。音楽以外の話も何でも話せるし。
──それで言うと大ボスキャラの西尾さんについては?
いつも私のことを心配してくれている、まさしく大ボス的な存在でしょうか(笑)。
──井上実優、すごく恵まれた環境ですねえ。
はい、本当にありがたいです。
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「ここから飛躍して行くぞ」という覚悟のアルバム
- 井上実優「Sparkle」
- 2018年3月21日発売 / Victor Entertainment
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初回限定盤 [CD+DVD]
3240円 / VIZL-1345 -
通常盤 [CD]
2808円 / VICL-64972
- CD収録曲
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- 近未来
- Boogie Back
- Slave (album ver.)
- この空の果て
- Robin
- Break down
- 消えない
- Shake up
- I will be your love (Sparkle ver.)
- again
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 「この空の果て」Music Video
- 「この空の果て - Behind the Scenes -」
- 井上実優(イノウエミユ)
- 1997年生まれ、福岡県出身の女性シンガー。小学校6年生のときに出場した音楽コンテスト「唐津ジュニア音楽祭」をきっかけに、音楽塾ヴォイス主宰の西尾芳彦に出会う。中学生の頃から作詞作曲と歌唱の研鑽を積み、高校入学を機に本格的に曲作りをスタート。2016年春に上京し、7月には東京・日本武道館で行われたライブイベント「スカパー! Presents『FULL CHORUS ~音楽は、フルコーラス~』 in 日本武道館」に出演し、ステージデビューを果たす。2017年4月にシングル「Boogie Back」でビクターエンタテインメント内のレーベル・ビクターレコーズよりメジャーデビューを飾る。8月に新作CD「Shake up EP」を、ドラマ「科捜研の女」主題歌を収録した2ndシングル「この空の果て」を発表。2018年3月に1stアルバム「Sparkle」をリリースする。