音楽ナタリー Power Push - いきものがかり
国民的グループが届ける“普通”というファンタジー
普通であることの素晴らしさと難しさ
──ナタリーで初めていきものがかりにインタビューしたのは2008年でした(参照:いきものがかり「My song Your song」インタビュー)。当時は3枚目のアルバムが出たばかりで、そのとき自分は「いきものがかりは過小評価されてる」という話をしたと思うんですけど。
水野 そうですね。あの取材は楽しかったです(笑)。
──あれから7年以上経ちますが、今は当時と比べて、適切な評価を受けていると思いますか?
山下 あの頃より名前は知られるようになりましたよね。広がったんだなって思うし、それは望んでたことだからよかったなって思う。今はライブ会場に80代のご夫婦がいたりしますから。
水野 そして、これはいい意味で捉えてるんですけど、“普通”の代名詞みたいになってますよね。「いきものがかりって普通だよね」って。王道までいかなくて、ただ普通(笑)。
──そう思われるのは不本意?
水野 いや、それがすごく大事だし、いいことだと思うんです。だって普通なんて今どこにもないじゃないですか。あるわけがない。でもそこに近付いてる。この時代に普通って言われることの素晴らしさと難しさは感じてますね。
──でもミュージシャンとしては、「普通だね」って言われるより「すごいね」とか「ずば抜けてるね」って評価されるほうがうれしいんじゃないですか?
吉岡 それが難しいとこなんですよね(笑)。自分たちでは当然「これ普通だな」と思って作ってるわけではないし、すごい熱を込めて作ってるんですけど、そういうこっち側の思いは曲を聴いてくれてる人には関係ないというか。「普通だよね」って思われながら、聴いてくれてる人の中にスッと入ってくれればいいなって。
居酒屋で褒められたい
──自分たちがやっていることは、リスナーに正しく理解されていると思いますか?
水野 どうなんだろうね。
山下 でも比較的ちゃんと受け取ってもらえてるんじゃないですかね。だからなんとか10年やれてきたのかなって思うし。でもそこについては、どういう理解でもいいっていうのがこちら側の基本的なスタンスなんですよ。100%正しく受け取ってもらう必要はまったくない。
水野 自分たちを理解してもらうことに無頓着なのかもしれないですね。一応こういうインタビューなんかで説明することもあるけど、「俺らのこの部分のすごさをわかってほしい」とか「こんなストーリーがあるんです」なんて方向にはいかないですね。聴いてる人には関係ないから。
──曲を聴いてくれればそれでいいということですね。
水野 例えば「帰りたくなったよ」を聴いた人から「この部分が作曲家としてすごいですね」とか「吉岡さんのこのファルセットがいいですね」って褒められるよりも、「聴いてて故郷を思い出しました」って言われるほうがよっぽどうれしい。
吉岡 まあどっちもうれしいけどね(笑)。
水野 人間だからね、そりゃ褒められたらうれしい。特に狭い居酒屋で飲んでるときなんかに褒められたら、ものすごくうれしいよ。
一同 あははは(笑)。
吉岡 そういう経験があるんだ?
水野 うん、その晩はすごいいい気分で寝れたもん(笑)。
山下 人間だからまあそういうのもあるんだけど、でも3人とも結局「いい曲だね」って言われるだけで満足なんですよ。
水野 うん、だからTwitterとかやってると「3人仲良しのこの感じが大好きなんです」とか「この3人から出てくる曲ならなんでも聴きます」って言われることがあって、それもすごくうれしいんだけど、同時に「いや、そうじゃなくて」みたいな気持ちもある。お客さんには申し訳ないんだけど(笑)。
吉岡 でもそういう楽しみ方があるのも事実なんですよね。アーティストのキャラクターや存在が好きっていう。
山下 うん、だからある程度キャラクターが認知されなきゃいけないっていう意識は以前からありましたよ。まさにこの7年ぐらいでそういうコアなファンの人とか「聖恵ちゃん大好き!」みたいな人が増えたなという感覚はあって。ある程度そうならないと食っていけないだろうと思ってたから、そこはよかったなと思います。
3人だけでできることはすごく少ない
──先ほどいきものがかりが“普通”だという話がありましたが、こうして10年間にわたって音楽シーンの第一線を走り続けてるわけで、やっぱり特別なグループだと思うんです。皆さんは自分たちの才能みたいなものについて、どう捉えてるんでしょうか。
水野 うーん、才能がないってことはないですよね。そこを否定するのは共に音楽の世界に入って辞めていった人たちに失礼だと思う。かと言って、自分たちが天才かと言うとそうではなくて。3人だけでできることはすごく少ないグループなんです。演奏も全然ダメだし、ミュージシャンとは呼べないぐらいの能力からスタートしてる。でも周りにいるすごいプロの人たちとちゃんと向き合えるようにと思って、その一心で非常によくがんばってきたんじゃないですかね(笑)。
──1つひとつ乗り越えてきたわけですよね。
山下 でもこういう仕事って3割の才能と7割の運だと思ってて。運というか、出会いというか。
──3割の才能と7割の努力ではない?
山下 運ですね(笑)。3割の才能も、3人がなんとか1割ずつ持ち寄ってるだけなんで。
吉岡 自分たちが持ってるものをいろんな人に引き出してもらってここまで来たなって。すごくありがたいことですよね。そういうふうに進んでこれたのは本当にラッキーだなって思います。
次のページ » 普通というファンタジー
- ベストアルバム「超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~」 / 2016年3月15日発売 / EPICレコードジャパン
- ベストアルバム「超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~」
- 初回生産限定盤 [CD4枚組] / 4800円 / ESCL-5555~8
- 初回仕様限定盤 [CD3枚組] / 3600円 / ESCL-5560~2
DISC 1
- SAKURA
- キミがいる
- 気まぐれロマンティック
- 茜色の約束
- あなた
- キラリ
- 帰りたくなったよ
- ふたり
- コイスルオトメ -激情編-
- 涙がきえるなら
- いこう
- なくもんか
- 心の花を咲かせよう
- 地球
DISC 2
- ありがとう
- じょいふる
- ブルーバード
- いつだって僕らは
- 翼
- 歩いていこう
- YELL
- GOLDEN GIRL
- Good Morning
- Sweet! Sweet! Music!
- 1 2 3 ~恋がはじまる~
- 東京
- 恋詩
- 熱情のスペクトラム
- マイステージ
- 会いにいくよ
DISC 3
- 風が吹いている
- 笑ってたいんだ
- ラブソングはとまらないよ
- NEW WORLD MUSIC
- うるわしきひと
- 夏空グラフィティ
- KISS KISS BANG BANG
- 花は桜 君は美し
- プラネタリウム
- LIFE
- ラブとピース!
- 真夏のエレジー
- 笑顔
- 夢題~遠くへ~
-No Fade Out ver.- - ぼくらのゆめ
DISC 4 ※初回生産限定盤付属
- ホットミルク
- 甘い苦い時間
- 二輪花
- 蒼い舟
- 月夜恋風
- 最後の放課後
- 夏色惑星
- おもいでのすきま
- オリオン
- my rain
- 赤いかさ
- ホントウノヒビ
- ハジマリノウタ~遠い空澄んで~
- 白いダイアリー
- ノスタルジア -Original Lyrics ver.-
いきものがかり「超いきものまつり2016 地元でSHOW!! ~海老名でしょー!!!~」
- 2016年8月27日(土)
- 神奈川県 海老名運動公園
- 2016年8月28日(日)
- 神奈川県 海老名運動公園
いきものがかり「超いきものまつり2016 地元でSHOW!! ~厚木でしょー!!!~」
- 2016年9月10日(土)
- 神奈川県 厚木市荻野運動公園
- 2016年9月11日(日)
- 神奈川県 厚木市荻野運動公園
いきものがかり
吉岡聖恵(Vo)、水野良樹(G)、山下穂尊(G, Harmonica)の3人組ユニット。1999年結成。当初は地元・神奈川での路上ライブを中心に活動し、2003年にインディーズで初CDをリリース。2006年に発売したメジャー1stシングル「SAKURA」がスマッシュヒットを記録し全国区の人気を獲得する。2007年3月には1stフルアルバム「桜咲く街物語」を発表。切なくて温かい等身大のポップチューンが老若男女問わず幅広い層から強い支持を集めている。2010年には初のベストアルバム「いきものばかり~メンバーズBESTセレクション~」をリリースし、ミリオンセラーを記録した。2012年にはNHKロンドンオリンピック放送のテーマソング「風が吹いている」でグループ史上最長となる7分40秒の大作に挑戦する。2014年12月に7thアルバム「FUN! FUN! FANFARE!」を発表し、2015年には2年ぶりの全国ツアー「いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2015 ~FUN! FUN! FANFARE!~」を開催、25万人を動員する。同年11月に31枚目のシングル「ラブとピース! / 夢題~遠くへ~」をリリース。2016年3月15日にはメジャーデビュー10周年を記念するベストアルバム「超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~」を発表する。