井上実優|メジャー2作目でさらけ出す 飾らない自分

2017年4月にテレビアニメ「ドラゴンボール超」のエンディングテーマ「Boogie Back」でメジャーデビューを飾った19歳の女性シンガー井上実優が、キャリア2作目となるCD作品「Shake up EP」を8月23日にリリースする。

年齢やキャリアと不釣り合いなその歌声が1980年代風味のダンスビートに乗って響く「Boogie Back」には強いインパクトを受けたが、続く「Shake up EP」で聴ける新しい曲たちは、デビュー曲とは違う新しい表情を見せている。その1曲1曲について、そして歌に向き合うときの気持ちなどについて、8月19日に20歳の誕生日を迎える彼女に聞いた。

取材・文 / 兵庫慎司

スペイン語の「Boogie Back」を見つけたのが衝撃的だった

──デビューシングル「Boogie Back」が4月に出ましたが、リリース後、何か印象に強く残った出来事ってありました?

初めてのシングルをリリースしたときは、やはりアニメのタイアップの影響が大きくて(「ドラゴンボール超」エンディングテーマ)、家族や地元の友達の反響が印象に残りましたね。でも一番は、海外の方がSNSで直接メッセージをくれたことです。海外の人に知ってもらえたというのがすごくうれしかったですね。YouTubeでスペイン系の方が「Boogie Back」をギターを弾きながら歌っている動画を見つけたことが衝撃的でした。スペイン語で歌っていたのですが、歌唱力がすごくて、メロディは明らかに原曲とは違う感じにアレンジされていました(笑)。

──なるほど。では新作「Shake up EP」の収録曲について1曲ずつ伺っていきたいと思います。まず「Shake up」はどのようにできあがっていった曲でしょうか。

この楽曲は、地元の福岡にいた頃に原型がありました。ほかの楽曲もそのパターンが多いのですが、まずはサウンドプロデューサーのミワコウダイさんから渡された英語のサビのフレーズだけが入ったデモ音源を聴いて、そこから世界観を想像し、自分なりにそのフレーズ以外の歌詞を書いてみる、というふうに作っていきました。私は「Shake up」という言葉を「自分をさらけ出す」と捉えて、「素の自分、飾らない自分をさらけ出していこう」というテーマを曲に定めました。この楽曲は、主人公と“君”という2人の人物が出てきて、主人公が“君”を、「もっと自分を出せばいいのに」「そのままでいいんだよ」と励ますストーリーです。私はどちらかと言うと、性格的には“君”側なのですが(笑)。いつも「大丈夫かな」って不安であったり、やりたいことはあるけどチャレンジできなかったりするので。でも、この楽曲を歌うたびに自分自身にも言い聞かせることができるし、自分へのメッセージとしても受け取れると思って、歌詞を書きました。

──歌詞を書き上げて、レコーディングしたときはいかがでしたか?

楽曲のサビの頭に「ヘイ!!」と入っている明るい曲ですが、最初はテンションがそこまで追いついていなくて、(平坦に)「ヘイ」みたいな感じで始めてしまいまして、歌のレコーディング中にプロデューサーに「何? 今の『ヘイ』は!」と言われました(笑)。なかなかうまくできなくて仕切り直して気持ちをリセットし、明るい曲を聴いて、テンションを高めて高めて、顔もニコッと作ってからマイクの前に立って、もう一度歌いました。顔や手振りを意識すると、やっぱり声がノリますね。

──2曲目の「Robin」の原型はいつできたんですか?

これは「Shake up」より少しあとに制作した楽曲です。サビの「Crazy」というフレーズがデモ音源からありまして、それを軸に「どういう楽曲にしようか?」と広げていきました。私の大好きなクリスティーナ・アギレラの「Ain't No Other Man」という楽曲を強くイメージして制作していって。メロディやアレンジを聴いて浮かんだ情景が、西洋のバーやクラブのようなイメージがあったのです。なのでこの楽曲では、私の等身大と言うよりは、もっと歳上の女性をイメージして書きました。恋愛経験値が高すぎて恋を軽く見ている、妖艶な女性ですね。歌い方もアギレラを強くイメージして。レコーディングのときは、まずアギレラの楽曲を聴いて、アギレラのモードになってから「はい録る!」といった感じで歌入れしました。

──1曲を作るのに、けっこう時間がかかるのでは?

そうですね、かなり時間がかかりますね(笑)。プロデューサーと1対1のレコーディングで、とにかく歌入れにはこだわって時間をかけました。

──この曲には、タブゾンビ(Tp / SOIL & "PIMP" SESSIONS)さん、滝本尚史(Tb)さん、栗原健(Sax)さんも参加していますよね。

楽曲のイメージを、もっとリアルにしたくてお願いしました。初めてブラスセクションのレコーディングに立ち会ったのですごく緊張しましたが、とにかく新鮮でしたね。「こういうふうに吹いてください」とお願いするのも最初はとても緊張しましたが、私のイメージに近づけるためにたくさんキャッチボールに付き合っていただきまして、貴重な経験ができました。

井上実優

「Sweet Love」は、一番素の思いがリンクしている

──「Sweet Love」は、どういうキャラクターを設定するところから始めたんですか。

この楽曲は上京する少し前に書いた楽曲ですが、上京するときの私の心境や、一番素の思いがリンクしている楽曲ではないかなと思います。歌詞は主人公ともう1人の人物が進学を機に離れてしまう、という誰もが経験する別れをイメージしています。私なりに家族や友達との別れを書いた楽曲ですが、転勤などの職場の人との別れであったり、あるいは恋人との別れであったり、いろいろなシチュエーションで受け取ってもらいたい楽曲ですね。この楽曲を書いているときは、地元を離れて東京に行くというのはまだ想像でしかありませんでしたが、寂しい気持ちはその頃から薄々とあって……今でも自分に染みる楽曲ですね。

──「Shake up」のようなテンションの高い曲と、少し悲しげな「Sweet Love」ではどちらのほうが歌詞を書くのが得意ですか?

どちらかというと、少し悲しげな楽曲のほうが得意ですね。ただ、「Sweet Love」は「地元の福岡を離れて悲しい」という感情だけを歌った楽曲ではないつもりです。未来のために、それぞれみんな上京したり故郷を離れたりするわけじゃないですか。ですので、悲しみを引きずるような楽曲ではなくて、未来のある別れの楽曲にしようと思って書きました。

──そして4曲目はデビューシングル「Boogie Back」の牛尾憲輔さんによるリミックスです。

原曲の「Boogie Back」は、多くの方に「懐かしいメロディだね」と言っていただきました。確かに歌謡曲ふうの印象が強い楽曲だったと思いますが、ある方から「もっとクラブっぽい部分を引き立たせたら?」というアイデアをもらい、「なるほど」と思いましたね。それで、私の事務所の大先輩である牛尾憲輔さんに、この楽曲のリミックスをお願いしました。初めて聴いたときの印象は、正直、頭の中が真っ白になったというか(笑)。「これはなんだろう?」という、未知との遭遇でした。でも、マスタリングに立ち会い何回も聴いていると、聴けば聴くほどどんどん身体に入ってきて、「Boogie Back」のもう1つの世界が広がったような気がしました。「こんな『Boogie Back』もあるんだ」ということを、牛尾さんに発見させてもらった気がしますね。

井上実優「Shake up EP」
2017年8月23日発売 / ビクターレコーズ
井上実優「Shake up EP」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
1944円 / VIZL-1224

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井上実優「Shake up EP」通常盤

通常盤 [CD]
1296円 / VICL-64837

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CD収録曲
  1. Shake up
  2. Robin
  3. Sweet Love
  4. Boogie Back(kensuke ushio REMIX)
DVD収録内容

Slave of Love TOUR 2017 at Shibuya WWW

  • 「Shake up」Music Video
  • 「Shake up EP - Behind the Scenes -」
井上実優(イノウエミユ)
井上実優
1997年生まれ、福岡県出身の女性シンガー。小学校6年生のときに出場した音楽コンテスト「唐津ジュニア音楽祭」をきっかけに、音楽塾ヴォイス主宰の西尾芳彦に出会う。中学生の頃から作詞作曲と歌唱の研鑽を積み、高校入学を機に本格的に曲作りをスタート。2016年春に上京し、7月には東京・日本武道館で行われたライブイベント「スカパー! Presents『FULL CHORUS ~音楽は、フルコーラス~』 in 日本武道館」に出演し、ステージデビューを果たす。2017年4月にシングル「Boogie Back」でビクターエンタテインメント内のレーベル・ビクターレコーズよりメジャーデビュー。8月には新作CD「Shake up EP」をリリースする。