子供も歌える「きのこいぬ」、昭和チックな「渚の恋は虹色模様」
──アルバム2曲目、テレビアニメ「きのこいぬ」のオープニング主題歌「きのこいぬ」と、8曲目の「渚の恋は虹色模様」も仲宗根さんの作詞作曲ですが、「恋をして」とのギャップがすごいですね。
仲宗根 そうですね(笑)。「きのこいぬ」はもちろんアニメの主題歌として作ったんですけど、自分の娘が喜ぶ曲、娘くらいの子たちが口ずさめるような曲にしたいと思って。「いーぬいぬいぬ きのこいぬ」というサビのフレーズができて「これだ!」と思ったんですけど、マネージャーに聴いてもらったら「これはダメでしょ」と(笑)。でも、ほかの曲がぜんぜん浮かばなかったので、とりあえずアニメのスタッフの方に送ったんですよ。そしたら「これでいきましょう」ということになりました(笑)。
名嘉 1回聴いたら覚えちゃうよね。
新里 「渚の恋は~」は、イズがもともと好きな昭和歌謡のムードがしっかり形になってます。
仲宗根 この曲は私のお母さんに喜んでもらいたいくて作りました。うちの両親はフォーク世代で、吉田拓郎さんが大好きなんですよ。2人が若いときの写真を見せてもらって、「この頃はフォークばっかり聴いてたんだよ」という話もよく聞かされていたんです。「渚の恋は~」は、まさにその時代をイメージして作ったんですけど、お母さんに聴いてもらったら「吉田拓郎のほうがすごいね」って(笑)。
新里・名嘉・許田 ハハハハハ!
仲宗根 そのあと「いい曲だけどね」と言ってもらえたのでよかったです(笑)。「渚の恋は虹色模様」という曲名は仮タイトルのつもりで付けてたんですよ。そしたらいつの間にか正式なタイトルになってて、友達から「すごい昭和っぽいタイトルだね」って言われました(笑)。
──「大大大好き」はテレビアニメ「沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる」のオープニング主題歌です。まさに青春真っ盛り!という感じのポップな楽曲ですね。
新里 確かにポップですよね。主に俊が作ったメロディに、僕がちょっとアレンジを加えて。歌詞は僕と俊の2人で書きました。そういう作り方も面白かったし、もともとアニメが大好きなので、僕なりのアニソンへの愛を注ぎ込んで作りました。
名嘉 「きのこいぬ」もそうですけど、「大大大好き」も1回聴いたら耳に残ると思います。それがアニソンを作らせてもらうときのポイントなのかなと。
──仲宗根さん、新里さんの歌声も若々しいですよね。10代みたいな雰囲気で……。
仲宗根 そんな? 40代ですけどね(笑)。
新里 歌詞がそうさせてるのかもしれないですね。僕たちが小さい頃に遊んでた沖縄の風景も描かれているので。あとはプロデューサーの松岡モトキさんに「青春学園もの、ラブコメの要素を入れてほしい」とお願いしたんですよ。三線のメロディは僕が作ったんですけど、最初のギターフレーズは松岡さんのアイデア。あれが学園っぽさにつながっているんだと思います。
人はみんなちっぽけな存在だからこそ
──「明日種~アシタネ~」「まっすぐに」「モモタマナ」は名嘉さんが手がけた楽曲です。多彩なリズム、サウンドが印象的でした。
名嘉 「モモタマナ」はひさしぶりにセルフプロデュースで作りました。「恋をして」は松岡モトキさんがサウンドプロデュース、菅野祐悟さんがストリングスのアレンジをしてくれて、そうそうたる人たちに手伝ってもらっているんですよ。そうやって作り上げるのもすごくいいけど、セルフプロデュースの楽曲も入れたくて。自分の熱量をそのまま曲に持ち込めるし、自由に作れますからね。
──「モモタマナ」は沖縄の各地に自生している植物ですね。
名嘉 海のそばにたくさん生えてます。防風林なんですけど、昔の人はモモタマナの木陰で相談ごとをしたり、恋の話なんかもしてたみたいです。ずっと消えないような沖縄の風景を歌にしたいと思っていたので、しっかり形にできてよかったです。9曲目の「Beautiful」はヒデのセルフプロデュースなんですよ。お互いセルフプロデュース曲を入れようと打ち合わせたわけではなくて、たまたま。「モモタマナ」を自分で作りたいとマネージャーに連絡したら、「ヒデも『Beautiful』をセルフプロデュースで作るって言ってるよ」と。
新里 「Beautiful」は自分の中で完成形のイメージがあったし、セルフプロデュースでやってみようかなと思って。素晴らしいプロデューサーの皆さんのそばでいろいろ学ばせてもらったので、「それを自分はちゃんと受け取っているのか?」というチャレンジでもありました。
許田 プロデューサーに入ってもらうと勉強できることがたくさんあるし、新しい刺激をもらえる。そこで得たものを自由に生かせるのが、セルフプロデュースのいいところですね。
──「Beautiful」にはゴスペルのテイストも入ってますね。
新里 それはあとから入れました。かなり時間をかけて作った曲で、そのときどきで思い浮かんだ要素を入れながら仕上げて。この曲が生まれた種は、沖縄の“やんばる”という自然豊かな場所に行ったことなんです。沖縄は星がきれいに見えるんですけど、あるとき「最近、あんまり星空を見上げてないな」と思って。やんばるで夜空を見上げたら、本当に空から降ってきそうなくらいの満天の星空で、鳥肌が立つくらい心が揺れ動きました。そのときに浮かんできたことが「Beautiful」の歌詞のもとになっています。このたくさんの星の中に地球があって、そこに自分たちは住んでいる。人はみんなちっぽけな存在なんだよなと思うと、自分の悩みも大したことないなと感じられた。小さいことに捉われず、大きなことを考えて、自分の心を自由に表現すればいいと開き直れたんです。
──小さい存在だからこそ、大きなことを考えていいし、自由に生きていいと。
新里 はい。そこから「あなたに幸せになってほしいから歌う」というところにたどり着きました。今もそうですけど、世界には戦争や争いが起きている地域がある。それを止められるなんて思ってないけど、音楽にはすごい力あるし、国境を越えていけるものなので、平和に近付くきっかけになったらいいなと思います。
現状維持ではなく変化を楽しむ
──2025年3月15日、16日には「HY SKY Fes 2025」が行われます。今回が6回目の開催ですが、フェスを継続するのは本当にすごいことだと思います。
仲宗根 そうですよね。今年は結成25周年だから、例年以上に豪華な装飾にしようと思っていて。装飾はメンバーも一緒に作ってるから、だいぶ大変だと思います。
許田 怖い怖い(笑)。
名嘉 ね(笑)。大変だけど、会場の設営の段階からしっかり関われるのはすごくいいことだと思います。出演してくれるアーティストもすごい方々だし、ぜひ遊びに来てほしいです。
──そして4月には「HY 25th Anniversary BEST!! Kary TOUR 2024-2025」の後半戦がスタートします。どんどん先に進んでますね、HYは。
新里 そうですね。
名嘉 もう次のアルバムのことも考え始めてますから。
仲宗根 「TIME」の取材をやってる最中にね(笑)。
許田 ハハハ。
名嘉 スタッフさんとも話しているんですけど、現状維持だと怖いと思っていて。もっと上に行くためにも、いろんな変化を楽しんで、小さい目標を掲げながらやっていけたらなと。4月からのツアーのセットリストには、アルバムの曲をどんどん入れていきたいです。時の流れは速いので、ホットなうちにやっていったほうがいいかなって。
──素晴らしい。「TIME」といえば、沖縄には“ウチナータイム”みたいな言い方がありますけど、HYはのんびりすることなく、めっちゃ働き者ですよね。
仲宗根 若いときはけっこうウチナータイムでしたけど(笑)、「沖縄では大丈夫でも、県外では通じないからね」と何度も周りのスタッフに注意されたんですよ。それで変わった部分はあります。ずっと仲よくしてるかりゆし58とかを見てると、「けっこうユルいなー」と思ったりします(笑)。
公演情報
HY SKY Fes 2025&前夜祭
- 2025年3月14日(金)沖縄県 沖縄県総合運動公園 多目的広場
<出演者>
HY / Anly - 2025年3月15日(土)沖縄県 沖縄県総合運動公園 多目的広場
<出演者>
HY / かりゆし58 / CHEMISTRY / GENERATIONS / スターダスト☆レビュー / BURNOUT SYNDROMES / LiSA / ありんくりん / MASA MAGIC - 2025年3月16日(日)沖縄県 沖縄県総合運動公園 多目的広場
<出演者>
HY / imase / 大塚愛 / キマグレン / 肝高の阿麻和利 / Saucy Dog / SUPER BEAVER / ありんくりん / MASA MAGIC
HY 25th Anniversary BEST!! Kary TOUR 2024-2025
- 2024年9月22日(日・祝)沖縄県 那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場
- 2024年9月28日(土)東京都 ひの煉瓦ホール(日野市民会館)
- 2024年9月29日(日)東京都 東京都 かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
- 2024年10月12日(土)愛知県 岡谷鋼機名古屋公会堂 大ホール
- 2024年10月13日(日)静岡県 焼津市大井川文化会館ミュージコ
- 2024年10月26日(土)千葉県 印西市文化ホール
- 2024年10月27日(日)埼玉県 狭山市市民会館
- 2024年11月9日(土)兵庫県 神戸文化ホール 大ホール
- 2024年11月10日(日)奈良県 なら100年会館 大ホール
- 2024年11月23日(土・祝)新潟県 上越文化会館 大ホール
- 2024年11月24日(日)福井県 敦賀市民文化センター 大ホール
- 2024年12月7日(土)宮城県 電力ホール
- 2024年12月8日(日)岩手県 花巻市文化会館 大ホール
- 2024年12月14日(土)熊本県 熊本城ホール メインホール
- 2024年12月15日(日)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
- 2025年1月18日(土)香川県 サンポートホール高松 大ホール
- 2025年1月19日(日)高知県 高知市文化プラザ かるぽーと 大ホール
- 2025年1月25日(土)山口県 宇部市渡辺翁記念会館
- 2025年1月26日(日)島根県 島根県芸術文化センター グラントワ
- 2025年4月5日(土)佐賀県 佐賀市文化会館
- 2025年4月6日(日)長崎県 ベネックス長崎ブリックホール
- 2025年4月19日(土)茨城県 ザ・ヒロサワ・シティ会館(茨城県立県民文化センター) 大ホール
- 2025年4月20日(日)山梨県 東京エレクトロン韮崎文化ホール
- 2025年4月27日(日)新潟県 アミューズメント佐渡 大ホール
- 2025年4月29日(火・祝)石川県 本多の森 北電ホール 北電ホール
- 2025年5月10日(土)岡山県 岡山芸術創造劇場ハレノワ 大ホール
- 2025年5月11日(日)広島県 呉信用金庫ホール
- 2025年5月24日(土)栃木県 大正堂くろいそみるひぃホール(那須塩原市黒磯文化会館) 大ホール
- 2025年5月25日(日)群馬県 藤岡市みかぼみらい館 大ホール
- 2025年5月31日(土)愛知県 安城市民会館 サルビアホール
- 2025年6月1日(日)岐阜県 可児市文化創造センターala
- 2025年6月7日(土)北海道 北ガス文化ホール(千歳市民文化センター)
- 2025年6月8日(日)北海道 帯広市民文化ホール 大ホール
- 2025年6月21日(土)大分県 iichikoグランシアタ
- 2025年6月22日(日)宮崎県 宮崎市民文化ホール
- 2025年7月5日(土)長野県 カノラホール 大ホール
- 2025年7月6日(日)神奈川県 海老名市文化会館 大ホール
- 2025年7月20日(日)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
- 2025年7月21日(月・祝)大阪府 オリックス劇場
- 2025年8月9日(土)山形県 荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)
- 2025年8月11日(月・祝)青森県 リンクモア平安閣市民ホール
- 2025年8月31日(日)京都府 ロームシアター
- 2025年9月7日(日)東京都 Kanadevia Hall
- 2025年9月21日(日)沖縄県 沖縄コンベンションセンター展示棟
プロフィール
HY(エイチワイ)
2000年に沖縄で結成されたミクスチャーロックバンド。2003年にリリースしたアルバム「Street Story」がインディーズながら100万枚以上の大ヒットを記録。2010年と2012年には「NHK紅白歌合戦」に出場した。2013年には沖縄で自主レーベル·ASSE!! Recordsを設立し、本格的に地元に拠点を移す。2019年9月にギタリストの宮里悠平が脱退し4人体制に。結成25周年イヤーに突入した2024年、ヒット曲「366日」が月9ドラマ化。同曲の新バージョン「366日(Official Duet ver.)」が2月に配信リリースされた。同年6月にはベストアルバム「LOVE STORY ~HY BEST~」を発表。9月には1年間にわたる全国ツアーをスタートさせ、12月に12年ぶり3回目の「NHK紅白歌合戦」出場を果たす。2025年1月に「366日」をモチーフにした映画が全国公開された。その主題歌「恋をして」を収録した16thオリジナルアルバム「TIME」を同月にリリース。