音楽ナタリー Power Push - HUSKING BEE
20年目に再び集まった3人のメンバー
2012年に再結成を果たし、再結成後2枚のアルバムをリリースしたHUSKING BEE。今年に入りTEKKINこと工藤哲也(B, Cho)が再加入し、磯部正文(G, Vo)、平林一哉(G, Vo)と共に「FOUR COLOR PROBLEM」発売時のメンバー3人でニューアルバム「Suolo」を完成させた。この作品は、今のこの3人の信頼感があるからこその伸びやかさや思い切りのよさを感じさせる、実に瑞々しいアルバム。Tokyo Tanaka(MAN WITH A MISSION)、下村亮介(the chef cooks me)、ミツハシアツシ(ex. NUKEY PIKES)などゲストも多数参加し、音楽を奏でる喜びにあふれた1枚に仕上げられている。このアルバムについての話を3人に聞いた。
取材・文 / 遠藤妙子 撮影 / 寺沢美遊
TEKKINの存在はハスキン全体に深く影響していると気付いた
──7月にライブを観たんですが、若さだけでは出せないフレッシュさを感じました。で、それより前にお会いしたとき、磯部さんは「TEKKINさんがウクレレで弾き語りを始めたらしい」ってうれしそうに話してましたよね。
磯部正文(G, Vo) ちょうど「TEKKINさんが突如ウクレレを始めたらしいぞ、ライブも始めるらしいぞ」って噂を聞いた頃だったんです。人に教えたくなったんでしょうね(笑)。
──ウクレレ弾き語り、ライブ観ました。意外にも(笑)とてもよかったです。TEKKINさんがHUSKING BEEに復帰した経緯をお聞きしたいのですが。
磯部 交流はずっとあったんです。TEKKINさんがライブを観に来てくれたり、僕も子供を連れて彼の家に遊びに行ったり。僕は去年の夏ぐらいから新しい曲のデモを作っていたんですが、年末ぐらいに今後の活動のことをいろいろ考えている中で、「TEKKINさんに戻ってきてほしい」という気持ちが出てきまして。前のメンバーがどうのということではないんです。メンバーチェンジに関しては、僕に責任があるので。その過程でいろんなことを考えたんですけど、作っている曲と新作をもっとハスキンらしくするにはって思ったときに、TEKKINさんとは結成当初からの付き合いですから気心が知れてるし、彼の存在は、ハスキン全体に深く影響しているんだなと気付いて。オリジナルメンバーというのはそういうことなんだろうなって。それでTEKKINさんを誘ったんです。
──今の話の中の、「もっとハスキンらしくするには」って言葉、いいですね。ずっと活動してきて、たぶん磯部さんはハスキンを背負っていたり、ソロのときは忘れようとしていたり、HUSKING BEEというものをとても意識していたと思うんです。でも今の磯部さんの「ハスキンらしく」って言葉は素直な気持ちなんだろうなって。背負うことから解放へ向かう中で出てきた言葉なんじゃないかと感じました。
磯部 ああ。でもメンバーが交代するときは解放された気分にはとてもなれなくて。責任の重さとかをいろいろ痛感して……いろいろなことを身に染みて感じる日々が続いてました。それを経て「前へ進むしかないのだから」って思いに至り、作っていたデモを練り直したり、新たに作ってみたりしながら“ハスキンというもの”に近付いていったというか。その実感はもっとあとになって気付いたんですけどね。
──“ハスキンというもの”に近付けたかったわけですね。
磯部 そうなんですよね。ハスキンになりたかった。ハスキンになったなって実感を得てきたのは、ライブを観ていただいた7月あたりです。
──それまではメンバーが替わることの葛藤や、それによってどんなバンドにしたいのかってことを考えてたわけですよね。
磯部 そうですね。考えてることのほうが多かったですね。「何も考えなくていいや、やろう!」って気分にはなかなかならず。そこからだんだんと何も考えなくなっていくんですが(笑)。自分としては「いろいろあったなー」なんて思いもありましたが、今は「ハスキンで楽しい音を鳴らしたいな」っていう感じです(笑)。原点回帰っていうのとはちょっと違うんですけど。
──確かに原点回帰とは違うんでしょうね。前々作の「SOMA」で「Put On Fresh Paint」と「Face The Sunflower」のセルフカバーをしてましたし、むしろあの頃のほうが原点回帰の気持ちがあったように思います。
磯部 そうですね。あのアルバムのほうが原点回帰っていう気がしますね。原点をたどろうってことを意識的にやってました。
──「SOMA」と前作の「AMU」は新しいことへの挑戦と原点回帰、両方を意識的にやっていたアルバムだと思いますが、今作はそういう意識もないような気がします。意識する必要もないっていう。
磯部 うん。自然にそうなったんですよ。
みんなの「自分が思うハスキン」がうまくハマった
──それが「ハスキンになった」っていうことなんでしょうね。平林さんはいかがでしょう?
平林一哉(G, Vo) いろいろあっても続けていくことが大事だと思ってます。3人でやるって決めて、その中でやれる音楽を存分にやるってことが大事だと思うし。今回のアルバムは、なるべく先を見て考えようって思いながら作ってましたね。
──続けていくためには、この3人じゃないとダメだっていう。
平林 そうですね。ただ、一緒に曲を作ってみるまでは「どんなだったかな?」って思ったりもして。でもやってみたらやっぱり勝手知ったる仲でしたね。
──TEKKINさんは自分がいないハスキンを見ていて思ったことは?
TEKKIN(B, Cho) たぶん、みんな自分が思うHUSKING BEEをやっていたと思うんですね。前の若い2人のメンバーのときは、その歯車がうまくかみ合わなかったこともあったのかな?って。僕も僕で、僕の思うHUSKING BEEがあったりしますが、それがうまくハマったというか。そのへんを素直に出しても大丈夫な3人なんだろうなって感じました。お互い探り合うことがない、探り合わなくても大丈夫な関係っていう。
──この3人なら自分が思うハスキンを素直に出せるっていうのは、やっぱり同じ時間を過ごしてきたからというのも大きいでしょうしね。
TEKKIN かもしれないです。でも、だから若いメンバーがダメだったってことじゃない。今、うまくかみ合ってるのは、たまたまっていうのもあると思うんです。その「たまたま」がこの3人をつなげたっていう。
──「自分が思うハスキンにうまくハマった」という感触は、音を出したらすぐにあったんですか?
TEKKIN さっきドンドン(平林)もチラリと言ってましたが、僕も実は最初はピンとこなかった部分もありました。昔は、アルバム制作は1カ月なら1カ月、時間を作って、午前中から夜遅くまでスタジオにいたわけですけど、今回は日中に仕事して夜はスタジオに行くっていうやり方で。時間のバランスが昔とは全然違うんですよ。でも録り進めるうちにそういう不安みたいなものがなくなって「大丈夫だな」って思った。ちゃんとハスキンの音になっていって、なんか不思議な気がしましたね。
次のページ » お客さんがどう思うかが楽しみになってきた
収録曲
- Suolo
- Carry You
- Let We Go
- Across The Sensation
- Invisible Friends
- Grand Time
- Spitfire
- Blue Moon
- Compass Rose
- Nonesuch
- Suffer
- Puff
- 通りすがりの物語
HUSKING BEE「Paleosuolo Tour」
- 2017年1月20日(金)北海道 BESSIE HALL
- <出演者>
HUSKING BEE / and more - 2017年1月28日(土)大阪府 LIVE HOUSE Pangea
- <出演者>
HUSKING BEE / and more - 2017年1月29日(日)愛知県 池下CLUB UPSET
- <出演者>
HUSKING BEE / and more - 2017年2月11日(土・祝)東京都 TSUTAYA O-WEST
- <出演者>
HUSKING BEE / and more - 2017年2月12日(日)宮城県 FLYING SON
- <出演者>
HUSKING BEE / and more - 2017年2月18日(土)福岡県 LIVE HOUSE CB
- <出演者>
HUSKING BEE / BACK DROP BOMB / the PRACTICE - 2017年2月19日(日)広島県 HIROSHIMA 4.14
- <出演者>
HUSKING BEE / BACK DROP BOMB
HUSKING BEE(ハスキングビー)
磯部正文(G, Vo)、平林一哉(G, Vo)、工藤哲也(B, Cho)による3人組バンド。1994年7月結成。1996年12月に横山健プロデュースで発表した1stアルバム「GRIP」が話題を集め、一躍メロディックパンクシーンを牽引する存在になった。フェス出演や海外リリースなどを行いつつ計5枚のアルバムを発表するが、2005年3月に解散。2012年2月に行われたイベント「DEVILOCK NIGHT FINAL」のステージで再結成を果たし、同年9月の「AIR JAM 2012」にて本格的な活動再開を宣言した。2013年2月に9年ぶりのオリジナルアルバム「SOMA」をリリース。バンドを離脱していた工藤哲也が2016年4月に再加入し、同年12月にアルバム「Suolo」を発表した。